Oracle AppsWorld 2002 Keynote:「HP/コンパックは“技術の民主化”をリードする」とフィオリナCEO

【海外記事】2002.4.08

 ヒューレット・パッカード,そして新たに生まれるHP/コンパックも引き続き率いることになるカーリー・フィオリナ会長兼CEOが4月8日,開幕したばかりのOracle AppsWorld 2002 San Diegoにキーノートスピーカーとして登場した。1999年,オラクルとHPはCRMに関して提携を発表して以来,互いにとって力強いパートナーだ。HPはオラクルのCRMを自社にインプリメントし,最適化を図っており,その価値を顧客に提供している。

「こんなに多くの人がカンファレンスに参加するなんて,IT予算が再び戻ってきたということでしょうか」と挨拶し,会場を沸かせたフィオリナ氏。彼女が,多くのITユーザーたちの前に姿を現したのは,3月19日の臨時株主総会以来初めてだ。

コンパックとの合併問題を正面から取り上げたフィオリナCEO

紛糾するコンパックコンピュータとの合併については,口を閉ざすのかと思いきや,フィオリナ氏は自ら積極的に話題として取り上げた。

「コンパックとの合併に関してはいろいろと新聞に書かれて,読みたくない記事も多い(笑い)。でも,ヘッドラインを飾ることもないし,この業界も認めたくない事実がある。それは顧客の要求が変化していること」(フィオリナ氏)

 1990年代,年率で40〜60パーセントも成長したIT業界だが,「もうそういう時代じゃない」と彼女。

 顧客たちはオープンで柔軟性のあるシステムを求め,エンタープライズといえども標準化が進んでいる。「コモディティ化」とでも言えばいいのだろうか。HPはインテルと共同でIA-64を開発し,ハードウェアでそうした流れを加速させた。

「これからも企業は自社でエンタープライズアプリケーションを開発する? カスタマイズする? 今は分散化とWebベースの時代。一枚岩のアプリケーションの時代ではない」(フィオリナ氏)

 フィオリナ氏は,こうした業界の変化を紹介し,コンパックと合併することで,HPはハードウェア,ソフトウェア,ソリューション,そしてサービスとサポートのポートフォリオを大幅に拡大させることができるとした。

 HPはUNIXベンダーとしては2番手だが,コンパック(旧DEC)のクラスタリング技術と組み合わせれば魅力は増す。「ラリーからもメリットは大きいと評価された」(フィオリナ氏)という。コンパックは,NonStop Himalayaで金融や通信のオンライントランザクションを支えているかと思えば,IAサーバの分野でもリードする。

 一方,HPにもストレージやOpenViewのような管理ツールなど,強みを持つ分野が多くある。

「オラクルのCRMは90日でインプリメントできるようになった。こうした“テクノロジーの民主化”は顧客にパワーを与え,ITプロバイダーは,エンドツーエンドのソリューションでしか差別化が難しくなる。しかも,彼らには選択肢を与えなければならない」(フィオリナ氏)

 彼女は,こうした業界の潮流をHPが自ら牽引するのか,あるいは飲み込まれてしまうのか,と考えたとき,コンパックとの合併を選び,ハードウェアからサービス,サポートまでオープンなポートフォリオを持つベンダーになるべきだと判断したという。

「タフな時代だが,われわれは社員一丸となって合併を成功させようとしている」とステージのスクリーンに映し出したのは,大勢の社員が収まっている1枚のポートレートだった。

「IBMよりも選択肢があり,サンよりも優れたポートフォリオがある。サンはどんどんメインフレーマー化しており,絶滅した種族に属している」と,日ごろHPを痛烈に皮肉るサンへのお返しも忘れなかった。

[浅井英二 ,ITmedia]