エンタープライズ:ニュース 2002/08/30 19:35:00 更新


コンソーシアムの活性化で勢いづく「HyperTransport」

AMDが開発したHyperTransportは、プロセッサとメモリやI/Oを高速で接続する技術だ。AMDはもちろん、サン、ブロードコム、シスコ、トランスメタ、NVIDIA、アップル、SGIなどがボードメンバーとして参加するコンソーシアムでは、将来を睨んだ仕様拡張作業も進められている。

「6年前、われわれは理想的なシステムのために何が必要なのかを考えた。例えば、PCチップセットのノースブリッジとサウスブリッジの接続はどうするべきなのか。プロセッサはチップセットとどのように結ばれるべきなのか。当時のPCに含まれるさまざまな要素すべてが、ハイパフォーマンスなシステムを構築する上で障害だった」とAMDで「HyperTransport」のマーケティングを統括するウェイン・マレツキー氏は振り返る。

 そして、その答えとして用意されたのがHyperTransportだった。HyperTransportはローコストでチップ間の超高速接続を実現する技術。それまでシステム性能を向上させるために不可欠と考えられていたさまざまな問題を、ソフトウェアの互換性を犠牲にすることなく解決できる。

 その性能は現行仕様のHyperTransport 1.0でも、最大800MHz。帯域幅は最大6.4Gバイト/秒、信号線当たりの速度は1.6Gバイト/秒に達する。その上、レイテンシーが低くレスポンシブという特徴も併せ持つため、PCI代替だけでなく、マルチプロセッサ間の高速接続にも応用できる。またシリアル技術であるため、壁に突き当たっているパラレルバスの技術と比較して、スケーラビリティと将来性にも優れている。

 また、HyperTransportはソフトウェアから見たとき、標準のPCIと同じであるかのように振る舞う。このため、パワーマネジメントや初期化プロセスなどがPCIと共通化され、既存OSなどへの実装も容易だ。

 例えば、AMDの次世代プロセッサである「Hammer」シリーズでは、プロセッサとチップセットの接続には16ビット転送の6.4Gバイト/秒の技術を用い、I/Oハブは8ビット(3.2Gバイト/秒)としてピンカウントを減らしている。このようにHyperTransportは、あらゆる分野で何らかを価値を提供できるアーキテクチャである。

 HyperTransportは、その接続速度に注目が集まることが多い。もちろん、目前の問題としてI/Oの帯域幅が広がることは重要である。しかし、万能性があるためチップ間のリンクインタフェースを統合できる点も大きなメリットだ。HyperTransportにはトンネルという概念があり、ほかのバスシステムへの接続を透過的にサポートするための仕様が盛り込まれている。

 さらにAMD製以外の複数のプロセッサでも、HyperTransportに収れんする動きがある。MIPSアーキテクチャがHyperTransportへの対応を表明しているほか、製品としては未発表だが、トランスメタが同技術の採用を見込んでいる。さらにその輪が拡がるだろうことは、HyperTransportコンソーシアムの顔ぶれを見るだけでも想像できるはずだ。

 HyperTransportコンソーシアムはAMD、サン・マイクロシステムズ、ブロードコム、シスコシステムズ、トランスメタ、NVIDIA(エヌビディア)、アップル、SGIなどがボードメンバーとして参加し、2001年7月に設立された。現在は52社が、同コンソーシアムに加盟しており、25社が加盟申請中という。

 マレツキー氏によると、コンソーシアムに加わる企業はITベンダーにとどまらず、電子ギターメーカーが楽器内のチップ間インターコネクトにHyperTransportを応用する計画もあるという。

 このほかにも変わり種の加盟ベンダーも何社かあり、PC以外の分野にもその応用範囲を広げ、そのために必要な機能にを追加していくという。

 例えば、HyperTransportのプロトコルをチップ間インターコネクトだけでなく高速ネットワークに応用するための追加仕様を近く完成させ、年内には最終仕様をリリースする予定という。HyperTransportのネットワーク拡張は、コンソーシアムメンバーによって提案され、正式仕様へと採用されたケース。ネットワークとして利用する場合はPCI互換とはならないが、有用な仕様は今後も積極的に採用していくという。

 現行HyperTransportの2倍の帯域を持つ次世代版HyperTransportのスペックも、現在コンソーシアム内のタスクフォースで検討されている。現行仕様のままでも、将来的には24Gバイト/秒性能を達成できる見込みだが、そのさらに2倍まで互換性を維持したまま引き上げられることになる。

[本田雅一,ITmedia]