エンタープライズ:ニュース 2002/10/01 23:54:00 更新


SIP対応電話機の投入は2003年春に、CEATEC JAPAN展示会

10月1日、幕張メッセにてCEATEC JAPAN 2002が開幕した。エンタープライズ向けソリューションの中で今回目立ったのは、SIPおよびH.323に対応したVoIP製品群だ。

 10月1日、幕張メッセにてCEATEC JAPAN 2002が開幕した。展示会会場で最も来場者の興味を引いたのは、おそらくモーバイル機器やAV機器だろう。だがここはエンタープライズチャンネルらしく、あえて地道な企業向けソリューションに注目したい。今回目立ったのは、SIPおよびH.323に対応したVoIP製品群だ。

 HATS推進会議(高度通信システム相互接続推進会議)のブースでは、複数のベンダーによるVoIPシステムのデモンストレーションが行われた。NECや富士通、日立製作所、沖電気工業といった国産勢に加え、シスコシステムズやアバイアといった海外ベンダーが参加。来年春以降の市場投入を目指して開発が進む、SIP対応のIP電話機のほか、VoIPゲートウェイやIP-PBXが勢ぞろいした。

 SIP(Session Initiation Protocol)は、従来より用いられてきたH.323に代わり、企業向けVoIPシステム構築において注目を集めているプロトコルだ。Webへの親和性を念頭に置いて仕様が策定されたこともあり、CRMをはじめとする他のアプリケーションとの連携が容易なことが最大の特徴である。また、Windows XPやPocket PCを搭載したPDA端末との間でも通話が可能だ。

 HATS推進会議参加企業の1社である日立製作所の説明によると、上記の特徴に加えて、「SIPは元々、相互接続について考慮していたこともあり、H.323に比べて異機種、異ベンダー間でもつながりやすい」こともメリットという。事実、今回のHATS推進会議のデモンストレーションでは、NECと岩崎通信機、富士通、ソフトフロント、そしてシスコシステムズの各IP電話端末との間で、SIPおよびH.323を用いて、相互接続性をデモンストレーションできているという。

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日立製作所がHATSブースの相互接続で利用していたSIP対応のIP電話機(試作機)

 HATS推進会議のデモンストレーションでは、会場内に擬似的なLAN環境を構築。これをインフラに、マルチベンダーのIP電話機やソフトフォン、PBXを接続し、来場者がそれぞれ好きな端末に向けて通話を体験できる。このLANはPSTN(公衆網)にもつながっており、オフィスなどへ発信することも可能だ。

 その一方で、H.323にもH.323なりの良さがある。動画なども配信できることに加え、最大のポイントは、これまでに重ねてきた実績ゆえの安定性にあるだろう。沖電気工業ブースの担当者は、「“新しい”ということもあってSIPには注目が集まっているが、だからといってH.323がすぐなくなるということはない」と述べている。

 いずれにせよ、通話品質の問題はほぼクリアできたようだ。「完全にアナログ電話と同等の通話品質かというと難しい。アナライザで見れば確かに違いはあるからだ。だが耳で聞いてみると、アナログ電話に遜色ないレベルに達している。携帯電話に比べれば、上回っているのは間違いない」と、各社担当者は口を揃える。

 異ベンダー間の相互接続も、HATSをはじめとするさまざまなトライアルを通じて、H.323およびSIPの両方に渡って、ノウハウが蓄積されてきている。

 エンタープライズシステムにおける導入を考えたとき、課題の1つは信頼性、冗長性の確保だ。解決策としては、IP電話やPBXそのもの二重化、通信経路の二重化などが考えられるが、これらをきっちり実装していくと初期投資費用がかさんでしまい、VoIPのメリットとして前面に出される「コスト削減」効果が薄れてしまうのが悩みどころ。となると、全てをVoIP化するのではなく、一部にはアナログ電話やPHS端末を残しておくといった具合に、何らかの形でバックアップ回線を組み込んでネットワークを構築するしかなさそうだ。

SIP対応IP電話機の登場は「2003年春」

 CEATEC JAPAN展示会で紹介されたSIP対応のIP電話機は、一般住宅での利用を想定した機種だけではない。保留音や電話帳、発着信履歴といった、仕事を進める上では不可欠な機能を備えたビジネスIPフォンが目立った。

 その1つである岩崎通信機では、現在開発中の「岩通ビジネホンVoIPシステム」を紹介。グルーピングをはじめ、既存のビジネスフォンに搭載されていた機能をそのままサポートするもので、来年春の製品化を目指しているという。

 またシスコシステムズは、以前より国内販売を行ってきた「IP Phone」シリーズを紹介した。現在の製品は英語版で、液晶表示も英語のみだが、顧客からのニーズに応えて日本語対応を図っている最中という。

 他にも日立製作所、沖電気工業などが、SIP対応のIP電話機のデモンストレーションを行った。いずれも2003年3月以降をめどに製品化する方針だ。

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沖電気工業では、IP電話機とソフトフォン、有線ネットワークとワイヤレス環境などを組み合わせてのデモンストレーションを行った

「これまで市場に投入されてきたIP電話機の多くは、音声通話はできても、それ以外の機能となると“今ひとつ”というのが正直なところだった」と日立製作所担当者は語る。これに対し、来年以降投入される新製品では、保留音をはじめ、国内の企業ユーザーが必要としてきた機能が実現される見込みだ。

 また、スカイウェイブは、ビジネスショウやWireless Japanなど他の展示会でも紹介してきた「Sky Phone」シリーズを披露した。

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スカイウェイブは802.11無線LAN環境で、PDAからのVoIPをデモ

 今回のデモンストレーションでは新たに着メロ機能、リングバックトーン機能を実装したほか、ノートパソコンに搭載したWindows Messangerとの間で通話を行っている。「ニーズに応じて機能追加が容易に行えることがメリット。より電話に近い形の端末の開発に向けて働きかけているが、POSなどの業務用端末への搭載も考えられる」と同社は説明している。

関連リンク
▼HATS推進会議
▼日立製作所
▼沖電気工業
▼スカイウェイブ

[高橋睦美,ITmedia]