エンタープライズ:ニュース 2003/01/21 22:11:00 更新


データ統合で巻き返しを図るサイベース

サイベースは「Information Liquidity」をキーワードに、企業のデータを異種混合システム間で統合していくことで、巻き返しを図っている。

 かつて、「サイベースと言えばデータベース」であったが、OracleやSQL Server、IBMのDB2 UDBなどの勢いにこの数年は押され気味だ。同社は、データベースで培った技術力をベースに、ビジネスモデルを徐々に転換しようとしている。キーワードは「Information Liquidity」。「情報の流動性」が意図するのは、データフォーマットやプラットフォーム、データベース、アプリケーションの違いなど、企業に存在する異種混合のシステム間で、データを比較的簡単に連携させること。サイベースはEAI(Enterprise Application Integration)で巻き返しを狙っているのだ。

 1月21日、同社はInformation Liquidityによるビジネス展開を説明するプレスブリーフィングを行った。

 マーケティング部長を務める田中克哉氏は、Information Liquidityについて、銀行ATMを例に挙げる。貸し金庫に情報を置いていては情報を使うことができないが、ATMならば簡単に、いつでもどこでも引き出すことができるというわけだ。

 同氏は、多くの企業がITインフラとソフトウェアに多額の投資をし、両者を統合させようとしているが、3つの視点から問題点があるとする。それは、部門間で情報を共有できないという「フロー」、必要なときにデータにアクセスできない「スピード」、データ形式が違ったり、週次のデータがほしいのに月次データしかないといった「質」という3点。

 同社は、データの流れのスムーズさとして、「Information Liquidity度」を評価するツールを、米フォーブス・ドットコムと協力して2002年11月からWebサイトに公開している。ここでは、業種や事業展開している国の数、ネットワークを通じでデータの同期を取る機会の頻度など、16の項目に答えることで、回答者のシステムを大雑把ながら無償で診断してくれる。ただし、現状で日本語化はされていない。

注文回答は5日から30秒へ

 この日は、同社が手掛けたInformation Liquidityの導入事例として、航空機部品サプライヤー大手の米アビオールのシステム改革も紹介されている。

 アビオールは、販売サイクルを改善するために、BroadvisionやSiebel、Lawsonなどで構成しているシステムを統合し、顧客がセルフサービスで注文できるアプリケーションを構築する必要があった。

 同社はこれを実現するために、サイベースのe-Biz Integrator and Adapters for Siebel、e-Biz Integrator and Adapters for Lawsonを導入した。これにより、既存のアプリケーションやデータ構造に大きな変更を加えずにシステムを統合することができたという。

 具体的には、顧客の注文に対する応答時間が、それまでの5日間から大幅に改善して30秒になった。また、Webによる完全なセルフサービスに移行したことにより、注文が65%増加した一方で、年間で140万ドルのコスト削減を実現した。6ドル22セントかかっていた1件当たりの注文処理コストは、39セントにまで減少したという。

どの切り口でも統合する

 同社が進めるInformation Liquidityは、データ統合、アプリケーション統合、業界別プロセス統合、Anywhere Integration、開発と監視、モデル&プロセス設計といった切り口で分けられており、それぞれに製品がラインアップされている。

 業界プロセス統合の切り口では、「PATRIOT compliance Solution」が紹介された。これは、2001年9月の米国テロを契機に米連邦議会で議決されたパトリオット法(愛国者法)に対応するもの。パトリオット法は、疑わしい口座同士の資金のやり取りをFBIが自動監視することで、テロ組織への資金移動やマネーロンダリングを防止しようということが主旨となる法律だ。この法律によって、米国らしさの象徴でもある自由やプライバシーが脅かされるとして、波紋を呼んだのも記憶に新しい。

 しかし、実際に大きな影響が出たのは、銀行などのシステム側の対応だ。「怪しい人物」を特定するためには、顧客の過去の取引履歴や所得、住所などさまざまなデータやアプリケーションを統合しなくてはならないからだ。そして、これは法律であるため、情報の提出は義務になる。PATRIOT compliance Solutionはこのニーズに対応するものとなっている。

関連リンク
▼サイベース
▼米アビオール

[怒賀新也,ITmedia]