エンタープライズ:ニュース 2002/09/19 15:20:00 更新


Keynote:一貫して「選択」「革新」「価値」を追求するサン

サンフランシスコで「SunNetwork」カンファレンスが開幕した。オープニングの基調講演に登場したマクニーリーCEOは、積極的な研究開発投資を維持し、買収も示唆するなど元気なところを見せた。また、「選択」「革新」「価値」を顧客に提供していく、という3つのスローガンを新たに打ち出した。これらは同社の原点ともいえる。

 9月18日午前、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで「SunNetwork 2002 Conference」が開幕した。1995年の「SunWorld Expo」以来7年ぶりとなるサン・マイクロシステムズの大規模なプライベートカンファレンスは、規模こそJavaOneカンファレンスに遠く及ばないものの、常にイノベーションを生み出し、業界に刺激を与え続けてきた同社の新しい戦略や技術が披露された。

 3日間にわたって175のテクニカルセッションが行われるほか、約200のパートナーらがデモを行う展示フロアも開設されている。サンによれば、事前の登録者は7000人に上るという。

 オープニングの基調講演に登場したスコット・マクニーリー会長兼社長兼CEOは、約1000人の顧客やパートナーらを前に、Solaris 9のリリース、iPlanet事業の統合、Sun ONE(Sun Open Net Environment)サーバ製品のSolarisへのバンドル、初の汎用LinuxサーバであるSun LX50のリリースなど、今年に入ってからの主要な発表を振り返りつつ、引き続き売り上げの14%を研究開発に投資していることを強調した。

「苦しい中でも研究開発費を削減していない。景気が回復するば、われわれの製品に対する需要も戻ってくると信じているからだ」(マクニーリー氏)

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「.Net vs. J2EE」「IBM vs. 人類」というお馴染みの対立軸についても触れたが、サンの戦略についてより多くの時間を割いたマクニーリー氏

 59億ドルのキャッシュを保持していることについても触れ、優れた技術を持つ会社の買収も「今なら安く買える」とし、積極的に進める考えを示した。

 1ケタ台に低迷する株価だけを見れば、まさに青息吐息のサンだが、IDCが取りまとめた最新のUNIXサーバ市場シェアでは、50%を獲得しており、またガートナーデータクエストの調査によれば、第2四半期のシェアは前年同期比32%増だったとする。ちなみにHP/コンパックが33%減、IBMは34%減に終わっている。

 もちろん、マクニーリー氏はUNIXサーバ市場自体が縮小していることは承知しており、「森で熊に出くわしたら、ほかのハイカーより先に逃げればいい」と冗談を飛ばした。

「われわれはアクセルを踏み込んで前進している。シェアは創業以来なかった伸びを示している」(マクニーリー氏)

 ストレージシステムの販売も目覚しい。

 この日発表されたIDCのストレージ市場調査によれば、第2四半期はサンだけが売り上げ、容量、台数のすべてで成長率を2ケタに乗せており、また、UNIX市場のストレージではトップにランクされている。

新しい「3つのスローガン」

 製品や技術というわけではないが、新しいスローガンもマクニーリー氏は今回のSunNetworkカンファレンスのために用意した。「We make the net work.」(ネットを使えるようにする)という言葉をさらに具体化する「チョイス」「イノベーション」、および「バリュー」の3つだ。

 チョイスは、同社が創業以来打ち出しているもので、オープンな標準だけに準拠した製品を提供すること。異機種が混在する環境にも対応できるし、サンを捨てて他社製品に移行することも簡単だ。

「顧客らは1社に縛られることを危惧する。Sun ONEではBEAシステムズの製品を選ぶことができるし、ブラウザを外したらSolarisが使えなくなるなんてことはない」(マクニーリー氏)

 イノベーションも創業以来のもので、そういう意味では、新しい3つのスローガンは同社の原点ともいえる。サンの研究所からはイノベーションが絶えず生まれていて、SunNetworkカンファレンスの2日目にロードマップの発表が予定されている「N1」構想もそうした技術の1つだ。同構想は、コンピュータの視点ではなく、ネットワーク全体を1台のコンピュータとして管理するためのもので、コンピュータシステムの複雑さを排除していくのが狙いだ。

 こうしたイノベーションを顧客ごとにソリューションとして提供していく同社のアプローチもユニークだ。

「顧客にiForce Ready Centerへ来てもらい、理想のコンピュータシステムを描いてもらう。サンとパートナーは、実際のハードウェアやソフトウェアでそのコンセプトを実証していき、統合化された製品としてSunToneパートナー経由で顧客に納入されていく」(マクニーリー氏)

 個々の製品を統合するリスクを顧客が負うのではなく、統合を実証した後に出荷し、そのコストはサンが負担するのが基本となるという。N1と同様、複雑さを排除するのが狙いだ。

「エンジニアの中にはパーツを選んで好みの自転車を組み上げる人が多いが、自動車や洗濯機はそのまま買う。コンピュータもそうなるべきだ」(マクニーリー氏)

 3つめのバリューの例として、マクニーリー氏は64ビットSPARCプロセッサを挙げた。マクニーリー氏は、「64ビットでは先を越されたくない」と話す。1995年から64ビット化をしたサンは、1000ドル未満のワークステーションから100万ドル以上もするハイエンドサーバまでバイナリ互換性を維持している。これも顧客にとっては、簡素化となる。

「今年(SunNetworkカンファレンスに)参加した人は、もう来年は来なくてもいい。われわれの戦略は一貫している。2007年になっても変わることはない」と、マクニーリー氏は自信を見せる。

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▼SunNetwork 2002 Conference レポート

[浅井英二,ITmedia]