重い腰を上げるサン,同社が考えるブレードサーバとは?

【国内記事】2002.5.06

 サン・マイクロシステムズが,流行の「ブレードサーバ」に対処すべく,ようやく重い腰を上げた。スコット・マクニーリ会長兼CEOは,「われわれは何年も前から“ブレード”を出荷しており,いまさら……」と受け流していたが,準備は着々と進められていた。ボリュームシステムプロダクト事業部にブレードビジネスのチームが設置され,今年後半にはブレードサーバの第一弾を発表する。4月に来日したサンのブレードサーバ担当幹部らによると,同社のブレードサーバは,単にハードウェア単体や価格ではなく,新しい運用管理の考え方である「N1」の重要なコンポーネントとして投入されるという。

 今年初め,サンはアナリスト向けのカンファレンスでN1構想を明らかにした。ちょうど1年前に発表された「Sun ONE」(Sun Open Net Environment)がWebサービス開発者向けのビジョンやアーキテクチャだとすれば,N1は運用管理者向けの考え方だ。

 インターネットコンピューティングの普及に伴い,データセンターではWebサーバをフロントエンドとする多階層化が進んでいるが,スコット・マクニーリ会長兼CEOは,そうしたさまざまなコンポーネントを1つの大きなボックスに収め,「WebToneスイッチ」と呼んで,あるべき姿を示してきた。そこには,限界のない拡張性と高い信頼性があり,それでいて複雑さは見えないよう隠されている。N1では,ストレージやネットワーク装置も含めたすべてのコンポーネントが,OSによって仮想化され,1つの巨大なコンピュータとして運用・管理できるようになる。

 このようにサンが描くコンピュータシステムの進化の中で,重要な役割を果たすのが,同社のブレードサーバだ。

 ブレードとは,CPU,チップセット,メモリ,およびI/Oインタフェースを小さな基板に載せ,これを高さ3U程度のシャーシに何枚も挿入する。2CPUの薄型1Uサーバでも,3Uの高さには6CPUまでしか搭載できないが,ブレードサーバであれば,例えば3Uの高さに最大で20枚のブレードを搭載できる富士通の「PRIMERGY」も登場している。PRIMERGYでは1枚の基板に1CPUなので合計20CPUとなり,密度は3倍以上だ。シャーシを積み上げていけば,1台のラックでCPUの数は200を遥かに超える。

 サンでブレード製品のマーケティングを担当するグループマネジャー,アッシュレイ・アイケンベリー氏は,「より柔軟に,ビジネスの成長に応じて,密度を高められる」と,ブレードソリューションの魅力を話す。

 ブレードサーバといえば,インテルアーキテクチャの独壇場だが,今年後半,1CPUと2CPUのブレードサーバを市場に投入するサンは,SPARC/Solarisモデルとx86/Linuxモデルを用意し,プラットフォームの違いを意識させない管理ツールも提供する。また,開発ツールのForteやSun ONEのソフトウェアスタックであるiPlanet製品群はどちらのブレードサーバもサポートするという。

 基板に診断チップを載せ,ブレードの情報を収集できるのはもちろん,ブレードを収めるシャーシにも「シェルフ」サービスプロセッサが組み込まれており,各ブレードの情報を収集できるようにする。サンではこうしたシャーシを「Intelligent Shelf」と呼ぶ。

 アイケンベリー氏は,「基板レベルから最上位の管理ソフトウェアまで,サンのブレード管理はレイヤアプローチを取り,サンの管理ツールだけでなく,HP OpenViewやTivoliからも管理できるようにする」と話す。

 一部の先行するブレード製品と同じように,サンではシャーシにレイヤ2スイッチを組み込む計画。柔軟にVLANを構成できるのがそのメリットだ。電源やサービスプロセッサと同様,このスイッチも二重化されるという。

 1Uの薄型サーバでは価格が重視されるが,サンのブレードビジネスチームを率いるコリン・フォウルズ ディレクターは,「既に1000ドル前後のNetraサーバを投入しており,インテルアーキテクチャと価格面での差はない。われわれは,むしろ価格だけでは勝てないと考え,インテリジェントなシャーシや管理フレームワーク,iPlanet製品や豊富なサードパーティーアプリケーションで差別化を図りたい」と話す。

 さらに,「現在市場にある第一世代のブレードサーバは1台のラックにどれだけ多くのCPUを詰め込めるかが重視されていて,用途もフロントエンドに限られている」とアイケンベリー氏は話す。SPARC/Solarisとx86/Linuxという異なるプラットフォームの混在環境や管理機能で差別化を図るサンだが,真の狙いは2003年から2004年にかけてやってくる第二世代のブレードサーバにある。

 第二世代では,InfiniBandのような新しいインターコネクト技術が採用され,SMP構成で垂直方向の拡張性が求められるトランザクション処理もこなすようになるとアイケンベリー氏は予測する。つまり,目的に応じたブレードサーバの分化が進み,データセンターのバックエンドを担う6Uから8Uのフォームファクターも登場するという。

 WebToneスイッチという巨大なボックスの中で,Webフロントエンドだけでなく,バックエンドにも適用できる柔軟なサーバ製品がサンの目指すブレードサーバというわけだ。

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[浅井英二 ,ITmedia]