アプリケーションパフォーマンスを改善するカギとは?

【海外記事】2002.5.07

 米ラスベガスで開催中のNetWorld+Interop 2002 LasVegas(N+I 2002 LasVegas)だが,出展される製品のトレンドが昨年あたりから変わってきた。

 端的に言えば「低いレイヤから高いレイヤへ」だ。具体的には,関心は10ギガビットイーサネットといった技術から,セキュリティやストレージ,VoIPなど,アプリケーション寄りへと移っている。

 ネットワーク管理ツールもその傾向を反映している。システムを構成するネットワークや機器,サーバ群をいかに効率的に管理するかという課題は同じにしても,機器そのものの挙動管理よりも,アプリケーションやサービスのパフォーマンスが重要視されるようになってきた。中でもIBMのWebSphereやBEAシステムズのWebLogicといった,Webアプリケーションサーバを利用したシステムのパフォーマンス管理に注目が集まりつつある。

パフォーマンス改善に近道はない

 5月6日に開催された「ネットワーク・フォアシクス・デイ」は,ネットワークパフォーマンスのモニタリングや解析,トラブルシューティング手法をテーマとしたセミナー群だ。

 この中では,ネットワーク管理・解析のトレーニングなどを提供する米パイン・マウンテン・グループ(PMG)のスピーカーによって,アプリケーションパフォーマンスの最適化を図るセミナーが行われた。その手助けをするツールとして,N+I 2002 LasVegasの展示会に登場する新製品も紹介された。

 説明に立ったPMGのマイク・ペンナッキ氏によれば,アプリケーションのパフォーマンスや信頼性を高めるには,「ベースラインの作成,次に分析,さらにそれに沿ってのシミュレーションと予測,実際の計測,アプリケーションのトラブルシューティングという5つのステップが必要」という。

 ペンナッキ氏は,実際の解析例を挙げながら,この流れに沿って,キャプチャしたデータを元に,リクエストからレスポンスまでのどの部分にボトルネックがあるかを切り分け,改善していく過程を説明した。

 ここでは,米オプネット・テクノロジーがリリースしたばかりのアプリケーションパフォーマンス分析モジュール「ACE Module」やシュンラ・ソフトウェアのシミュレータ「SHUNRA/Cloud」,それにPMG自身が提供する「PMG Latency Caliculator」などを組み合わせ,帯域などの条件を変えながら最適なアプリケーションパフォーマンスを実現していく手法が紹介された。

 同氏がこのセミナーで強調したことは2つある。1つは,アプリケーションを実際に稼働させる前に,きっちりとベースラインを作りこんでおくことだ。アプリケーションのデザインは,パフォーマンスに大きな影響を与える。したがって,5つのステップを繰り返しながら,アプリケーションが適切に作成されているかをレビューし,当初の期待通りのパフォーマンス――それもエンドユーザーの視点から見た期待値――をクリアできるようにすべきだという。

 もう1つは,帯域と遅延,サーバとクライアントの相関関係をしっかり把握しておくことだ。アプリケーションのパフォーマンスが落ちたからといって,パケットシェーピングや帯域の増強だけで解決できるとは限らない。もちろん,システムによっては帯域がボトルネックとなるケースもある。その見極めをつけることが肝心だという。

「LANでの運用を前提とし,WAN経由での運用を考えていないアプリケーションは,いくら帯域を増強してもパフォーマンスは改善されない。コードを実際に書く前に,トランザクションモデルを固めておけば,WAN経由で多くのユーザーが同時にアクセスしてもスムーズに稼働するアプリケーションを実現できる」(ペンナッキ氏)

 そして,こうしたアプリケーションを実現するためには,パケットの動きのビジュアル化とデコードを通じてボトルネックを洗い出し,アプリケーションとシステム構成を改善していくことだと同氏は語っている。当たり前のような結論だが,逆に言えばアプリケーションパフォーマンスの向上に近道はない,ということだ。

コードの変更が与える影響を予測する「ACE Module」

 なおこのセミナーでも紹介されたシュンラ・ソフトウェアは,N+I 2002 LasVegasに合わせて新製品「SHUNRA/Forecaster」をリリースしている。これは,マーキュリー・インタラクティブの「LoadRunner」との連携が可能なシミュレータ兼テストツールで,アプリケーションを実際に導入する前に,WAN回線にどういった影響を与えるかを予測する。この結果を元に,アプリケーション導入に合わせてネットワーク環境をアップグレードすべきかそうでないかを判断できるという。

 またオプネットのACE Moduleは,同社の技術をベースに,パケットの遅延・パケットロス・ウィンドウサイズといった条件のほか,アプリケーションのコードの変更がパフォーマンスにどういった影響を与えるかを計算し,予測結果をWebインタフェースで表示してくれるツールだ。これにより,トラブルを迅速に解決し,アプリケーションのパフォーマンス改善を図ることができるという。

 さらに展示会では,米マイクロミューズや米アプリスマも,同様にアプリケーションパフォーマンスの計測と改善を主眼においた管理ツールを発表し,紹介する予定だ。

 他にも,米システムウォッチが,連携が可能なネットワーク管理ソフトウェアとセキュリティ管理ソフトウェアを紹介する。米フィニスターは,LANアナライザ「Surveyor」に加え,無線LANの対応のプロトコルアナライザ「Surveyor Wireless」や,ストレージエリアネットワーク(SAN)およびiSCSIに対応したSANアナライザを紹介する計画だ。米BMCソフトウェア,米インフォビスタなども新製品をリリースする見込みである。

関連リンク

▼NetWorld+Interop 2002 LasVegas

▼米パイン・マウンテン・グループ

▼米シュンラ・ソフトウェア

▼米オプネット

[高橋睦美 ,ITmedia]