Oracle AppsWorld 2002 Keynote:パーソナライズされた新聞を毎日発行,Oracle EBSのDaily Business Close

【海外記事】2002.4.08

 4月8日,「Oracle AppsWorld 2002」初日の基調講演に,オラクルでアプリケーション開発担当執行副社長を務めるロン・ウォール氏が登場。Oracle E-Business Suite 11i(Oracle EBS 11i)が成熟度を増してきたことをアピールし,11iのInfomation Architectureが可能にするDaily Business Closeデモした。

 講演の冒頭で同氏は,「現行バージョンの11i.6は,1600社のユーザーを抱えており,完全に成熟したアプリケーションとして提供できる」と話す。さらに,同社がバグをなくし,パフォーマンスを向上するために日々努力していると畳み掛け,会場を埋めたユーザーに,11iにアップグレードしてくれるよう呼びかけた。

ロン・ウォール氏

 先ごろの組織改変で,Oracle EBS全体を統括することになった同氏は,アプリケーション群が蓄積するデータをシングルインスタンスで管理するオラクルのInformation Architectureについて,「SAPやピープルソフトなどが提供する“データ連携でスイートをうたう製品”とは根本的に異なる」という。

「彼らのデータモデルは複雑で入り組んでいる」(同氏)

 ただし,データウェアハウス(DWH)モジュールを持つエンタープライズアプリケーションベンダーは多い。例えばオラクルの最も強力なライバルであるSAPも,Business Information WarehouseというDWH構築ソフトウェアを持つ。こうした製品を利用すれば,さまざまなモジュールが蓄積したデータを,DWHに吸い出し,「シングルベンダーが提供するシングルインスタンスのデータ管理」が可能になる。

 講演の後に行われたプレスQ&Aでウォール氏は,「ベンダーのDWHモジュールの実装は大変で,データが正確かどうかを確かめる必要も生じる。企業が莫大なコンサルティング費用をかけて“システムに新しいフェンスを作る”のは現実的でない」と答えた。

「Oracle EBSなら,正確でクリアなデータがアプリケーションからダイレクトにデータベースに蓄積されてくる」(同氏)

 Oracle EBSの情報を蓄積したシングルインスタンスのデータベースは,いわばDWHであり,あらゆる企業情報が詰まっている。それをベースに実現するのが,Daily Business Closeだ。

 アムステルダムで1月に開催されたOAWで登場したこの新しいメッセージは,会計情報に限らず,社員や顧客のパフォーマンス,受注見込みへの達成率,バリューチェーン上で発生したトラブルなど,企業のあらゆる情報を一元的に網羅するビューを提供ようというもの。

 同氏は,「システムがパーソナライズされた新聞を毎日発行してくれると考えてほしい」として,それが企業のビジネスを効率化するのに欠かせないものであることを説いた。

 実際のところ,ライバルたちも同様のソリューションを提案している。ただし,それらは,企業の業績を可視化する製品で,経営層だけをターゲットに開発されたものだったり,ポータル技術によってフロントエンドを統合した製品だったりする。

 現状で比較すれば,Oracle9i Database/Application Serverの技術で,バックエンドの統合も実現しているオラクルのアドバンテージは大きいだろう。また,Daily Business Closeのための「ビジネスインテリジェンスポータル」は,経営層だけでなく,マネジャーにも一般社員にも,役割別にパーソナライズした情報を配信してくれる。

 個人レベルでは,同僚とパフォーマンスを比較し,自分の達成した実績が企業内でどの程度評価されているのかを知ったり,仕事のできる同僚のノウハウをもらって,自分のパフォーマンスを向上させることなどにも利用できるという。

 ウォール氏は,「さまざまな切り口でデータを見たり,実績情報の日次比較をグラフ化できるのは,われわれがデータをシングルインスタンスで管理しているためであり,全社員が同じ情報をベースとして業務を行うからだ」と話している。

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[井津元由比古 ,ITmedia]