エンタープライズ:コラム 2002/08/06 19:21:00 更新


Linux Column:データフォーマットに未来はあるのか?

リアルネットワークスは、フリーな音楽データ圧縮フォーマット「Ogg Vorbis」を取り入れることを発表した。TCP/IPを使用しても特許使用料を支払ったりはしないが、なぜ音楽にはお金がかかるのだろうか?

 前回はリアルネットワークスが自社のストリーミング技術のコアをオープンソース化したことを取り上げた。このマーケットの動きはオープンソース化に大きく向かっているようだ。同じくリアルネットワークスは、同社のクライアントソフトウェアである「Real Player」に、Xiph.Orgの開発したフリーな音楽データ圧縮フォーマット「Ogg Vorbis」を取り入れることを発表したのだ。Xiph.Orgは7月19日にOgg Vorbisの正式版である1.0をリリースしている。

 現在、音楽データの標準的なフォーマットはMP3(正確にはMPEG-1 Audio Layer 3。MPEG-3ではない)となっているが、MP3に関するビジネスを行うたびに、MP3のソフトウェアを販売すると1ライセンスあたりいくら、データを販売するといくらと、じわじわとライセンス料がかかっている。

 これ自体は既存のソフトウェアのビジネスモデルから考えればよくある商売のやり方ではあるが、このやり方が果たして本当に正しいのであろうか?

 少なくとも、インターネットはオープンな標準に支えられて、紆余曲折はあったもののここまで成長してきた。少なくとも、だれもTCP/IPを使用するに際して特許使用料を支払ったりはしない。HTTPにしてもSMTPにしてもそうだ。また、メールを送るにしても、文字をデータ化して送信し、それを逆に文字化して画面に表示するとしても、どのソフトウェアも自由に行えることだ。では、なぜ音楽にはお金がかかるのだろうか?

 似たような動きが最近画像に関しても発生している。フォージェントネットワークスが突然JPEGに関する特許を取得していることを公にし、ロイヤリティの支払いを要求しているのだ。技術が普及するのをゆっくりと眺めていて、引き返せないところまできたら突然浮上する、いわゆる「サブマリン特許」だ。JPEGにしてもMPEGにしても、国際的な標準化グループが作成したにもかかわらず、特定私企業がそこから特許料の恩恵に預かるというのは何とも奇妙な構図だ。

 JPEGにはPNGが対抗馬として出てきたが、今ひとつ普及していない。これまでJPEGから乗り換えるメリットがなかったからだ。しかし、莫大なロイヤリティを要求されることを考えると、JPEGに代わるフリーな画像データフォーマットに与する企業が出てくることも考えられる。

 音楽にしてもそうだ。PCなどで動くソフトウェアについては、WinampなどもOgg Vorbisをサポートしているので、問題はいわゆるポータブルプレイヤーだ。是非、アップルあたりが「iPod」で早期のOgg Vorbisサポートなどをしてくれたら、拍手喝采モノであろうに。そうしたら私も1つ買おうかと思ったりするのだが。

[宮原 徹,びぎねっと]