エンタープライズ:インタビュー 2002/11/14 10:14:00 更新


Interview:「必要なのは革命ではなく進化」とノーテルのエンタープライズ社長

4事業部門体制に移行したノーテルネットワークス。このうちエンタープライズ部門を統括するオスカー・ロドリゲス社長に、この市場への取り組みとOne Network戦略について聞いた。

 ノーテルネットワークスは先日、それまで3部門に分かれていた事業体制を改め、ワイヤレス・ネットワーク、ワイヤライン・ネットワーク、オプティカル・ネットワーク、そしてエンタープライズ・ネットワークという4事業部門体制へと変更した。同社エンタープライズ・ネットワークの社長を務めるオスカー・ロドリゲス氏によれば、この動きは、同社のエンタープライズ市場を重視する姿勢を表したものだという。

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多くの顧客と話し合ったというロドリゲス社長

ZDNet 事業を再編し、4つに分けた理由は何ですか? 財政的な問題があったのでしょうか?

ロドリゲス エンタープライズというセグメントが、ノーテルの今後において非常に重要であることを認識したからです。ノーテルはこれまで、ワイヤード、メトロ、エンタープライズという3つの部門に分かれていましたが、エンタープライズに十分フォーカスできていないということが明らかになってきました。そこでエンタープライズ市場とその顧客を真剣に考え、コミットすることを目的に事業体制を再編し、この市場に投資していくことにしたのです。

 財務状況ですが、これはあくまで相対的な話に過ぎません。ノーテルでは2003年第2四半期までに収益を出すことを目的にしており、その目標達成に向けて順調に進んでいます。アナリストがいろいろとコメントを出していますが、経営陣は市場の変化に対する対応、調整など、満足の行く仕事をしており、この目標を達成できると確信しています。

ZDNet むしろ通信事業者に強いというイメージがあるノーテルの中で、エンタープライズ事業が占める割合はどのくらいですか? また、今後どのように成長すると見込んでいますか?

ロドリゲス 前四半期において、ノーテルのビジネス全体のうち、エンタープライズ市場が25パーセントを占めました。ここから、ノーテルにとってのエンタープライズの重要性がお分かりいただけるかと思います。今後については、憶測でものを言いたくはありません。ただ、これからもこの比率は増えるでしょう。われわれは引き続き、エンタープライズビジネスにフォーカスし、投資していきます。

ZDNet それでは、キャリア向けビジネスはどうなってしまうのでしょうか?

ロドリゲス エンタープライズ向けのビジネスも、キャリア向けビジネスも、どちらも戦略的に非常に重要です。エンタープライズ市場を理解することによって、企業に直接、適切なサービスを提供するだけでなく、企業顧客を抱えるキャリアにも、よりよいサービスを提供することができると考えています。

ZDNet しかしながらエンタープライズ市場には、シスコシステムズをはじめとする強力なライバルがいます。

ロドリゲス われわれはシスコよりも前から、企業向け電話システムを手がけてきました。また、かつてノーテルが買収したベイネットワークスは、データネットワークを提供していたシスコと同世代の企業です。つまりわれわれには、テレフォニーのみならずデータの分野においても経験があるわけで、これが強みになります。

 ノーテルでは本当の価値を顧客に提供していきます。それが、1つに統合され、しかも運用コストの低いネットワーク――すなわち「One Network」戦略です。

 企業がOne Network化に向けて統合を進めていく際に、選択肢を与えられることも、われわれの強みです。エンタープライズでは往々にして、すべてを同じ機器、同じ構成にするというわけにはいきません。既存の投資、既存のシステムをきちんと活用していく必要があります。TDMなどの古いシステムと、セキュリティやテレフォニー、マルチメディアといったシステムの両方を活用し、それぞれの機能を高めていかなければなりません。One Networkという目的は同じでも、そこにはさまざまな選択肢がなければならず、それを提供していくことが重要なのです。

ZDNet かつてのITバブル時代とは違うということですね。

ロドリゲス 競合企業が掲げるオールIP戦略では、すべてを新たに導入する必要があります。すばらしい機能を実現するでしょうが、コストはどうしても高くなります。ですが、大規模な投資において間違いがあってはならないのです。

 これに対しノーテルでは、One Networkという進化的、段階的なアプローチを取っています。既存のシステムを活用しながら、ビジネスニーズに応じて進化の道筋を提供するもので、企業はこれをすばやく進めても、あるいはゆっくり取り組んでもかまいません。何を導入し、何を導入しないか、それをいつ行うかは、顧客が決めることができます。その1つの例が、コールセンター向けソリューションです。

ZDNet このOne Networkというものを、もう少し説明してもらえませんか?

ロドリゲス ばらばらだったシステムを融合し、1つのネットワークとしながら、それぞれの優れたところを伸ばしつつ、欠けていたところを補うということです。例えば電話には柔軟性を、またデータネットワークにはセキュリティや堅牢さを加えるといった具合です。

 データネットワークだけでなく、その上で、生産性を向上させるためのアプリケーションも動作しなければなりません。そのアプリケーションに応じて、QoSなどによる調整のほか、フェイルオーバーや信頼性といった要素が求められます。ノーテルでは、既存のテレフォニーシステムから、セキュリティやQoS、冗長性を備えたIPネットワークへの移行パスを提供していきます。

ZDNet 具体的にはどんな製品で実現するのですか?

ロドリゲス ContivityやAlteon Switched Firewall System以外にも「Succession Communication Server for Enterprise (CSE) 1000 Relase 2.0(Succession CSE1000)」や「CallPilot Release 2.0」が挙げられます。これらは、既存のTDMやアナログ網との相互接続性を保ちながら、音声や電子メール、インスタントメッセ―ンジャーなどを統合したユニファイドメッセージングを実現するものです。NECやアバイアなど、ノーテル以外のベンダーの製品もサポートします。

 別の製品としては、「BayStack 460-24T-PWR Power over Ethernet Switch」があります。QoSやフェイルオーバーといった機能に加え、IEEE802.3afで仕様策定が進んでいるインラインパワーをサポートするものです。スイッチとIP Phoneを1本のイーサネットでつなぐだけで、電源を供給できます。

 こうしたものすべてによって、統合されたネットワーク――One Networkを実現していけると確信しています。

ZDNet ネットワークの統合という目標の他にも、取り組むべき課題は残っているはずです。たとえば、管理の煩雑さはどう解決しますか?

ロドリゲス 管理を簡素化するという意味では、Contivityが好例になるでしょう。この製品はVPNゲートウェイであり、IPルータであり、ファイアウォールでもあります。一連の機能を別々に実現しようとすれば、ネットワーク構成はとても複雑なものになってしまいますが、これらを1つのきょう体にまとめることによって、個別に管理を行う必要はなくなります。しかも、3つの機能に対し、1つの共通のポリシーを適用することができるのです。

 われわれは、顧客のビジネスを前進させる手助けをしていきたいと考えています。そのために必要なのは、革命ではなく進化であり、そこにおいては選択肢が提供されねばなりません。ノーテルは、未来の統合されたネットワークに向けて顧客が進化的な道筋をたどり、生産性を最大化できるよう支援していきます。

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▼ノーテルネットワークス

[聞き手:高橋睦美,ITmedia]