エンタープライズ:ニュース 2002/10/25 19:26:00 更新


Interview:「あらゆるデータを守り、ビジネスの継続を」とメジャー副社長

米ストレージテックの副社長兼ゼネラルマネジャーとして、ディスク事業を統括しているトーマス・メジャー氏に、FORUM 2002で登場した新製品について聞いた。

 米ストレージ・テクノロジー(ストレージテック)はFORUM 2002に合わせ、ディスクやテープ、ストレージ管理ソフトウェアに渡って複数の新製品を投入している。中でも目を引くのは、コストパフォーマンスを追及したブレード型ストレージ製品「BladeStore」や、ディスクベースのデータ保護アプライアンス「EcoView」だ。ストレージテックで、これらを含むディスク部門を統括しているトーマス・メジャー氏(副社長兼ゼネラルマネジャー)に、開発の背景などを聞いた。

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プレス向け説明会で「ディスクとテープは統合し、共存することができる」と述べていたメジャー氏

ZDNet BladeStoreはどういった目的の元に開発されたのでしょう?

メジャー BladeStoreは新しいタイプの、未来の製品です。企業にあるデータは、すべてが同じように生成され、保存されるわけではありません。多くの企業では、高いパフォーマンスが求められるプライマリバックアップシステムと、災害対策などを目的としたそのコピーを構築しているかと思います。前者には相応の高い投資が必要でしょうが、後者にそれほどお金を費やすわけにはいかないでしょう。BladeStoreは、こうした問題を解決する製品です。安価で高い信頼性を備えており、災害対策などに活用できます。

 また、大容量のデータをテープライブラリに直接バックアップしようとすると時間がかかりますが、サーバとライブラリの間にBladeStoreを配置することにより、この問題を解決できます。まず最初にBladeStoreにバックアップし、その後テープライブラリにコピーすることで、パフォーマンスを損なうことなくデータをコピーできます。

 われわれはさらに、新しいタイプの情報にフォーカスした新製品も開発しています。ビデオや大容量の画像、音声などのように、非常に容量は大きいけれども、必ずしも常に高いパフォーマンスは要求されないデータに適した製品で、現在6社ほどが評価を進めています。おそらく来月には発表できるでしょう。

ZDNet BladeStoreに関してですが、EMCやネットワーク・アプライアンスも同種の製品を投入しています。違いは何ですか?

メジャー 彼らの製品は接続性に制約があり、イーサネットにしか接続できません。また書き込みのための専用ソフトウェアも必要です。これに対しBladeStoreは、外側からはただのファイバーチャネル対応のディスクアレイに見えます。つまり汎用性が高く、柔軟だということです。より大規模なシステムにも対応できます。

ZDNet どういった顧客を想定していますか?

メジャー BladeStoreは最低でも4TBの容量を持つことから、おそらく大規模顧客が中心になるでしょう。それから、先ほど述べたようなリッチコンテンツを扱うところですね。

ZDNet EchoViewという新しい製品も登場しました。

メジャー これは、顧客のあらゆるデータを守ること、そして速やかなリカバリを実現すること目的としたディスクベースの製品です。しかも、顧客がその作業を意識する必要はありません。

ZDNet この2つの製品はどのような関係にあるのでしょう?

メジャー BladeStoreは、あらゆるデータを守りビジネスを継続させるという、EchoViewのビジョンの一部を成すといえるでしょう。もしプライマリバックアップに障害が起きても速やかなリカバリが可能になります。しかも管理者は複雑な作業をする必要はなく、非常にシームレスなデータ保護が実現できます。

ZDNet 話は変わりますが、多くの顧客が、ストレージ管理の複雑さに手を焼くようになっています。この問題にどう対処していきますか?

メジャー ストレージ管理には2つの側面があります。1つは、ストレージ機器そのものやネットワーク接続、リソース管理などを含む、ストレージインフラの管理です。もう1つは、データおよび情報そのものの管理です。

 インフラ管理については、さまざまな企業から、マルチベンダーの製品管理が可能なマネジメントソフトウェアが提供されています。もちろんストレージテックでも、マルチベンダーの製品を管理できるソフトウェアを提供しています。もう1つのデータ管理ですが、EchoViewやApplication Storage Managerのような製品によって、データを保護し、適切な機器に移行させることができます。

 課題はリソース管理ですが、現在、1つのソフトウェアで他のデバイスを管理できるようにするCIM(Common Information Model)という標準技術が浮上しつつあり、ストレージテックもこのCIMをサポートする方針です。これが実現されれば、あらゆるデバイスに対し、ずっと容易に制御・管理を行えるようになるでしょう。今はまだですが。

ZDNet いわゆる仮想化技術についてはどうですか? 各社が取り組んでいるものの、その定義には微妙にずれがあるようです。

メジャー 仮想化は、複数のさまざまなストレージデバイスが、サーバからは1つのストレージプールに見えるようにします。インタフェースを簡素化し、先ほど触れた管理の問題を解決する手助けとなるものです。ただし、仮想化に関する標準は存在せず、ベンダーによってその定義はさまざまですね。

 いずれにせよ仮想化によって、ユーザーは物理デバイスの複雑な部分を理解する必要はなく、簡素化されたプレゼンテーションさえ見ればいいことになります。仮想化の最終的な目標は、ユーザーから見たストレージのビューを簡素化することですが、業界全体では、取り組みはまだ始まったばかりといえるでしょう。われわれはずいぶん前から、Virtual Arrayを通じて取り組んでいますが。

ZDNet 今後ディスク業界はどのように変化すると考えていますか?

メジャー ディスクの価格は劇的に下がり、コストはさらに低下するでしょう。

ZDNet ストレージ業界全体におけるディスクの比率も低下すると言われています。事業に影響はないのでしょうか?

メジャー 確かにディスクの比率は減少するでしょうが、市場そのものの規模は拡大します。しかもストレージテックは、ディスクもテープもSANもあらゆる領域をカバーしていきますから、市場全体におけるプレゼンスは今後も成長するでしょう。

ZDNet では、ディスクとテープという2つの種類のストレージは、どう使い分けていくべきですか?

メジャー より小規模な環境、小規模なシステムであればディスクのほうがコスト効率が高く、こちらを選ぶことになるでしょう。また大規模環境ならば、テープのほうが適しています。

ZDNet 今後の課題は何ですか?

メジャー そうですね……適切な標準を見出していくことでしょう。例えばIPストレージひとつとっても、iSCSIやFCIP、InfiniBandなど複数の技術が存在しています。この中から適切なものを選択していく必要があります。

ZDNet どの技術が有力でしょうか?

メジャー あくまで個人的な意見ですが、1つは、既に存在しているファイバーチャネルです。もう1つはiSCSIですね。パフォーマンスが向上すれば魅力的な技術だと思います。



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▼日本ストレージ・テクノロジー

[聞き手:高橋睦美,ITmedia]