エンタープライズ:コラム 2002/07/09 20:59:00 更新


Linux Column:「Xbox Linux」を推理する

「Xbox Linux Project」によれば、匿名希望の誰かがマイクロソフトのゲームマシン「Xbox」でLinuxを動かすためのプロジェクトに20万ドルの賞金を出すことが決まったとか……。オープンソースの世界では、貢献度の高いプロジェクトに対して賞金を出すことがあるが、1〜2万ドルぐらい。一桁違う金額だが、これはいったい何なのだろう?

Xbox Linux Project」の発表によれば、匿名希望の誰かが、マイクロソフトのゲームマシン「Xbox」でLinuxを動かすためのプロジェクトに20万ドルの賞金を出すことを決めたとか……。オープンソースの世界では、貢献度の高いプロジェクトに対して賞金を出すことがあるが、それでも大体1〜2万ドルぐらいが相場だ。文字通り一桁違う金額なのだが、これはいったい何なのだろう?

 これまで、セガの「DreamCast」やソニーの「PlayStation 2」と2つのゲームマシンがLinux移植の対象となった。前者はどちらかというと技術的な興味から、後者はソニーという企業の戦略の一環としてLinuxが移植されたと筆者は見ている。

 では、Xboxは……?

 単なる技術的な興味ということであれば、わざわざ大金を出す必要はないだろう。自分で動かない、動けないのだとしても、そのようなモチベーションというのは金で動くものではない。これはオープンソースムーブメント全体を通して言えることだ。

 では、何かの戦略の一環か?

 例えば、Xboxをネット端末にしたいと考えている企業が先行投資のための「撒き餌」をしたとは考えられるだろうか。これはありそうな話だ。PS2 Linuxの場合、LinuxカーネルとPS2本体の間にSCEが開発したソフトウェアが必要となる。このソフトウェアはSCEが著作権を留保しており、第3者が自由にすることはできない。

 基本的にこの場合は、ソニーのネット家電戦略の一部分と化しているものであって、全然フリーではない。この件や、そもそものきっかけなど含めて筆者は心情的にアンチPS2 Linuxなのである。この辺りのことについてはそのうち書きたいと思っているが、さすがに書くとやばそうなので何かのイベントのときにでも酒でも飲みながら話したい(笑)。

 話がそれたが、Xbox Linuxへの賞金は、2つのプロジェクトに分かれている。1つはXboxのBIOSなどのハード的に改変を伴うもの、もう1つは素のままのXboxでLinuxを動かすもの、それぞれ10万ドルずつだ。前者を踏み台にして後者にたどり着ければ、かなりフリーなネット端末が作れそうだ。それも激安でだ。Xboxは、既にだぶついて値崩れしているしね(ハード的な部分については、いろいろあるようなのだが、内緒の話も多いみたいなのでとりあえずそうしておく)。

 さて、ではこれをしかけたのは誰か?

 影でビルゲイツが動いている……。面白いが「ノー」。結局のところ利益が出ない。

 オラクルのラリーエリソン……。「ありそうだ」。Linux推進派だし、過去にNC(Network Computer)なんてのもやっている。しかし、そう考えるとゲイツが作ったハードで実現するのは彼のプライドが許さないだろう。

 各家庭でLinuxによるネット端末が動くことでより大きなメリットを受ける企業。筆者の推理では、この件の黒幕はA○Lではないだろうかと思っている(希望的観測90%)。

 過去にLinuxを利用した端末の開発を発表するなどLinuxに理解があり、ナンバーワンのネットワークユーザーを抱えている。そして何よりアンチMSでありながら、エリソンのようにハードウェアに固執はしていない。もちろん、ソニーのネット戦略にも打ち勝つことができる。

さて、この推理、あなたならどう見ますか? ご意見はメール(tmiyahar@Begi.net)で……。

[宮原 徹,びぎねっと]