速報:今年のiLabsは無線LANのセキュリティがテーマ

【海外記事】2002.5.06

 5月5日,米ラスベガスのラスベガスコンベンションセンターにて,NetWorld+Interop 2002 LasVegas(N+I 2002 LasVegas)が開幕した。といっても最初の2日間はカンファレンスが中心で,本格的に盛り上がりを見せるのは,展示会がスタートする7日以降だ。

 だが会場の準備は着々と進んでおり,展示会場や会議場を結ぶネットワーク,「InteropNet Event Network(eNet)」も完成しつつある。

 N+Iでは毎年,出展ベンダー各社がその時点で一歩先を行く製品を持ち寄り,相互接続性を会場でデモンストレーションしながら検証するという試みを,名称を変えながらも継続してきた。過去にはIPv6やVPN,VoIPといった技術が取り上げられている。

 今年のInteropNet Labs(iLabs)のテーマは3つ。無線LANセキュリティ,IPストレージ(iSCSI),それにMPLSだ。

 エンタープライズの視点にたてば,この中で最も興味深いテーマは,おそらく無線LANのセキュリティだろう。かつては標準規格の確立に向けて,“素”の無線LANの相互接続性が課題となったものだが,今年は,企業ネットワークでの本格的な活用に向けた,無線LANの柔軟性とセキュリティの両立がテーマだ。

 iLabsの無線LANセキュリティゾーンでは,IEEE802.11b(Wi-Fi)およびIEEE802.11aで無線ネットワークを構築し,その上で802.1xやIPSec VPNの相互接続性を検証する計画だ。このゾーンにはチップを提供する米アセロス・コミュニケーションズのほか,プロキシム,シンボル・テクノロジーズ,シスコシステムズなど,既に無線LANクライアントやアクセスポイントを市場に提供しているベンダーが参加する。

 さらに,無線LANのセキュリティに絞って製品を提供するファンク・ソフトウェアやリーフエッジ,バーニア・ネットワークスなども参加し,脆弱性が指摘されているWEPに代わって,EAP(Extensible Authentication Protocol)を用いた認証やIPSec通信の相互接続性を検証していく。

 このうちリーフエッジは,別途自社ブースにて,先ごろ発表したばかりの「Service Provider Solution」のデモンストレーションを行う予定だ。これは,802.11b/aを用いた無線LANや公衆無線LANサービス(いわゆるホットスポットサービス)のみならず,2.5世代や第3世代の携帯電話との統合を視野に入れた,無線アクセスのセキュリティ管理製品。サービスプロバイダーをターゲットにしており,セキュリティを維持しながら複数の無線サービスをシームレスに提供できると言う。ユーザー管理や課金管理機能に加え,ローミングとアクセス共有を実現しながら,あるユーザーが他のユーザーのリソースを覗き見ることを防ぐバーチャル無線LAN機能を搭載している。

 これらとは別に,無線LANに関する業界団体であるWECAが主催するWi-Fiゾーンでは, Wi-FiおよびIEEE 802.11a対応製品が集められる。WECAは,現在相互接続試験と認定を行っているWi-Fiに加え,802.11aについても「Wi-Fi5」として同様の認定制度を設け,作業を行う予定だ。

 なお,会場内には,シンボル・テクノロジーズの提供によって無線LANアクセスポイントが設置され,来場者が自由に利用できるようになっている。今回は802.11bだけでなく,一部に802.11aのアクセスポイントが用意された。

 5GHz帯を利用し,Wi-Fiのほぼ4倍に当たる最大54Mbpsの通信速度を実現することから期待される802.11aだが,普及はまだこれから。802.11aのフリーアクセスポイントがあっても,対応クライアントがないことになどうにもならない。対応製品が,今後どれだけ求めやすい価格で登場するかが1つの試金石となりそうだ。

MPLSゾーンではトラフィックエンジニアリングなどを検証

 一方,サービスプロバイダーとしては見落とせないテーマがMPLSだろう。iLabsのMPLSゾーンでは,昨年に引き続きDraft-Martiniの相互接続性を検証するほか,ポイントツーマルチポイント(P-MP)のMPLS-VPNを実現するDraft-Kompellaにもトライする。

 合わせて,MPLSベースのトラフィックエンジニアリングについてもテストを行う。日本国内では今のところ,MPLSはもっぱらVPNの構築に利用されているが,もともとMPLSにはアプリケーションやビジネス上の要求に応じて最適な経路を選択するための技術も盛り込まれている。ここでは,LDPおよびRSVPをベースにしたトラフィックエンジニアリングやファストリルートをデモする予定だ。

 なお,このMPLSテストには,シスコシステムズやエクストリーム・ネットワークス,ファウンドリネットワークスといった顔ぶれに加え,ジュニパー・ネットワークスやリバーストーン・ネットワークなど,N+I 2002 LasVegasには出展しないベンダーも参加する。

 これとは別に,IPインフュージョンとシリコン・アンド・ソフトウェアシステムズ,IBMの3社が,会場内のブースを結ぶプライベートMPLSネットワークを構築し,ルーティングソフトウェアやネットワークプロセッサなどの相互接続性をデモする予定だ。

 残るIPストレージは,高速化が進むWAN回線や企業バックボーンの有効な活用法として注目を集めている。特に昨年の連続テロ事件以降は,ディザスタリカバリの観点から,遠隔地のSANをIPネットワークでつなぎ,バックアップを取るという手法が提案されている。

 これまでも,参加ベンダーが個別にiSCSIの相互接続性をデモすることはあったが,iLabsとしては初の試みだ。ネットワーク・アプライアンスやシスコシステムズ,ソニーのほか,アダプテック,ニシャン・システムズ,インテル,ベリタスソフトウェアおよびファルコンストアなどが参加し,ハードウェアからストレージ管理ソフトまでを網羅したIPストレージソリューションを検証する計画である。

関連トピック

▼NetWorld+Interop 2001 Atlanta レポート

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関連リンク

▼NetWorld+Interop LasVegas 2002

[高橋睦美 ,ITmedia]