エンタープライズ:ニュース 2002/07/19 22:57:00 更新


IETF 横浜会議閉幕、次の課題は……

7月14日から19日にかけて、パシフィコ横浜を会場に、IETF(Internet Engeneering Task Force)の第54回ミーティングが開催された。今回のミーティングは日本での開催ということもあいまって、IPv6という技術の位置付けがいよいよ固まったという。

 7月14日から19日にかけて、パシフィコ横浜を会場に、IETF(Internet Engeneering Task Force)の第54回ミーティング(第54回IETF 横浜会議)が開催された。

 ご存知の方も多いと思うが、IETFはIPネットワーク上でのやり取り手順や“お作法”、つまりプロトコルの標準仕様を作成する国際組織だ。われわれが当たり前のように利用しているPOP、SMTP、HTTP、FTP……そしてIPおよびIPv6といった数々のプロトコルは、IETFの標準化活動の成果である。

 もともとのインターネットの性格を反映してか、IETFではオープンに議論が行なわれ、コンセンサスに基づいた標準化プロセスを取っている。まず「Draft」の形で提案された草案は、メーリングリストでの議論を経てさまざまに修正が加えられる。最終案の「Last Call」を経て異論が出なければ、承認の上、めでたく標準仕様の「RFC(Request for Comments)」となるわけだ。こうして策定されてきたRFCの数は、今では3300近くに上っている。

 IETFミーティングは、普段はメールでやり取りしているエンジニアが一堂に会し、直接議論を交わす場で、年に3回開催されている。

 会議の参加者は2001名。うち日本からは800人を超える参加があった。IPv6のほか、DNS、マルチキャスト、モビリティ、MPLSやSIP、LDAP、PKIやS/MIME、IS-ISなど、ありとあらゆる分野を網羅する81のワーキンググループに分かれ、各トピックに関する報告やアップデート、新ドラフトの紹介などが行なわれた。

IPv6は「今の」プロトコルに

 このIETFミーティングが英語圏以外の地域で開催されるのは、実は第54回IETF 横浜会議が初めて。インターネットソサエティが主催する国際会議「INET」が、1992年に日本で開催されていたことを考えると、やや意外な気もする。

 第54回IETF 横浜会議のホスト役となったWIDEプロジェクトの代表、村井純氏は、7月19日に開催されたプレス向け懇親会の中で、「(日本で開催することによって)日本のエンジニアへのいい刺激になったし、これから自信を持ってやっていくきっかけにもなった」と述べた。

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会期中のネットワーク運用にも触れながら、IETF 横浜会議を総括する村井氏

 IPv6の標準化作業を日本のエンジニアが率先して引っ張ってきただけでなく、実装やサービスの面で、世界的に先を行く水準にあるのは事実だ。

 そしてこのミーティングは、IETFにおけるIPv6の位置付けが変わったという意味でも、大きな一里塚になったようだ。プレナリー(全体総会)では、司会役のメンバーが「IPv6は、インターネットの勝利あのプロトコルではない。今のプロトコルだ」と語ったという。

 商用のIPv6サービスや対応製品が登場している日本で開催したこともあって、「IPv6に関する不安や問題は、今回のミーティングですべてクリアになった」(村井氏)。もはや普及するかしないかを問う段階ではなく、ビジネスも踏まえながら、現実の世界でどのように展開していくかを考えるフェーズに来ているようだ。

次は「Mobile Network」

 今後はIPv6以外の分野でも、日本のリーダーシップが求められているという。その例がインターネットFAXであり、UDLR(衛星を利用してインターネットサービスを提供するためのアーキテクチャ)という。

 また、MobileIPの次の技術である「Mobile Network」(Network Mobility:NEMOとも)においても、日本が重要な役割を果たすことになりそうだ。というのも、日本では複数のインターネットカー(インターネットITS)実験を通して、ネットワークセグメントごとの移動に関する技術開発とノウハウの蓄積が進んでいるからだ。

 MobileIPは、単独のノード(端末)のモビリティを実現するものだが、Mobile Networkは、複数のノードからなるネットワークセグメントそのもののモビリティを実現するための技術群。今回は非公式ミーティングの中でおおまかな要件の洗い出しが終わり、次のIETF Atlantaではワーキンググループとして組織されることになる見込みだ。これから来年にかけて、MobileIPv6の技術を織り込みながら、複数のモバイルルータ(MR)を経由する場合のネスティング、経路の最適化やマルチホーミングなど、さまざまな課題に取り組んでいくという。

 ちなみにIETFミーティングはネットワークエンジニアの集まり、それも一瞬でもネットワークがなければ“窒息”するという人々が集まってくるだけに、ネットワークインフラの整備も大変だったようだ。

 同会議では、スポンサーとなった富士通をはじめ各社の協賛を得て、会場となったパシフィコ横浜のほか、会場近くのホテルで、無線LANによるIPv4/v6接続を提供した。参加者の87パーセントに当たる1650人がこれを利用したという。ただ展示会などとは異なり、24時間ひっきりなしに利用されるため、アイドルタイムがない。時には台風の襲来から屋外設置のアンテナを守りながらの、ハードな運用になったという。

 次のミーティングは、11月のアトランタだ。今後は、「IETF全体としては、セキュリティとプライバシーが課題になるだろう。確かにIPSecなどのセキュリティ標準はあるが、鍵交換のメカニズムが難しいといった指摘がある。今後は実装しやすく、ユーザーにとって分かりやすいものを実現していく必要がある」と、WIDEプロジェクト運営協議会委員の江崎浩氏は述べている。

関連リンク
▼IETF

[高橋睦美,ITmedia]