Oracle AppsWorld 2002 Keynote:顧客ニーズへの迅速な対応に挑戦するオラクルの新部門

【海外記事】2002.4.08

 4月8日,「Oracle AppsWorld 2002」の基調講演に登場したマーク・バレンシア上級副社長が,新たに率いることになったE-Business Suite(EBS)マーケットデベロップメント部門の詳細を明らかにした。同氏は,CRMを担当していたが,先ごろのERP部門との統合により,ユーザーからのニーズを吸い上げるために新設された同部門のトップに横滑りしている。

 オラクルのアプリケーション製品のユーザー企業は,Oracle EBSがまだ「Oracle Applications」ブランドだった頃から,ユーザー会,OAUG(Oracle Applications Users Group)を組織していた。一般にユーザー会は,単なる情報交換の場ではなく,ベンダーと機能強化について交渉する団体でもある。OAUGは,オラクルにとって,顧客ニーズを把握するためのありがたい存在であると共に,機能強化を迫る圧力団体でもあるのだ。

 バレンシア氏がトップについた新部門は,こうしたユーザー企業のニーズを吸い上げ,そのニーズを迅速に製品に取り込むことで,顧客とより良い関係を築こうとしているという。カスタマイズアプリケーションという側面が強かったオラクルのアプリケーション製品だが,11iの登場でノンカスタマイズかつエクステンションの最小化をうたいだしたからには,それだけの機能を網羅しておかねばならない。

 この基調講演には,OAUGのトム・ウィアット会長がまず壇上に立ち,「11iでもパーフェクトではない。顧客の立場としてオラクルに求めるのは,アプリの使いやすさももちろんだが,適切なサポートだ」とEBSマーケットデベロップメント部門への期待を表明して,バレンシア氏を壇上に迎えた。

マーク・バレンシア氏

 ウィアット氏に対するバレンシア氏の答えは,「Oracle EBSの次なるステップは,顧客志向の管理チームによって成し遂げられる。顧客は,ソフトウェアを箱から出してすぐに使いたいと考えるものだ。われわれの部門は,そのために存在する。EBSに付加すべき機能を検討し,パフォーマンスおよびソフトウェア品質を向上させていく」というものだった。

 チームができてから日が浅いためか,同氏がCRMについて話す予定だったこの日の講演だが,急遽構成され直されたらしい。講演で中心となったトピックは,同部門がミッションとする5つの方針。バレンシア氏の所信表明である。

 同氏は,完全なビジネスフローを作り,業界特化のビジネスプロセスに対応することをはじめ,データを一元化することで,データの一貫性および品質を維持することに注力するという。また,オープンでスケーラブルなアーキテクチャをさらに磨き,既存システムとも容易に連携できるようにするほか,ビジネスシナリオの標準化を進めることで,グローバルな拠点で単一システムを利用してもらい,一元化された高品質なデータをベースとするDaily Business Closeの実現を目指す。

 さらに新部門では,IT運用の一元化およびアウトソーシングサービスにより,顧客のITコスト削減を加速していく。

 同氏は,「(Oracle EBSを全社利用すれば)これまで複数のシステムを管理していたIT部門を1つにまとめられる。“リストラを進めろ”と言っているわけではなく,スタッフを適切に再配置してほしい」と話してから,さらりとアウトソーシングサービスも売り込んだ。

「アウトソーシングしてもらえば,ソフトウェアの品質を継続的に向上させ,常にベストな状態をキープすることを保証できる」(同氏)

 講演の後半は,ユーザー企業とのディスカッションおよび質疑応答に当てられた。その中で興味深かったのは,同氏がOracle EBSのライバルの1つに,自前のビジネスアプリケーションを持たないIBMを挙げたことだ。

「彼らは,ベンダーを集めてOracle EBSのようなものを作っているように見えるが,データを一元化することでコストを削減できると信じていない。複雑に組み合わせたシステムを,自分たちで接続したいと考えているようだ」(同氏)

 2002年12月にカリフォルニア州サンフランシスコで開催された「Oracle OpenWorld 2001」では,オラクル対IBMという新たな対立軸が示された。サービスビジネスを成功に導きたいオラクルの「打倒IBM」というメッセージは,もはやデータベースやアプリケーションサーバに限ったものではなくなった。

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[井津元由比古 ,ITmedia]