エンタープライズ:ニュース 2002/07/19 22:04:00 更新


マイクロソフト、新ライセンスプランで「棚ぼた」好業績

マイクロソフトが4〜6月期と2002年度の業績を報告。Windows XPの好調な売れ行き、新しいライセンスプログラムの移行期限を前にした駆け込み登録で売り上げ10%増の好業績となった。

 マイクロソフトは7月18日に2002年第4四半期(4〜6月期)の決算を発表。Windows XPと、新しい――そして少々物議を醸している――企業向けライセンスプランによる売上増で、10%の増収となった。

 また同四半期の純利益は15億3000万ドル(1株当たり28セント)と、前年同期の6500万ドル(1株当たり1セント)に比べて大きく拡大。2002年度(6月30日締め)通期では、純利益は78億3000万ドル、1株当たりの利益(ESP)は1ドル41セント。これに対し前年度の純利益は73億4600万ドル、EPSは1ドル32セント。

 8億600万ドルの諸費用を除いた場合の利益は、4〜6月期は28億7000万ドル(EPSが43セント)、通期では119億1000万ドル(EPSが1ドル94セント)となる。

 ファーストコールがまとめたアナリスト予測では、EPSは4〜6月期が42セント、通期が1ドル83セントとなっていた。

 4〜6月期の売上高は72億5000万ドルと、前年同期の65億8000万ドルから10%伸びた。通期では283億7000万ドルと、前年度の253億ドルから拡大している。

 アナリストの売上高予測は、同四半期が70億6000万ドル、通期が282億5000万ドルだった。マイクロソフトの4月時の売上高見通しは、同四半期が70億〜71億ドル、通期が281億〜282億となっていた。

 財務アナリスト向け電話会見で、マイクロソフトのCFO(最高財務責任者)、ジョン・コナーズ氏は、4〜6月期および2002年度の業績が好調だったのは、Windows XP、Xbox、MSN、サーバ製品の売れ行きが良かったからだと話した。

「PC需要と企業のIT支出の低迷にもかかわらず、当社は決算報告で極めて堅調な業績を伝えることができた」と同氏。

 予想通り、同社は7月1日から始まった第1四半期(7〜9月期)と2003年度の業績見通しを明らかにした。7〜9月期の見通しは、70億〜71億ドルの売上高に対し、EPSが42〜43セント程度。

 また2003年度通期の見通しは、314億〜320億ドルの売上高に対し、EPSが1ドル85セント〜1ドル91セント。4月時の同年度の見通しは、売上高が315億〜324億ドル、EPSが1ドル89セント〜1ドル92セントとなっていた。

 この不況にもかかわらず、一部のアナリストはマイクロソフトの2003年度業績に対して強気な見方を維持している。

 バーンスタインのアナリスト、チャールズ・ディ・ボーナ氏は7月17日付のリサーチノートで次のように述べている。「われわれのEPS予測は2ドル4セントと、マイクロソフトの業績見通しをかなり上回っている。アナリストコンセンサス予測は1ドル92セント。これは、現在のアップグレードサイクルと価格体系変更の影響、IT支出の回復のタイミング、.Net Webサービス戦略の力に関するわれわれの評価に基づいたものだ」。

 マイクロソフトは2003年度に、重要なソフトアップグレードやWebサービス戦略の構成要素を多数リリースする。Windows .Net Server、Windows Media 9 Seires、Exchange Server、Windows XP Media Center、Tablet PCなどがそうだ。

 またメリルリンチのアナリスト、クリストファー・シラクス氏は17日付のリサーチノートで、マイクロソフトの2003年度について慎重ながら楽観的な見通しを示した。シラクス氏もディ・ボーナ氏も、マイクロソフトの株価は12カ月以内に65ドルに達すると予測している。

 ディ・ボーナ氏は、マイクロソフト株は「現在、過去10年間で最低に近いレベルで取り引きされている」としている。

 同社株は18日の決算報告前、89セント(1.7%)安の51ドル11セントで引けた。

ライセンスプランの影響

 予想通り、マイクロソフトの4〜6月期を支えたのは、大口顧客による(新ライセンスプログラムの)タイムリミット寸前の支出だった。これは、マイクロソフトのバランスシートに大きな前受収益をもたらした。同社が同四半期に突入した時点で、大口顧客の約3分の2が、7月31日に移行期限を迎える新しいライセンスプログラムにまだ登録していなかった。

 同社の4〜6月期の前受収益は77億4000万ドルと、前年同期の56億1000万ドルから拡大している。前受収益は、契約により保証されているが、まだ支払われていない売り上げのこと。

 Officeなどのデスクトップアプリケーションの前受収益は、34億9000万ドル(前年同期は21億9000万ドル)。PC版Windowsの前受収益は前年同期の25億9000万ドルから32億ドルに伸びた。

 新しいライセンスプログラムでは、企業は割引価格でアップグレードを受けるために、2−3年契約の「Software Assurance」プログラムに登録しなければならない。だがマイクロソフトは新プログラムを推し進める過程で、最も人気の高いライセンス購入手段を排除している。市場調査会社のガートナーによると、実質的に企業顧客の支払うライセンス料は33〜107%増えることになるという。

 一部のアナリストは、多数の企業が期限ギリギリに新プログラムに登録する――これにより、2003年度の最初の月にも追加の売上がもたらされるだろう――ことを見越して、4〜6月のEPSを46セントと予測していた。

 前受収益の大半はソフトのライセンス料金によるものだが、一部にはそれ以外の収益源から得られたものもある。マイクロソフトはテクニカルサポートなど、顧客の手に渡らないものも前受収益に含めている。例えばこうした収益源は、Windows XP Home Editionの前受収益の20−25%、Windows XP Professionalおよびデスクトップアプリケーションの前受収益の10〜15%を占めている。

「バランスシート上で前受収益は大きく増加しており、前年同期から38%、前四半期から8億3000万ドル拡大している。これは、4〜6月期にかなりの数の“年金契約”が結ばれたことを反映している」と、マイクロソフトのコーポレートコントローラー、スコット・ボッグス氏は話す。

 同氏は、来年は77億4000万ドルの前受収益のうち60億ドルが実際に懐に入ってくると見ている。4〜6月期は、繰延されていたライセンス収入が、売上高の20%を占めていた。

「エンタープライズソフト/サービスの前受収益は、昨年に比べて102%増と驚くほど伸びた。これ(新ライセンスプラン)を機会に、ライセンス契約に含めるサーバ製品を増やす顧客が多くなったからだ」と同氏。一方4〜6月期のデスクトップアプリケーションの前受収益は、前年同期から59%拡大した。

 だが、少なくとも大口顧客の3分の1は、新ライセンスプログラムへの登録を拒否しており、このプログラムの長期的な影響は依然として不確かだ。市場調査会社ディレクションズ・オン・マイクロソフトの社長兼共同創設者のジェフ・パーカー氏は16日に、マイクロソフトの行く手にトラブルが立ちはだかる可能性があるとして警告した。

「Software Assuranceは、短期的にはマイクロソフトの業績に貢献するかもしれない。顧客が有利な条件で契約を結ぼうと、7月31日までに慌ててこのプログラムに登録するからだ。しかし2−3年後、このプログラムの期限が切れ始めたときに、顧客が支払った料金に見合うものが得られなかったと考えて、契約を更新しないと決めたら、同社はピンチに見舞われるかもしれない」(同氏)。

 一部アナリストはより幅広い視点から見て、WindowsとOfficeは莫大なシェアを有するため、ライセンス料の値上げは極めて多数の企業に影響し、これが新しいコンピュータの売上にダメージを与えた可能性があるとして批判している。

 マイクロソフトの「複雑な新ライセンス契約の(7月31日の)移行期限が、PC需要の停滞を招いた」と、U.Sバンコープのパイパー・ジェフリーのアナリスト、エイショック・クマー氏は指摘する。

「米国内では需要は安定しているように見えるが、CIO(情報統括責任者)は依然として現金燃焼率の削減に力を入れている」

地域別/分野別の売り上げ

 地域別に見ると、南太平洋/米国地域の4〜6月期の売上高は、前年同期の26億6000万ドルから12%増えて29億8000万ドル。前四半期は27億6000万ドルだった。欧州/中東/アフリカ地域の売上高は12億2000万ドル。これに対して、前年同期は11億5000万ドル、前四半期は13億9000万ドル。アジア地域は前年同期の7億7700万ドルから9%下落して、7億400万ドルとなっている。また前四半期は8億1800万ドル。

 OEMの売上高は23億4000万ドル。これに対して前年同期は20億ドル、前四半期は22億9000万ドルだった。

 デスクトップ/サーバソフトおよびサービスの売上高は、前年同期の58億4000万ドルから8%拡大して、合計63億2000万ドルとなった。前四半期の売上高は60億だった。

 デスクトップアプリケーションの売上高は25億2000万ドルと、前年同期の25億1000万ドル、前四半期の24億4000万ドルから拡大した。

 デスクトップ版Windowsの売上高は、前年同期の20億4000万ドルから20%伸びて、24億4000万ドル。前四半期は22億9000万ドルだった。Windows 2000およびWindows XP Professionalの売上が伸びたことが、売上増に大きく貢献した。

 エンタープライズソフトの売上高は13億5000万ドルと、前年同期の12億9000万ドル、前四半期の12億8000万ドルから拡大した。

 コンシューマー向けソフト、サービス、デバイス(インターネットアクセス、オンラインサービス、Xbox含む)については、売上高が前年同期の5億900万ドルから8億2200万ドルに増加した。

 HomeAdvisorやCarPointを含むコンシューマー向け商取引事業は、売上高が1300万ドルに縮小した。これに対し、前年同期は9600万ドル、前四半期は4500万ドルだった。

[Joe Wilcox,ITmedia]