エンタープライズ:コラム 2002/08/19 19:51:00 更新


Linux Column:エンタープライズLinuxは年内が正念場か?

富士通とオラクルが8CPUのLinuxマシンでOracle9i Databaseの動作を確認したという発表があった。エンタープライズ分野でのLinuxについて、じわじわと山の頂を狙うような発表が散見されるようになってきた。今年の後半からは具体的な導入ケースというのが見えてくることを期待したくなる。

 常に議論されていることだが、果たしてLinuxはエンタープライズ向けのシステムに利用できるのだろうか。これについての答えはまだまだ出てはいないのだが、先日2つほど気になる発表があったので、それについて考えてみたい。

 1つは富士通とオラクルが8CPUのLinuxマシンでOracle9i Databaseの動作を確認したという発表だ。動作確認に関する技術的な詳細については明らかになっていないが、メモリが8Gバイト、HDDの総容量が2.3テラバイトと、スペックだけ見れば一昔前のエンタープライズ向けのシステムと言えるのではないだろうか。IA-32ベースのシステムのため、コストパフォーマンスの高さも見逃せないだろう。

 このテストでテラバイトクラスのデータベースが構築されたのかが非常に興味が湧くところだ。なぜならほんの数年前のOracle OpenWorldにおいて、目玉の一つとして某商用UNIXとOracle8iを使ってテラバイト・データベースのデモンストレーションを大々的にやっていたことを思い出したからだ。現在ではトップクラスでは数百テラバイトのデータベースと2ケタ違う領域に入っているようだが、そのようなデータベースを必要とする顧客はまだまだ僅かだろうし、Linuxも1つ上のステージが見えてきたのではないかなと思わせる発表である。

 もう1つはSAPとIBMが、IBMのメインフレームクラスにあたるzSeries上で動作するz/Linuxを、SAPのERPパッケージソリューションであるmySAP.comのサポート対象に加えるという発表だ。両社ともLinux対応に力を注いでいる企業だけに、このような発表が行われることは特に不思議でもない。しかし今回の発表で本格的なERPがメインフレームクラスのハイパワーを得て、よりスケーラブルに基幹系業務システムへとLinuxが入り込んでいく取っ掛かりを得られたのではないだろうか。

 今年に入ってからのLinuxの動きを見ていると、大きな動きはなかったと思わせる。反面、これらの発表のような、じわじわと山の頂を狙うような発表が散見されるようになってきた。とするならば、今年の後半からはより具体的な導入ケースというのが見えてくることを期待したくなる。Linuxも、いつまでもインターネットサーバー向けOSとは言っていられないだろうし、ここから年内ぐらいがエンタープライズ向けLinuxにとって一つの正念場かもしれない。

[宮原 徹,びぎねっと]