エンタープライズ:トピックス 2002年5月31日更新

Follow Up:Liberty Allianceを支えるSAML

 5月29日,30日にわたって行われたRSA Conference 2002 Japanのセッションの1つとして,Liberty Allianceプロジェクトが取り組んでいる信頼モデルについての解説が行われた。スピーカーは,Liberty Allianceプロジェクトでトラストアーキテクチャーテクノロジーグループのチーフ・アーキテクトを務めるスラバ・カフザン氏だ。同氏はまた,米RSAセキュリティ技術部門のバイス・プレジデントでもある。

 Liberty Allianceプロジェクトは,共通のオンラインIDシステムの確立を通じて,マルチドメイン環境でのシングルサインオン(SSO)の実現を目指している業界団体だ。このセッションが行われた30日には,新たにNTTのほかi2テクノロジーズ,SAPなどが加わったことを発表。プロジェクトへの加盟企業は40社以上に上っている。

 同プロジェクトではSSOの実現に,中央集権型の単一のレポジトリではなく,フェデレーション(協調)モデルと呼ばれる手法を採用している。個々のユーザーID情報を管理して認証を行うIdentity Provider(識別プロバイダー:IDP)と,実際にサービスを提供するプロバイダーが,1つの「信頼の輪」の下で協調し,ユーザーの許可に基づいてSSOを実現していくというものだ。

「(フェデレーション型に比べて),マイクロソフトのPassportで採用されているようなグローバルで一意なIDは,管理が難しい。実際,マイクロソフトも,フェデレーションモデルへと移行していくことを発表済みだ」(カフザン氏)

基盤技術はSAML

 Liberty Allianceの認証およびSSOモデルの基盤となる技術が,XMLをベースとし,OASISによって標準化が進められているSAML(Secure Assertion Markup Language)である。

 同プロジェクトのモデルでは,ユーザーのログイン作業は1回でも,裏では複数の認証機構が動作している。まず認証,次が属性認証,その次にポリシー決定認証というステップを,それぞれアサーション(表明)を経て踏んだ上で,認証・認可のポリシーに基づいて実行が許可される。この際に「SAML Authentication Assertion」,いわばチケットが発行され,これが複数のドメインをまたいでSSOを実現するベースになる。

 Liberty Allianceでは上記の流れを,大きく2つに分けた。1つは,ユーザーから示されたクレデンシャルを基に,認証と属性認証,そのアサーションまでを行う「Liberty Identity Provider」。もう1つは,その結果に基づき,ポリシーに沿ってリクエストを実行する「Liberty Service Provider」だ。先に触れた分類で言えば,前者がIDP,後者がサービスプロバイダーということになる。

 ここで重要なのは,やり取りされるメッセージやトランザクションのセキュリティを確保することだ。Liberty Allianceでは,ユーザーとIDP間,およびIDPとサービスプロバイダー間それぞれについて,適切なセキュリティ対策を取るように仕様を作成している。たとえば,TLS/SSLを利用したり,電子証明書を用いたサーバ認証/クライアント認証を併用したりといった具合だ。

 そしてカフザン氏によると,次の課題となっているのは拡張性だという。つまり,この枠組みでつながれる「信頼の輪」をどうやって広げていくかだ。「このための仕様は,今まさに作業中」(同氏)

 カフザン氏はさらに,Liberty Allianceのフェーズ2では,プライバシーの分野にも踏み込む計画だと語った。ここではユーザー自身が,自分に関する情報の交換をどこまで定義できるか,それもできるだけ使いやすく,簡単な形で行えるかが鍵になる。

最初の導入はB2Bから

「Liberty Allianceの仕様や技術は,コンシューマー向けのサービスだけでなく,B2Bや細分化されたエンタープライズにも適用できる。むしろ適合は,B2Bなどの分野のほうが先になり,その後,コンシューマーの世界に踏み込んでいくことになるだろう」(カフザン氏)

 この目標達成に向け,同プロジェクトでは鋭意作業を進めている。6月には,当初の予定通りLiberty Allianceの仕様とSAMLの相互運用性を確認するためのトライアルを行い,7月にはデモンストレーションを行う予定だ。また,仕様も早くて7月には公開できる見込みという。

 カフザン氏はまた,「Liberty AllianceとPassportは,いずれもXMLやSOAPに対応しており,フェデレーションモデルを採用していく。いつのことになるか,具体的に予測することはできないが,いずれは両者の統合が実現されるだろう」とコメントしている。

関連リンク

▼RSA Conference 2002 Japan

[高橋睦美 ,ITmedia]