エンタープライズ:コラム 2002/07/29 20:00:00 更新


Linux Column:ストリーミング市場に見るオープンソース化の波

リアルネットワークスが自社のストリーミング技術の核をオープンソース化した。名称も「Helix」と変更して、SDKとして無償での組み込み利用を可能にした。この動きは、マイクロソフトの「Corona」を強く意識したものであることは間違いなさそうだ。

 先週、リアルネットワークスが自社のストリーミング技術の核をオープンソース化し、SDKとして無償での組み込み利用を可能にした。名称も「Helix」と変更して、新たなる出発だ。このオープンソース化には当然、マイクロソフトの新しいメディア・テクノロジーである「Corona」(コードネーム)がライセンスフリーで利用可能となることが背景にある。Helixは、Coronaに対抗しようとしたものだろう。

 実際、ブロードバンド時代の新しいキラーコンテンツは今のところは見つかっておらず、ほとんどのサービスがストリーミングに向かうであろうことは想像に難くないので、今後1〜2年ぐらいは、ストリーミング市場はホットなバトルが繰り広げられるだろう。その戦いに際して、リアルネットワークスは武器としてオープンソース化を選んだということだ。

 当然、この武器は文字通り諸刃の剣であろう。Helixの技術を利用するソフトウェア会社が増えるだけでなく、利益も持っていくことになるからだ。場合によっては「いいとこ取り」を許すことになり、厳しい戦いを強いられることになる。

 どうも似たようなシチュエーションが頭の中に浮かんでしまう。先日、無事に1.0をリリースした「Mozilla」だ。Mozillaの産みの親であるネットスケープは、Navigatorで圧倒的なWebブラウザのシェアを誇りながら、マイクロソフトのInternet Explorerの追撃に遭い、Mozillaでオープンソース化を図るも結局は現在のIEの圧倒的なシェアと、第3勢力とも言えるタブブラウザやOperaなどの挟撃を受けている格好だ。

 Coronaは、間違いなくWindowsに「無償でバンドル」されて出てくるだろう。サーバソフトウェアも今の流れで行けば無償のままだ。まるでIEのように、市場がCorona一色で染め上げられてしまう可能性は低くない。その可能性を察知したのであろうか、Helixの発表にはオラクルを始めとした少なくない企業が賛同を表明している。

 オープンソースは、間違いなく大いなる力を秘めていると言ってよいだろう。特に急激なバランス変化や寡占に対した時に一段と魅力的な光を放つことになる。反面、その制御は難しいし、場合によっては失われるものも多いかもしれない。果たしてHelixの運命は如何に。「エピソード2」を見に行っている場合ではないかもしれない(筆者はさっさと見に行ったが……)

[宮原 徹,びぎねっと]