エンタープライズ:ニュース 2002/09/26 22:04:00 更新


Keynote:「Javaバスの運転手はサンではなく、開発者の皆さんだ」とゴスリン副社長

JavaOneカンファレンス2日目の基調講演にはJavaの開発者として知られるゴスリン氏が登場。会場に集まった聴衆にDukeをあしらったTシャツとともに、「開発者の皆さんがJavaの進化の方向性を決めるのだ」というメッセージを投げかけた。

 9月26日、パシフィコ横浜で開催中のJavaOneカンファレンスの基調講演では、KDDIのau事業本部au事業企画本部サービス開発部長理事の安田豊氏、富士通ソフトウェア事業本部ミドルウェアプラットフォーム事業部事業部長代理の田中茂氏が登壇した。

 KDDIの安田氏は、au携帯電話サービスにおけるJava技術の動向について述べた。auの携帯電話端末でのJava対応は、これまでフェーズ1、フェーズ2と進んできているが、今日発売となる「A5301T」からフェーズ2.5を迎えたという。auは携帯電話サービスにおいてGPSを重要な差別化ポイントとしているが、フェーズ2ではGPS機能で得た位置情報は、ユーザーが自分からアクションを起こしてほかに送ることしかできなかった。これに対してフェーズ2.5では、センター側からのプッシュによって、携帯電話端末の位置情報を取得できるようになったという。

 もちろん、個人情報に対する配慮から、端末側で位置情報発信を許可する必要があるなど制約はあるが、KDDIではこの機能を利用して端末の位置を地図上に表示できる「GPSマップ」サービスを法人向けに開始する予定。トラックの運行管理や、ツアーガイド、営業マンの訪問販売管理などさまざまな応用が考えられるという。KDDIでは今後、携帯電話におけるローカルインターフェースも含めて、Javaを有効に活用していきたいとしている。

 続いて登壇した富士通の田中氏は、同社が展開している、Java技術を使ったWebサービス向けのフレームワークについて述べた。富士通のフレームワークアーキテクチャは、J2EEの開発スタイルに準拠したMVC(Model,View,Controller)モデルの採用、SOAP対応、携帯電話向け機能のサポート、帳票システムやCOBOLなどでかかれたレガシーシステムとの接続サポートといった特徴を持つなどと説明した。

 2氏に続いて、サン副社長でサン・フェローの肩書きを持つジェームズ・ゴスリン氏がトリを務める形で登場した。

gosling.jpg
JavaOne恒例?の、スリングショット(パチンコ)を使ってDuke Tシャツを打ち出すゴスリン氏。ちなみにゴムを支えているのはジョン・ゲイジ氏とロブ・ジンゲル氏という豪華組み合わせ

 ゴスリン氏は、「インターネットにサーモスタットや牛乳瓶などが本当に接続される世界になったらどうなるだろう。これまでネットワークは比較的シンプルだったが、今後はどんどんと複雑なものになっていく。複数の情報を複数に送るようになり、とてつもなく複雑なものになる」と切り出し、そうした状況でこそネットワークと親和性が高く、さまざまな機器での動作を前提としたJavaが重要なのだという。

 同氏は、ネットワークが複雑になっていくことは、「ネットワークの価値はそのコネクションの数に比例する」というメトカーフの法則をあげ、「1台のファクスは何の価値もないが、ファクスの数が増えれば莫大な価値になる」と述べて、価値を高めるものだとした。

 複雑になる一方のネットワークにおいて、Javaはさまざまな機器・ネットワークを包含できる概念的なフレームワークを提供するものだという。開発者にとっては、携帯電話向けに開発した技術は、そのままデータベースのバックエンドや特定のサーバ向けとしてもある程度は流用できるという。Javaはネットワークに接続された雑多なものを、1つのホモジーニアスなものにまとめられるうえ、開発のしやすさや、エンドからエンドまで理解できるといったメリットもあるとした。「かつてJavaのキャッチフレーズで“Write once, Run anywhere”というのがあったが、開発者にとってはむしろ“Learn once, ...”という言葉がぴったりだろう」とゴスリン氏は言う。

 今回、Javaの将来の展開に関して、ゴスリン氏から具体的な発言はなかった。Javaの将来については、「複数のプレーヤーが参加しており、誰でもいくらでも貢献できる。複数のプレーヤーが協業して貢献できる点が、ほかとの違い」という。「サンはJavaを生み出したが、もう管理していない。サンはもはやJavaというバスの運転手でない。このバスの運転手は開発者である皆さんなのだ」(同氏)

[佐々木千之,ITmedia]