エンタープライズ:ニュース 2002/08/07 18:17:00 更新


Keynote:「サイベースの統合技術ですべてのプロセスをカバー」とピープルソフトのCEO

サイベースの年次カンファレス「SYBASE TechWave 2002」のキーノートに、ピープルソフトのクレイグ・コンウェイCEOが登場した。今回のTechWaveでサイベースとの戦略提携を発表したピープルソフトは、サイベースの統合技術を利用して、顧客にさらなる価値を提供しようとしている。

 8月6日、サイベースの年次カンファレス「SYBASE TechWave 2002」のキーノートに、ピープルソフトのクレイグ・コンウェイCEOが登場した。

 今回のTechWaveでサイベースとの戦略提携を発表したピープルソフト。社内でPeopleSoftを利用しているサイベースは、パートナーシップを結ぶに格好の相手企業だ。コンウェイ氏は、「ピープルソフトとサイベースは、共に顧客企業をリアルタイムエンタープライズへ導く」と宣言した。

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定評ある「熱い」プレゼンは健在

 コンウェイ氏は、米国のソフトウェア企業トップの中で、最もプレゼンテーションがうまいと評判だ。ITベンダー各社のカンファレンスでは今年、キーノートスピーカーとして前ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏や、前ゼネラル・エレクトリックCEOのジャック・ウェルチ氏が引っ張りだこだが、主催者側のソリューションを分かった上で、適切にスピーチしてくれるのは、やはりITベンダーのトップだろう。

 そのコンウェイ氏は、講演の中で「売れっ子」ウェルチ氏の言葉を引用した。

「最も才能あるCEOと言われるウェルチ氏と会ったとき、彼は“企業がIT化することの価値”について話してくれた。あらゆる企業がどうやって競合優位性を確保するかを考えているが、社内をIT化することで、1つの優れた新製品を出荷する以上の価値を得ることができるというのだ」

 インターネットが「万能」とされた時代は過ぎた。コンウェイ氏は、「コンシューマー向けアプリケーションの進化により、株価や天気を楽にチェックできることがインターネットのインパクトと思われているが、インターネットをビジネスに利用することの効果をきちんと認識すべき」と話す。

 多くの企業も、インターネットがもたらしたインパクトを経営に取り込めば、多大な効果があることについては認めている。となれば、企業のITは、インターネットを前提としたものになる。こうしたニーズにこたえるべく、ピープルソフトは同社のアプリケーション群を「ピュアインターネットアーキテクチャ」と呼ばれる100%HTMLベースのものとして提供している。

 実際に、Web化の効果は大きいという。コンウェイ氏によれば、世界第2位の小売業者であるカルフールは、会計アプリケーションをWeb化しただけで、財務状況を3日間で把握できるようになった。それまでは、5週間かかっていたという。

 会計アプリだけでも効果があるが、ビジネスアプリケーションをすべてカバーするインテグレーション技術を利用すれば、より効果は大きい。

 コンウェイ氏は、受注してから代金を受け取るビジネスプロセスを自動化するアプリを、マーケティング、営業支援、オーダー入力、在庫管理、出荷(輸送)、請求、受け取り、確定、アフターサービスの9つに切り分け、単純化して示す。そして、それらをカバーするソリューションが、CRM、SCM、そしてERPの会計モジュールに分かれていることがそもそもの問題だとする。

「これらのビジネスプロセスでは、相互に情報を参照し合いたいというニーズがある。単にソフトウェアとして提供するのではなく、ビジネスを最適化するという視点では、ジョン(・チェン サイベースCEO)が力説したように、アプリケーションを統合することが必要になる」(同氏)

 今回の提携は、パートナー戦略を加速するサイベースにとって大きな意義を持つ。この日のキーノートでコンウェイ氏は、「サイベースのインテグレーション技術は、顧客企業を“リアルタイムエンタープライズ”へと導く優れたものだ。企業のあらゆるビジネスプロセスを自動化するために、われわれはパートナーシップを結んだ」と講演を締めた。

 ただし、キーノート終了後に話を聞いたコンウェイ氏は、「ピープルソフトは、DB2、Oracle、Microsoft SQL Serverをサポートしている。今回の提携は、PeopleSoft CRMでもAdaptive Server Enterpriseをサポートし、顧客に選択肢を与えるためのもの」とするに留まる。

 アプリケーションを売ってくれるIBMは無視できないが、IBMはSAPの方を向いている。数年後、システムをアップグレードする時期になれば、IBMはPeopleSoftをSAPに切り替える提案をするかもしれない。オラクルは、自社のアプリケーションを持っており、できれば顧客にデータベースベンダーとして採用されたくない……。

 もしサイベースが、より強力なサービス部門を持てば、こうしたジレンマを解決し、ピープルソフトからさらなるコミットをもらえるだろう。

関連リンク
▼サイベース
▼ピープルソフト

[井津元由比古,ITmedia]