エンタープライズ:トピックス 2002年6月12日更新

エリソンCEO、敢えて「Unbreakable Linux」を強調せず

 6月12日、中国・北京で開幕した「Oracle World 北京 2002」で、オラクルのラリー・エリソン会長兼CEOは、当初予想に反して、Linux分野の新しいメッセージ「Unbreakable Linux」(不死身のLinux)について自ら多く語ることはしなかった。

「Unbreakable Linux」を口にしなかったエリソン氏

 オラクルは米国時間の6月5日、新しいOracle9i Release 2においてLinuxのサポートを強化することを明らかにしていた。デルコンピュータ、レッドハットの協力を得て、拡張性と信頼性を備えながら、コストを低く抑えることができるLinuxクラスタリングソリューションを開発するもので、デルでは、同社のPowerEdgeサーバで堅牢なRed Hat Linux Advanced ServerとOracle9i Real Application Clusters(Oracle9i RAC)が動作することを検証したうえで提供するという。

 紅旗リナックスの例もあるように、中国政府はソフトウェア産業を育成し、この分野でも輸入国ではなく、輸出国になるためにLinuxを支援している。中国でもオラクルによる「Unbreakable Linux」に関する同市場向けの強烈なメッセージが期待された。

 しかし、この日のキーノートでエリソン氏は、「Linuxサーバをクラスタ化することによって、企業は高い性能と信頼性、そしてローコストを兼ね備えたLinuxソリューションを手にすることができる」としたのにとどまり、「Oracleデータベース、アプリケーションサーバ、そしてE-Business Suite、すべてがLinux上で動作する。パーフェクトだ」と話したレネ・ボンバーニ副社長とは対照的だった。

 プレスQ&Aでも、Unbreakable Linuxに関する質問が飛んだが、「われわれはユーザーのニーズにこたえる。もちろん、Solaris、hp-ux、AIX、そしてWindowsさえもサポートしていく」とエリソン氏は答えている。

 こうした背景には、オラクルの思惑を超えて、中国市場におけるオープンシステムに対する需要が旺盛になっていることがあるようだ。

「中国は、レガシーシステムがないという点で極めてユニークな市場だ」とエリソン氏。

 電気通信分野を見れば分かるが、地上に交換回線網が整備されていなかったため、携帯電話が急速に普及している。

「欧米はメインフレーム、PCという各世代を経て、インターネットコンピューティングに進化したが、中国は一気にインターネット、Linux、ワイヤレスに到達する。われわれこそ、中国の成長に追いつかなければならない」(エリソン氏)

 まさに中国のIT市場はビッグバンを迎えようとしている。広州の深せんに続き、北京にも開発センターをオープンさせる計画を明らかにするなど、オラクルは対中国投資を加速させている。

 エリソン氏は、「中国投資の急拡大はリスク? 投資しないことこそリスクだ」と話す。

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[浅井英二 ,ITmedia]