エンタープライズ:ニュース 2002/09/03 20:20:00 更新


今ひとつハッキリしないマイクロソフトのx86-64サポート

マイクロソフトとAMDは4月、Windowsへのx86-64の実装を共同で進めていくと発表したが、2004年の「Longhorn」まで待たなければならないかもしれない。ただ、マイクロソフトとしても、64ビットのすそ野を拡大する重要なプラットフォームとして認めている。

 Linuxコミュニティーの支持を勝ち得たAMDのHammerアーキテクチャだが、マイクロソフトの支援となると先行きが不透明なままだ。

 マイクロソフトはこれまで、リリースを年内に控えたWindows .Net Serverのx86-64対応について、「積極的に対応する方向で開発を進める」とする以外、あまり多くを語ろうとはしなかった。.Net Serverの64ビット版はDatacenter SeverとEnterprise Serverに対して提供される予定だが、最初の.Net Serverにはx86-64に対応したカーネルは含まれず、IA-64版のみになる見込みだ。

 マイクロソフトとAMDは今年4月24日、Windowsへのx86-64の実装を共同で進めていくというアナウンスを行ったが、現在はまだアルファバージョンの段階に過ぎない。その成果を製品として年内に出すことはできないという。

 では来年に追加されるのか? と言うと、こちらも今ひとつハッキリしないというのが現状だ。Linuxコミュニティーのx86-64への取り組みと比較すると、先行きは明らかに不透明なままだ。

 その原因は、恐らくWindowsのリリーススケジュールの合間に、新しいアーキテクチャに対応するリスクとコスト、そしてx86-64版投入による効果を計りかねているからだろう。Windows XPと同じWhistlerをベースとした.Net Serverが年内にリリースされるが、2004年後半以降には次期Windowsの「Longhorn」が控えている。それまでの間に新たにx86-64に対応したWindowsカーネルを投入することは、マイクロソフトにとって負担の大きな仕事になる。

 オープンソースで開発が進められるLinuxとは異なり、Windowsではさまざまなプラットフォームでの完全な動作をマイクロソフト自身が確認、ハードウェアやソフトウェアベンダーとのネゴシエーションをきちんと行ってからでなければ、対応版を公開することができない。現段階でハッキリしているのは、Longhornのx86-64版がリリースされるということで、それ以上のインフォメーションはないとマイクロソフトの担当者は話す。

 マイクロソフト側の視点に立てば、x86-64版WindowsがLonghorn以前に登場する可能性は低い。

 ただし、マイクロソフトは32ビットと64ビットの両方のコードでパフォーマンスを引き出せるHammerシリーズは、64ビットコンピューティングの裾野を広げる上で重要であるとも話している。あるいは、マイクロソフトはインテルの64ビットアーキテクチャが、順調に離陸できるか否かを見極めているのかもしれない。

 x86-64にマイクロソフトが対応することは間違いないが、もし彼らが64ビットコンピューティング普及のためにIA-64だけでは難しいと考えれば、その時期が前倒しになる可能性もあるだろう。

[本田雅一,ITmedia]