エンタープライズ:ニュース 2002/10/04 15:59:00 更新


Case Study:Teradataでクリックストリームの分析に挑戦するウェルスファーゴ銀行

ラスベガスの「PARTNERS 2002」は、Teradata導入企業によるユーザー事例を紹介する多数のセッションが特徴だ。ATM、24時間テレフォンバンキング、スーパーストア店頭の簡易店舗、そしてインターネットバンキングと次々と新しいチャネルを打ち出してきたウェルスファーゴ銀行が、Teradataを使い、クリックストリームの分析にチャレンジしている。

 ネバダ州ラスベガスの「PARTNERS 2002」カンファレンスは、Teradata導入企業によるユーザー事例を紹介するセッションが50にも上るのが大きな特徴だ。10月3日、最終目を迎えたTeradataユーザー年次総会では、「Teradata E-Business Solution」の導入を進めるウェルスファーゴ銀行がその事例を紹介するセッションを行った。

 1848年、カリフォルニアで金が発掘された。ゴールドラッシュの始まりだ。その4年後の1852年、ウェルスファーゴ銀行は創業された。駅馬車をあしらった同行がロゴは、それが当時の主要な交通機関だったことを表している。大陸横断鉄道の完成は1869年まで待たなければならなかった。

 今年150周年を祝った老舗銀行は、古臭い駅馬車と違い、ここ四半世紀は革新的な銀行と知られている。1975年にATMを展開し、1989年には大手銀行としては初めて24時間のテレホンバンキングサービスを開始している。さらに1991年、スーパーマーケットの店頭に簡易店舗を開設、インターネットの波が押し寄せてくると見るや1995年には北米でセキュアなインターネットバンキングサービスを初めてスタートした。

 ちなみに、1984年、テラデータが最初に開発したデータベース専用のコンピュータを納入したものウェルスファーゴ銀行だった。

「1975年ごろは、銀行の窓口係と預金票と顧客との接点だったが、今や四半期ごとに新しいインタフェースが登場している」と話すのは、ウェルスファーゴ銀行でシステムを担当するゲイリー・クラス上級副社長。

「金融とは、ATMやWebという顧客との接点によって取引の全体像が把握できる。そして、それを理解することによって、脈絡のある意味ある話を顧客に対して行える」(クラス氏)

 そこで同行は、だれがどのチャネルから口座にアクセスしているのかを把握し、Webの場合は、そのクリックストリームを分析する必要に迫られた。

 だが、クリックストリームのデータ量は膨大だ。データウェアハウスを構築する前工程にあたるETL(Extract“抽出”、Transformation“変換”、およびLoad“ロード”)に負荷が掛かり、また、初期段階のWebアクセスログツールのように、単なるURLの羅列だけでは非技術系の人には意味をなさない。また、オンラインイベントデータの価値を最大限に生かすためには、顧客のプロファイルをオンラインイベントに結びつける、しかもできるだけ速く、それを行う必要がある。

 ウェルスファーゴ銀行は、NCRテラデータ部門の「Teradata E-Business Solution」を使い、概念実証(Proof of concept)を行った。

 Teradata E-Business Solutionは、Webのトランザクションによって生み出されたオペレーショナルデータとWebのログデータを付き合わせ、ETSL(Extract、Transformation、Sessionization“セッション化”、およびLoad)ツールによってデータを情報に生かせる状態、つまりデータウェアハウス化してくれる。並列で処理するため、そのスピードも桁違いに速い。

 テラデータのプロフェッショナルサービス部門で働くポール・マザック氏は、概念実証の結果をプレゼンテーションしたときのウェルスファーゴ銀行側の反応を振り返りながら、「Webのログからレポートに活用できるデータウェアハウスを構築するのに、わずか22分しかかからなかったのに、だれも驚かなかった。プレゼンテーションに単に“22”としか書かなかったため、みんな22時間と誤解した」と話す。それが常識的な数字だったのだ。

 Teradata E-Business Solutionでは、利益率の高い顧客の絞り込みといった顧客に関する分析のほか、トラフィックからWebサイトを増強する計画を立てたり、キャンペーンを打つ際に最適なデザインのWebサイトにするのを助けたり、広告の効果を測定したり、とさまざまな分析機能が用意されている。

 しばしば、オンラインショッピングでは、商品をバスケットに入れても、最後の購入ボタンを押す人の比率は低いといわれる。銀行のオンライン口座開設のプロセスでも同じことがいえるだろう。ウェルスファーゴ銀行では、どこのステップで止めてしまったかを段階ごとにアクセス数を割り出し、スクリーンのデザインの問題なのか、プライバシー不安なのか、単に子どもが泣き始めただけなのかを探るのに役立てようとしている。

 Teradata E-Business Solutionでは、レポートにはマイクロストラテジーの「MicroStrategy 7」を使っている。OLAPツールであるMicroStrategyは、直接大規模なデータウエアハウスにアクセス可能で、キューブの管理・運用が不要なことが特徴だ。ワンクリックで分析視点を変えられるなど、操作性も優れている。

 途中で止めてしまったアクセスを段階ごとにクリックすると、実際にアクセスした人が顧客なのか、そうでないのか、顧客であればそのプロファイルを知ることができるようにする。最後のボタンを押さなかった人たちには、キャンペーンを打ったり、コールセンターからアプローチすることもできるだろう。

「店に入ってくる顧客たちをビデオに撮るようなもので、非常に興味深い」とマザック氏。

 日本のヤフーでも、広告クライアント向けにその効果を測定するため、Teradata E-Business Solutionの導入を進めているという。

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▼PARTNERS 2002 レポート

[浅井英二,ITmedia]