エンタープライズ:トピックス | 2002年5月27日更新 |
Linux Column:レッドハットは電気ウサギの夢を見るか?!
そんなわけで,できれば新しいものがいいだろう,と思い,リリースされたばかりのRed Hat Linux 7.3を本業の合間にインストールしてみた。とりあえず放っておけばいいから,それほど手間ではないのだが,それでもCD-ROMが3枚組になってしまい,必ず3枚使わないといけないインストールには辟易する。
なにせ,3枚目になったときには,インストールされるパッケージはせいぜい10個。インストールのタイプによってはたったの1つなのだから。もう少しやりようもあるだろうに……。
インストール後は,Red Hat Networkにつないで,更新版のRPMパッケージをダウンロードし,インストールする。WindowsにしてもLinuxにしても,この作業は欠かせない。しかし,何十Mバイトもアップデーターをダウンロードしなければならないというのは,ブロードバンド環境以外ではコンピューターを使うな,と言っているのに等しい。
先日購入したVAIOに搭載されているWindows XPでもそんな感じだったし,これも世の中の流れというものだろうか。
といっているうちに,ここで問題が発生した。新しいカーネルパッケージが出ていたのでインストールするも,起動設定が書き換えられずインストールができないのだ。手動でやってみるも駄目。結局デバイスドライバのモジュールがロードできなくなり,ネットワークに接続できない。
直そうと思えば直るのだろうが,嫌なので結局,最初からインストールし直し。再現性があるかどうかを確認してみるために何度か試してみた。しかし,SMPマシンではまた違う形で起動設定が変更できなかったりと,ある程度再現性のあるトラブルだったようで,結局カーネルの更新は諦めた。なんとなく気持ち悪いが……。
この気持ち悪さ,別に個人的な感情で言っているのではない。21日に同社が発表した「Red Hat Linux Advanced Server」のプレスリリースにはこんなくだりがある。
「今回発表の製品は,従来のRed Hat Linuxのディストリビューションとは一線を画すもので,高い信頼性や長期にわたるサポートなど,基幹システムで必要とされる機能とソリューションにおいて,現在の商用UNIXと同等のレベルを実現した製品です。基幹データベースや大規模EC(電子商取引)サイト,ERPなどの基幹システム市場に向けて,IAサーバとの組み合わせによるコストパフォーマンスとTCOの優位性を特長とします」
一事が万事ではないだろうが,肝であるLinuxカーネルのアップデート1つ満足にできないディストリビューションパッケージが,果たして基幹システムや大規模ECで商用UNIXに対して優位性を主張できるかどうか,甚だ疑問だ。簡単に元に戻すことができないという点もハイエンドシステムでは許容できないだろう。
また,最近知ったのだが,ディストリビューションの「アップデートインストール」というのは,あくまでこれまでの設定ファイルをファイル名を変えて保存しておくのであって,設定を引き継いではくれないのだそうだ。それだったら筆者であれば,保存ファイルだけ対比してゼロからインストールする。
ビジネス的にエンタープライズ市場が美味しそうに見えるのは分かる。動く金額が違うからだ。しかし,そこに費やすコストもまた違ってきているのだ。一足飛びにはそこには辿り付けない。
Linuxに求められるのは,ウサギのような駆け足ではなく,カメのような確実な歩みではないだろうか。
[宮原 徹 ,びぎねっと]