エンタープライズ:コラム 2002/10/07 20:03:00 更新


Linux Column:Red Hat Linux 8.0に触れ、デスクトップLinux市場について考える

9月30日にRed Hat Linux 8.0がリリースされた。早速入手してインストールしてみたので、そのインプレッションをお送りしたい。ユーザビリティという点でまだまだ、というところはあるが、以前に比べるとシンプルな構成で、方向性としては個人的にはいい感じがする。

 9月30日にRed Hat Linux 8.0がリリースされた。早速入手してインストールしてみたので、そのインプレッションをお送りしたい。

 今回のリリースの最大のポイントは「Linuxのデスクトップ利用への対応強化」。これまでX Windowのデスクトップ環境としてGNOMEを推していた同社だが、ここにきて「Red Hat Bluecurve」なる独自のデスクトップ環境を押し出してきた。まだ技術的な情報があまり出てきていないので、Bluecurveが完全なスクラッチなのかどうかは分からないが、使ってみた印象としては「KDEっぽいGNOME」というところだろうか。アイコンの雰囲気がBeOSっぽくなったのは、幻のBeBoxも持ってる私としては嬉しいところだ。

 他のポイントとしてはオフィス製品スイートのOpenOffice.org 1.0.1がバンドルされたことだろう。デフォルトでパネルに登録されており、ワンクリックで使用できる。OpenOffice.org日本ユーザー会のホームページを参照して、日本語対応の設定を行っていく。ワードプロセッサWriterは言語設定が比較的きちんとしているので、日本語を出すことが出来た(設定方法自体はどうも分かりにくいが)。

 表計算のCalc、プレゼンテーションのImpressなどは言語設定自体が存在せず、デフォルト言語を日本語にすることが出来なかった。この辺りの回避方法はユーザー会のページにも記載されているが、根本的にはやはりWriterのように設定できるようにすることだろう。この辺りは今後のバージョンアップに期待したい。全体的には、日本語じゃなかったら結構使えるだろうな、という印象を受けた。日本語対応はこれからの課題、という点で、私は現時点では問題であるとは感じなかった。

 今回は設定ツール類もリニューアルされ、GUI対応のものが増えている。ただ、まだまだ設定の体系化という点で難しいところがあるのか、設定に入り込める入り口が意味も無く複数あるのはかえって分かりにくい。まずはコントロールパネルのようなところで一本化されていて、必要に応じて関連性のあるところから設定に入ってこれるようになることだろうか。この辺りの分かりやすさはWindows 2000やMac OS Xあたりがよく出来ている。Windows XPはユーザーから隠蔽化したり、やたらとウィザード化することで逆に分かりにくくなっている。その二の轍を踏まないように進化していって欲しいところで、現状では合格点は難しいだろうか。

 やはり、ユーザビリティという点でまだまだ、というところはあるが、以前に比べるとシンプルな構成で、方向性としては個人的にはいい感じがする。

 問題はこれをどう改良していくか。まずもってこのGUIを使いやすいものにしていきたいという人がどれだけいるか、という問題がある。個々の技術に興味はあっても、GUIのユーザビリティに関心がある人は少ないだろう。その辺りが現在最も成長しているのはWebデザインのジャンルだが、そのコミュニティの大多数が技術者ではなくデザイナーだ。

 また、全体的な使いやすさというのは人数をかければかけるだけよくなるというものでもない。きちんとグランドデザインを書く人がいて、フィードバックは取捨選択しながら調整していく材料に留める程度の調整が必要だろう。果たしてそのような体制で改良を進めていけるかも大きなポイントとなるだろう。

 オープンソースソフトウェアにとって、というよりもソフトウェア全体にとって、ユーザビリティの向上というのは捉えどころのない難しい課題だ。ユーザビリティには現在のところ確固としたセオリーがない(あるといえばあるかもしれないが、それはある特定のソフトウェアに依存したお作法であって、普遍的なものではない。)。使用感は非常に感覚的なもので、人それぞれで閾値(しきいち)が異なるため、絶対的な答えは出しようがない。ちょっとしたことが出来たり出来なかったりで印象がまるっきり違う。例えば今回、カット&ペーストをCTRL+x、CTRL+vで問題なく出来たことで、今までのX Windowってこの辺りの操作が苦手だったよな、という先入観は霧散した。

 書きつづけていたらキリが無いのでこの辺りにしておくが、Linuxがエンドの一般ユーザーに受け入れられるかどうか、の山がもう目の前に迫りつつある。この辺りが不思議なもので、使えそうだという観測が流れるとユーザーは評価に入り、評価の良し悪しで、場合によってはスーッと離れていってしまう。果たしてLinuxはこの市場で受け入れられるのか、その審判が下るのはそう遠くないかもしれない。

[宮原 徹,びぎねっと]