エンタープライズ:トピックス 2002年6月26日更新

「ウイルス対策はテクノロジだけでは限界」、トレンドマイクロが企業向け新戦略を発表

 トレンドマイクロは6月25日、企業向けの新しいウイルス対策戦略「トレンドマイクロ エンタープライズ プロテクション ストラテジー」(TM EPS)を発表した。

 同社はこれまでも、企業向けに、集中管理が可能なウイルス対策製品「ウイルスバスター コーポレートエディション」のほか、ゲートウェイサーバやグループウェア、ファイルサーバそれぞれに応じたウイルス対策製品を提供してきた。

 しかし、今回の発表に合わせて来日したトレンドマイクロCEOのスティーブ・チャン氏は、Code RedやNimdaに代表される“複合型の脅威”が登場してきた現在、製品ベースの対策には限界があるとした。

トレンドマイクロCEOのスティーブ・チャン氏

「ネットワークセキュリティの状況はますます悪化している。テクノロジや単体の製品だけでは、この問題を解決することはできない」(チャン氏)。そして、顧客のe-ビジネスを保護し、動かし続けるために、製品とサービス、それに付加価値を実現するパートナーとのアライアンスを組み合わせて提供していくのがTM EPSだという。

ウイルス対策のライフサイクルをサポート

 TM EPSのフレームワークでは、新種ウイルスの発見から対策終了、被害収束までの一連のサイクルを「ウイルスアウトブレークライフサイクル」と名付け、「事前対策」「ウイルス検出/駆除」「回復/損害診断」という3つの段階に区分けしている。

 従来より提供されてきた企業向けのウイルス対策集中管理ツール「Trend Virus Control System」では、上記の3つの段階のうち、ウイルス対策パターンファイルの更新や、実際のウイルス検出/駆除作業からなる「ウイルス検出/駆除」は実現できても、それ以外の部分まではサポートできない。

 これに対しTM EPSでは、新たに3つに分類されたウイルス対策製品群に加え、フレームワークの中心となる管理ツール「Trend Micro Control Manager」と、ウイルス解析・サポートセンター「TrendLabs」に蓄積されたナレッジとノウハウに基づいて作成・配信されるさまざまなサービスが組み合わせて提供される。これにより、新種のウイルスが登場しても、早期に対策を打ち、大規模な被害を未然に防ぐことができるという。

 例えば、何らかの新種のウイルスが発生した場合には、TrendLabsから顧客企業向けに、「このポートを塞ぐべき」「ファイルサーバ内の全てのファイルを検索すべき」といった具合に、そのウイルスの特性に応じた推奨ポリシーが配信される。ユーザーがTrend Micro Control Managerでこの内容を確認し、実行すると決定すれば、そのポリシーに沿って各製品の設定が自動的に変更される仕組みだ。この機能は「アウトブレークコマンダー」と呼ばれている。

「新しいウイルスが発生してから対策を考えるのではなく、常に先を読んでポリシーを提供し、手を打っていくという“Intuitive Information Security”が、TM EPSのもう1つのコンセプトだ」(チャン氏)

 また、複数の経路を使い分けて感染を広めるウイルスの場合、いったんネットワーク内のウイルス駆除が完了しても、再び別ルートから感染してしまうことがある。これを防ぐための再検索・駆除サービスも提供される。

Trend Micro Control Managerとの連携を

 トレンドマイクロでは、従来より提供してきた企業向けウイルス対策製品群を、Trend Micro Control Managerとの連携を可能にしたうえで、3つのグループに分けて提供していく。

 1つは、電子メール経由で拡散するウイルスへの対策を実現する「メッセージングセキュリティ製品群」だ。これには8月よりベータ版が提供される予定の「InterScan Messaging Security Suite 5.1」などが含まれる。

 他にも、HTTP経由で侵入するウイルスや不正なコードをブロックする「Webアクセスセキュリティ製品群」、ファイルサーバやストレージデバイス、クライアントPC向けのウイルス対策製品を含んだ「クライアント/サーバセキュリティ製品群」が提供される。Trend Micro Control Managerも含め、いずれも、2002年第4四半期から順次リリースされる予定だ。

 現時点では、Trend Micro Control ManagerやInterScan Messaging Security Suite 5.1、TM EPSで提供される各種サービスの価格などはまだ検討中という。

 ただし同社CFOのマヘンドラ・ネギ氏は、「最近ではどの会社も“サービス”をうたうようになっているが、トレンドマイクロではTM EPSのサービスにSLAを設定して提供する。また、われわれ自身のウイルスに関する知識や経験と、パートナー各社の付加価値サービスも、他社との差別化につながるだろう」と述べている。

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▼トレンドマイクロ

[高橋睦美 ,ITmedia]