エンタープライズ:ニュース 2002/10/28 00:06:00 更新


Interview:「ストレージはいまだにエキサイティングな分野」と前SNIAチェア

ストレージ・ネットワーキングの普及・促進と標準化に取り組んでいる業界団体、SNIAにおいて、つい先日まで会長を務めていたブラッド・ステーマス氏にインタビューした。

 ストレージ・ネットワーキングの普及・促進と標準化に取り組んでいる業界団体、SNIA(Storage Networking Industry Association)。つい先週までその会長を務め、先ごろ後任に道を譲ったばかりのブラッド・ステーマス氏に、FORUM 2002の機会にインタビューし、これまでの歩みと業界の取り組みについて聞いた。

ZDNet 改めてSNIAの役割と目的について教えてください。

ステーマス 目的は幾つかありますが、最終的な目標は、ストレージネットワーキング製品の導入および普及を通じて、ユーザーの利益に寄与することです。この達成に向けてSNIAでは、幾つかの部門を通じて活動を行っています。例えば、ストレージネットワークをプロモートするマーケティング部門、標準仕様の策定を行う技術部門、それに調査部門や委員会などです。現在約300社が参加しており、ストレージネットワークやその管理、製品などについて、共通の場で意見を交換しています。

ZDNet FORUM 2002に続き、来週にはStorage Networking Worldが開催されます。

ステーマス ストレージ分野に関するさまざまなプレゼンテーションや製品が展示されるでしょう。広範なストレージネットワーク管理製品のほか、マルチベンダーのストレージ機器やソフトウェアがSAN(Storage Area Network)をまたいで、さまざまな設定で協調して動作する様子を見ることができます。

 またiSCSI技術やCIM(Common Information Model)技術のデモンストレーションが行われる予定です。このうちCIMは、ストレージの管理情報を標準化するもので、ストレージ管理製品にとって重要です。

ZDNet これは、ストレージ管理のまつわる複雑さという問題を解決するものでしょうか?

ステーマス 可能性はあります。多くの企業が、ストレージ管理の問題を認識しています。CIMは、インタフェースに対し共通の定義を行う、共通のソフトウェアフレームワークで、多くの企業が支持を表明していますから、チャンスはあるといえるでしょう。

 将来を予測するのは困難なことです。この取り組みもまだ始まったばかりですが、今後拡張し、ストレージ管理の問題への取り組みが進むことに期待しています。今回はSNIAの活動の一環であるStorage Management Inisiativeからも、幾つかアナウンスが行われる予定です。

ZDNet このCIM、それにBlueFinと呼ばれるものにはどんな違いがあるのでしょうか? 混乱しているのですが……。

ステーマス まずSNIAの中の委員会として、SMI(Storage Management Initiative)というイニシアティブがあります。これが定めた仕様がSMIS(SMI Specification)で、CIM技術をてこ入れするものです。同じようにCIMをベースにし、Bluefinと呼ばれていたものが、SNIAを経てSMISになったともいえます。WEBMというのは、これはまた別の技術ですね。

 CIMは、ネットワーキングの分野におけるSNMPと似た部分があります。今後CIMはカバー範囲を広げ、HBAやファイバーチャネルスイッチといったSANのデバイス、コンポーネントだけでなく、NASなどにもサポートを広めていく見込みです。

ZDNet ストレージ・ネットワーキングには相互運用性の問題も付き物です。これは改善されているのでしょうか?

ステーマス この数年で、非常に大きく改善されていますよ。SANが導入されるのは大規模な環境であった3〜5年前から比べると、インタフェースレベルでの相互運用性は相当改善されました。

 ですが最近は、多くのサーバやさまざまな種類のストレージデバイスが接続されるようになり、インタフェースレベル以上の相互運用性が求められつつあります。つまり、数年前は1つか2つのインタフェースに対応すればよかったものが、今は設定情報やドライバ、アプリケーションの情報までが求められるようになり、これまでとは異なるレベルの相互運用性、まったく別のステップが必要とされています。

 これをProved Wayで評価するため、ICTP(?)というコンフォーマンステストプログラムを展開しています。広く接続するためのベースラインです。またソリューションフォーラムでは、特定のアプリケーションも含め、ヘテロジニアスな環境でソリューションレベルの相互運用性を実現するためのドキュメントを作成しています。

ZDNet SNIAとして何らかの認定制度を設けることはないのでしょうか?

ステーマス この質問についてはノーコメントです。

ZDNet では、今後はどういった活動に力を入れていく予定ですか?

ステーマス まずは、管理などの問題も含め、昨年立ち上げたさまざまなプログラムを、きちんと完了させることです。同時に、SNIAの活動を国際的にも広げていこうと思います。既に日本にはSNIA-Jがあり、ヨーロッパにも組織がありますが、それ以外の地域にも広げていきたいです。

ZDNet これからのストレージ業界において、鍵を握るのはどんな技術でしょう?

ステーマス ……難しい質問ですね。

ZDNet では聞き方を変えます。ストレージを巡ってはいまだにいろいろな問題が存在していますが、どれから解決すべきでしょうか?

ステーマス コストパフォーマンスやスケーラビリティも引き続き重要な問題であり続けるでしょう。また、ストレージ管理コストはTCOの大きな部分を占めています。この管理コストの改善が重要になるでしょう。また、さらに高いレベルでのストレージ管理、つまりアプリケーションの仮想化と統合ストレージ管理機能がストレージ機器に求められるでしょう。

 個人的な考えですが、シリコンそのものの価格は低下しており、それに比べて管理の部分の比率が高まっています。またデータの保護に対する関心が高まっており、アーカイブの作成とすばやいリストアが重要になるのではないでしょうか?

ZDNet では最後に、日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

ステーマス SNIAでは積極的な参加、メンバーを求めており、皆さんからのフィードバックやサポートに期待しています。ストレージはいまだに、エキサイティングな分野です。



関連リンク
▼日本ストレージ・テクノロジー
▼SNIA

[聞き手:高橋睦美,ITmedia]