エンタープライズ:ニュース 2002/10/24 16:17:00 更新


Keynote:「ストレージ容量の増加に管理が追いついていない」

ストレージ専門の調査会社で会長を務めるフレッド・ムーア氏は、FORUM 2002の基調講演の中で、「ストレージ容量の拡大に管理能力が追いついていない」という大きな問題点を指摘した。

「データストレージの量は、今後も年率50〜70パーセントの割合で成長を続けるだろう。つまり、企業が管理しなければならないデータの量は増え続けるということだ。だがこれは成し遂げるには難しい作業だ。ストレージ管理に要するコストも同時に増加しており、データストレージ管理は大きな混乱状態にある」

 米ストレージ・テクノロジーのパット・マーチンCEOに続き、FORUM 2002のキーノートに登場したのは、ストレージ専門の調査会社、ホライズン・インフォメーション・ストラテジーの会長を務めるフレッド・ムーア氏だ。同氏は上記のように述べ、ストレージ業界が抱える問題の深刻さを指摘した。

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ムーア氏はテレビ番組を真似てITバブルの崩壊を揶揄し、場内の爆笑を誘った

 さすがに調査会社らしく、ムーア氏はふんだんに図表を示しながら、今後のストレージ業界のトレンド関する分析と考察を行った。その内容は非常に多岐に渡るが、幾つか重要なものを挙げてみよう。

  • コンピューティング・パワー、帯域、それにストレージのいずれの価格も低下しており技術的な面からの障壁はほとんどなくなりつつあるが、反対にデータの価値およびストレージ管理に要するコストは増加している。
  • ストレージ業界全体の売上は、2002年から2004年にかけて、615億2800万ドルから756億500万ドルへと拡大するが、その伸び率は以前の予測よりも低いものとなる。テープやディスクといった従来型ストレージの比率は、価格の下落もあって低下する。一方ファイバーチャネルやネットワークインフラ、IPストレージは堅調に成長し、大きな割合を占めるようになる。また、ストレージに関するスキルを持った人材が不足していることから、ソフトウェアおよびサービス関連の売上も伸びるだろう。
  • 2001年から2005年にかけて、ストレージの量は、管理者が対処できる量をはるかに上回るペースで増加する。このギャップを埋めるには、NAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)、仮想化ソフトウェアを活用し、ストレージの統合と簡素化を進める必要がある。
  • OLTPやデータウェアハウス、ファイル共有といった従来の用途に加え、今後は動画や音声といった、新しいタイプのリッチコンテンツが増加してくる。これらそれぞれについて、異なるストレージ、異なるバックアップ/リカバリ手段が必要だ。

 ムーア氏はまた、講演の中で「ストレージ業界における10の課題」を提示した。この中には「電力」というやや意外な項目から、「ファイルシステムやブロックなどのフォーマットの違い」「無停止での変更・アップグレード」「相互運用性の欠如」という技術的なもの、さらに「リカバリおよびビジネス回復のための戦略立案」といった経営的な内容も含まれている。

 だが、最初に挙げられた課題はやはり、「ストレージの成長に間に合うだけの管理機能が存在しないこと」。冒頭に示したとおり、ストレージ容量そのものは年に50〜70パーセントの成長を見せる一方で、ストレージ管理者が処理できる能力は20〜30パーセントずつしか改善されていない。

 単にハードウェアやソフトウェアを追加していくだけでは、このギャップを埋め、状況を打開することはできない。ムーア氏は、SANやNAS、IPストレージや仮想化といった新たな技術を組み入れ、集中的な管理が可能なストレージ・アーキテクチャを示し、このようにアーキテクチャそのものを変えることこそ解決策だとした。

関連リンク
▼日本ストレージ・テクノロジー
▼米ホライズン・インフォメーション・ストラテジー

[高橋睦美,ITmedia]