エンタープライズ:インタビュー 2002/11/19 20:00:00 更新


Interview:「Kylix3のC++対応で加速するか - Linuxアプリケーションの今後を語る」

ボーランドの「Borland Developer Network」サイトは、今回インタビューを行ったDavid I氏が迎えてくれるデベロッパーコミュニティだ(関連リンク後述)。同社アプリケーションユーザーへの幅広い情報提供が行われており、すでにKylix3についての資料も多い

 「Borland Conference 2002 Tokyo」(BorCon)で来日する同社のデベロッパーリレーションズ ヴァイス プレジデントDavid Intersimone "David I"氏(写真右)、シニアデベロップメントリレーションズマネージャーJohn Kaster氏(写真左)の両氏にインタビューを行った。テーマは、同社のLinuxデスクトップへの取り組み、さらに今後の容易なLinuxアプリケーション開発への可能性である。

 両氏からは、Kylix3の持つ優位性を始め、昨今のLinuxデスクトップ推進に欠けていたもの、ボーランドが働きかけるオープンソースコミュニティへの関わりなどが語られた。

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ZDNet 他のベンダーからも発表されるLinuxデスクトップ構想について、ボーランドとしての考え方をお教えください。

David I これまで、サーバ用途を除きオフィスでのLinux利用という面は欠如していました。その理由として、開発者が希望する容易な開発環境が無かったため、アプリケーション開発にはWindowsのような容易さが無かったためだと考えます。すでにKylix2でもObject Pascalの開発環境を提供してきましたが、Kylix3では、C++言語がサポートされたことで、今まで以上により多くのアプリケーションがLinux上で動くようになります。

 さらに、Kylix3ではCLXという仕組みが取り入れられています。このライブラリを利用することであらゆる、インターフェイスが実現可能です。もちろんWindowsのAPIやDirectXなど依存するものは制限となりますが、Linux上でのOpenGLに置き換えるといった現実的な互換性も用意されています。C++対応によって、今まで以上により強力なプラットフォームの橋渡しになると考えています。

ZDNet Linuxデスクトップが今ひとつ日の目を見なかったのはなぜだと思いますか。

David I なんといってもビジネスシーンでのアプリケーションが充実していない点だと考えています。Linuxでは、従来からGTK+やQtなどGUIライブラリが用意されていますが、敷居が高くWindows環境のように容易な開発が実現されていませんでした。このような環境が影響していると思われます。

ZDNet Kylixを通してオープンソースへの働きかけをしていることがあれば教えてください。

John KylixはOpen Editionという形式でライブラリこそは別なものの、開発環境を配布しています。リリースされたばかりのバージョン3の統計はいまここでは分かりませんが、バージョン2では数十万件のダウンロードを記録しています。

 また、Kylixを通してボーランドは、2、3のオープンソースプロジェクトに参加してきました。まず最初に挙げられるのが、Loki Gamesのプロジェクトです。インストーラがKylixで開発されており、Web上に資料があります(http://info.borland.com/devsupport/kylix/downloads/)。

 さらに、Mozillaのレンダリングエンジンに関わるラッパーへの取り組みも挙げられます。こちらも、Webサイト上に資料が掲載されているので、興味のある方はご覧ください。

ZDNet C++対応は、Kylixユーザー待望のバージョンアップだったと思います。CLX以外に今回のバージョンで実現されているトピック、そして日本の開発者へ向けてのメッセージをください。

David I Kylix3では、バージョン2に比べIDEの改善、安定性、スピードアップが実現されています。さらにドキュメントの充実も挙げられます。開発者をサポートする環境は、Kylix2でさまざまな点を培ってきました。

 Linux上で開発をされている方々には、楽しみながら作ってほしいです。特にLinux上とは限りませんが、生産性、コスト面、そしてSQLといったデータベース連携面、Webサービス開発までを考慮すると、従来までの開発手法では困難な面が多いのが事実です。

関連リンク
▼Borland Developer Network

[ITmedia]