ジュニパー,新フラグシッププロダクト「T640」を発表

【国内記事】2002.4.24

 ジュニパーネットワークス(ジュニパー)は4月24日,従来のラインナップ「Mシリーズ」に続く新しいコアルータ製品「Tシリーズ」を発表した。

 Tシリーズの中でまず市場に登場するのは,パケット処理能力770Mpps,スループットは最大640Gbpsという「T640」。ハーフラックサイズのシャーシ1台当たり,OC-48c/STM-16を128ポート,OC-192c/STM-64でも32ポート搭載できるといい,従来のハイエンド機種「M160」に比べ,処理能力においてもポート密度においても約4倍を実現している。

 T640の特徴は,3つに要約できるだろう。

 1つは,新たに開発された第3世代のASICによる,高速なパフォーマンスだ。このASICは,IBMとの提携に基づいて提供された銅配線技術を活用したものと言う。また,ハードウェアベースのIPv6フォワーディングなども,Mシリーズ同様に提供される。

 2つめは,既存投資の保護が可能なこと。TシリーズもMシリーズと同じく,JUNOSソフトウェアを採用しており,同一のソフトウェアイメージを継承できる。MPLSやQoSといった機能もシームレスに実現可能だ。また,Mシリーズ向けに提供されているPIC(物理インタフェースカード)のうち,OC-12cやOC-48cといった高速インタフェースはそのままT640でも利用できるため,無駄な投資にはならないという。

 3つめの,そして最大の特徴は,独自のマトリックス・テクノロジだ。この技術により,従来どおり,きょう体前面に搭載されるスロットでWAN側のルーティングとパケット転送を行いつつ,背面のSIB(スイッチインタフェースボード)でもローカル側の処理を行うことができる。このバックプレーン拡張機能により,背面側では1280Gbpsというスループットを実現するということだ。

 ただ,このマトリックス・テクノロジが本当に生かされるのは,同社がこれからリリースする予定のスイッチングノード,「TX」が登場してからだろう。TXはルータではなく,複数のT640を結び付け,仮想的に1台の超高速ルータとして動作させるための製品だ。同社によれば,8台以上のT640をTXで接続することにより,WAN側で毎秒5T(テラ)ビット,ローカル接続でも毎秒5Tビットというマルチテラビット環境を実現するという。

「帯域が増加し続け,将来的に数百ギガ,数テラといったトラフィックを処理しなければならなくなっても,スイッチング・マトリックスにT640を追加し,クラスタノードを増やすだけで対応できる。帯域の増加に応じてディストリビューションルータを追加し,それらの接続にポートが費やされてしまう従来型のルータとはまったく違う」(米ジュニパーのエンジニアリング担当副社長,ピーター・ウェスラー氏)

 収益を生み出さない無駄なポート利用をなくし,将来的に再投資の必要もないことから,大規模なオプティカルコアネットワークはもちろん,収益性が求められるサービスプロバイダーのPOP(Point of Presence)でも有効なソリューションになるという。

 だが残念ながら,TXのラボレベルでの実証は進んでいるというが,実際に市場に登場するのはまだしばらく先のことになりそうだ。

 一方T640は,北米では昨年第4四半期より出荷が開始されており,米ベリオやフランステレコム R&D,米ワールドコム,米ケーブル・アンド・ワイヤレスが商用サービス向けに導入済みだ。日本でもキャリア数社が,T640の評価を開始しているという。価格は,標準的な構成で40万ドルから50万ドルになる。

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[高橋睦美 ,ITmedia]