エンタープライズ:コラム 2002/09/12 21:23:00 更新


Opinion:モビリティを困難にするWindowsの謎

Windowsを搭載したノートPCを2つのネットワークで利用する場合、別のネットワークに移動したときに、ネットワークに適切に接続するためには,おびただしい数の設定を変更する必要がある。私が探した限り、これを解決するソフトウェアはNetSwitcherだけだ。

 Windows搭載のノートブックを2つのネットワーク間で移動させようと試みたことがあるだろうか?

 たとえば,職場のWindowsドメインとワークグループを使用しているホームネットワーク,あるいは,同じドメインにない2カ所の支社の例を考えてみてもらいたい。一方でノートブックを動かしたあと,もう一方で立ち上げようとしたとき,マシンをネットワークに適切に接続するためには,おびただしい数の設定を変更する必要がある。そしてそれは,切り替えをするたびに毎回必要な作業なのだ。

 Windowsは,モーバイルコンピューティングに数多くの技術革新を成し遂げてきたOSである反面,このニーズに対しては驚くほど鈍感なようである。対照的に,Mac OSにはもう何年も前から異なるロケーション設定を扱う機能が備わっている。私が話を聞いたOS 9ユーザーたちはこの「ロケーションマネージャー」という機能を絶賛していたが,アップルはこの機能を廃棄処分にして,「ネットワークロケーション」としてOS Xで新たに再設計を施し,ネットワークプリファレンスというひとまとまりの一部分として統合することに決めた(昔ながらのロケーションマネージャーを手放したくない人は,サードパーティからLocation Xと呼ばれるOS X対応のバージョンが提供されている)。

 では,Windowsの実態はどうなのだろうか? Windows搭載ノートブックで,2つの違ったロケーションで異なる設定の数は膨大である。マイクロソフトのネットワークと,たとえばノベルなどほかのネットワークでは,ネットワーク設定が異なるはずだ。フォルダやプリンタ,ドライブマッピングなどを含めたネットワーク共有や,デフォルトプリンターも問題だ。外線につなぐためには9をダイヤルするというルールなど,ダイヤルアップ設定も異なる。ファイル拡張マッピングも異なれば,電子メールプログラムや電子メールアカウント,ブラウザのブックマークやお気に入りも異なるといった具合だ。さらに,ロケーションが異なる標準時間帯に属している場合すらある。

 Windowsでこの問題を解決するために私は探し回った結果,ようやくたった1つだけ,ツールを探し当てた。機能は抜群だ。わずか14ドルのシェアウェアアプリケーションであるNetSwitcherを使えば,いくつでも好きなだけ,Windowsのコンフィギュレーション情報を保存し,簡単に復元することが可能となる。あなたがWindowsで行った設定をNetSwitcherが読み出す方法もあるし,NetSwitcherで直接変更を行ってもよい。そのようにして,任意の名前をつけたロケーションとしてその設定を保存することができるのだ。Mozillaのプロキシ設定すら保存可能である(ちなみに,OS XのネットワークロケーションプログラムはNetSwitcherほど多くのロケーション特有の情報を取り扱うことはできないようだ。といっても,この2つのプログラムが競合することはないが)。

 ノートブックがセットアップされていれば,コンピュータをシャットダウンしたり再起動するたびにNetSwitcherが質問のダイアログを表示し,起動後にどのロケーション設定を有効にすべきか聞いてくる。実際,事はもっと簡単な場合すらある。NetSwitcherプログラムを使えば明確な意図を持ってロケーションを変更することができるのだ。Windowsでは再起動の必要性に迫られることが多くあるが,その場合,ログアウトして再びログインし直せばいいだけだ。OS設計者が見過ごした便利な機能を提供してきたNorton Utilitiesと同様,過ぎし時代のユーティリティの役割を完璧に再現したものなのである。

 Nortonといえば,シマンテックはこの隙間ニーズにぴったりと対応したSymantec Mobile Essentialsと呼ばれる製品を発売していたことがある。

 だが,少し前に同社はこの製品を撤退させてしまった(製品はもはや手に入らないのだが,製品ページはいまだサイトに掲載されたままだ)。実際,このニーズに対する素晴らしい効果を謳ったFlashデモすら存在するのである。だが,私は製品そのものは記憶しているのだが,それが積極的に販売されていた記憶がない。おそらく,もっと広く知られていれば,もっとよく売れていたに違いない。

 このようなOSの不備を見るにつけ,私はマイクロソフトがこの機能をロケーションコントロールパネルか何かに統合すればいいのにと思う。あるいは,NetSwitcherのコードを買収すればすむことかもしれない(マイクロソフトの連中がMozillaの設定を維持するとは期待していないが)。

 それもいい考えかもしれないし,あるいはサードパーティにその資金の一部を工面させるように促すほうがよいかもしれない。いずれにしろ,ネットワークロケーション間でポータブルコンピュータを移動させるのならば,もっとよい代案が登場するまではNetSwitcherが必要である。

[Larry Seltzer,ITmedia]