| エンタープライズ:ニュース | 2002/09/03 20:23:00 更新 |

AMDのx86-64環境を歓迎するLinuxコミュニティー
SuSE LinuxとTurbo Linuxが、いずれも積極的にAMDのHammerアーキテクチャに対応する。しかも、x86-64版Linux上で既存の32ビットアプリケーションも動作し、速度も従来OSと同じ速度で動作する。企業はシステムを必要なところから部分的に64ビットへと移行させることが可能になる。
ローコストに64ビット環境へと移行可能なAMDのx86-64命令セットと、それを実装する第8世代プロセッサは、どうやらLinuxコミュニティーに好意的に受け入れられ、力強いサポートを受けることに成功したようだ。
LinuxトップベンダーのSuSE Linux、そしてアジア圏に強いTurbo Linuxは、いずれも積極的に次世代Athlonと「Opteron」が採用するHammerアーキテクチャに対応する。
SuSEによると、x86-64版のLinuxは、ほかのディストリビューションと同じソースツリーをベースに、Linuxおよびその周辺ソフトウェアの更新と同期しながらポート作業が続けられているという。
x86-64版Linuxは、カーネル、アプリケーションともにネイティブの64ビットコードで書き換えられ、既に実際の動作が可能な状態になっているという。そして、x86-64版Linux上で既存の32ビットアプリケーションも動作し、速度も従来OSと同じ速度で動作する、完全な上位互換性を持つという。
また、OS上でサポートされる仮想メモリ空間は512GバイトとWindowsよりも広く、実装可能なメモリは物理的に搭載可能なメモリ量に依存するのみという強力な仕様だ。
互換性の面では32ビットアプリケーションのシームレスかつハイパフォーマンスな実効環境だけでなく、システムブートの環境も32ビット版と全く同じという。このため、インストール作業は従来のLinuxと全く同じ手順でいい。x86-64版Linuxは現在、Linux 2.5カーネルをベースにしているが、2.4カーネルに関しても対応作業が進行中だ。
こうした互換性の高さは、x86-64版Linuxのカーネルに実装された32ビットエミュレーション機能により実現されているという。APIのパラメータは自動的にデータ長が調整され、共有ライブラリは同じ機能を実装した32ビット版と64ビット版を別々に管理される。それらは必要に応じてロードされ、自動的に呼び出すライブラリをカーネルが選択するという。
こうした高い互換性と優れた32ビット性能のおかげで、企業はシステムを必要なところから部分的に64ビットへと移行させることが可能になる。x86-64版Linuxでは32ビット版にあった、1プロセス2Gバイトのメモリアクセス制限がなくなり、すべてのメモリに対してフラットなアクセスも可能になる。メモリ容量に依存するデータベースシステムなどでは大きな性能の向上を期待できるだろう。
SuSEでは2000以上のアプリケーションを64ビットへと移植中で、その多くは既に動作している。ソースコードレベルの32ビットアプリケーションと64ビットアプリケーションの互換性も確保している。GNU開発ツール群も、もちろん64ビット対応を終えており、64ビットOSで動作しないアプリケーションをバグによって生み出してしまうことがないよう、新たなワーニングレベルが設定されている。
アジア圏のユーザーにとっては、Turbo Linuxの動向も気になるところかもしれない。しかし、ターボ、SuSE、SCOグループ(旧カルデラ)、コネクティバが共同で開発する標準化Linuxプラットフォームの「United Linux」は、x86-64版Linuxの成果を積極的に取り入れ、サポートしていくとしている。United Linuxは正式版リリース後、各社が自社製品としてそれぞれ販売していくことになるが、来年のリリース時にはx86-64対応を終える予定だ。
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