エンタープライズ:トピックス 2002年5月10日更新

IBM developerWorks Live! Keynote:「ラリーの強敵」ペルナGMが描くIBM DB2の進化,ゴールは退屈?

「ラリー・エリソンの手ごわい敵はビル・ゲイツでない。IBMのジャネット・ペルナだ」――フォーブス誌で「ラリーの強敵」と名指しされた彼女が米国時間の5月9日,「IBM developerWorks Live!」の2日目の基調講演に登場した。

 彼女がゼネラルマネジャーを務めるDB2チームでは,今回のカンファレンスでは目立った製品発表を予定していなかったが,調査会社によって,昨年のデータベース市場で同社が首位に立ったことが伝えられると,にわかに脚光を浴びている。今週初め,ガートナー・データクエストが世界のDBMS市場に関するレポートを発表したもので,Informixを含めた金額ベースのシェアがオラクルを上回ったという。

 ちなみにInformixを含めなくとも,DB2が売り上げを5.7パーセント伸ばし,逆にOracleが4.9パーセント減らしたため,ほぼ32パーセントのシェアで肩を並べた。ただ,すべてのDBMS市場の1/3を占めるUNIXのリレーショナルDBMS市場では依然としてOracleが63パーセントのシェアを占めている。

 沸き立つ周囲をよそに,ジャネット・ペルナ氏が基調講演で取り上げたテーマは,意外にも「ボアリング」(boring:退屈)だったが,一種のジョークだろう。

「DB2のイノベーションがもたらしたのは,“ボアリング”。さまざまな機能強化によって運用管理や開発が容易になっているからだ」とペルナ氏。

インフォメーションウイーク誌で「ITにおける女性トップ10」にもランクインするペルナ氏

 DB2には30年に及ぶイノベーションの歴史がある。その間,IBMの研究所によって絶えず機能強化が図れており,1980年代の「R Star」(分散データベース機能),1995年の「Starburst」(マルチメディア対応),1999年の「Garlic」(データアグリゲーション機能),そして現在開発中の「Xperanto」(XML対応で情報統合)へと進化の足跡が続く。

 Xperantoでは,W3Cで標準化が進められているXQuery(XML文書用の検索言語)によってDB2にアクセスできるようにするほか,DB2のデータベースをWebサービスとしてエクスポーズしてSOAPによってアクセスできるようにもなる。SOAPによるアクセスの場合もデータ統合機能が有効に働き,各種のWebサービスによって得られるデータとDB2のデータを統合することも容易になる。

 現在,業界ではデータベースをさまざまなデータソースの統合ポイントとし,すべてのビジネスデータへのアクセスを簡略化していくというトレンドが見られる。開発が容易になるというだけでなく,バックアップのような運用管理面でのメリットも享受できるという。

 ステージでは,金融サービス会社が買収した会社の顧客データを統合するデモが行われた。DB2を介して,InformixやOracleのデータを統合し,Webサービスとしてエクスポーズするものだったが,いともあっさりとやってのけた。

 ペルナ氏は,「パワフルで,ボアリングな情報統合のためのインフラ,それがDB2のゴール」と話した。

 既にIBM DB2 UDB V7.2とWORF(WebServices Object Runtime Framework)を組み合わせることでWebサービス化が可能なほか,Xperantoの幾つかの機能は今年後半,DB2に組み込まれて出荷される予定だ。

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[浅井英二 ,ITmedia]