エンタープライズ:ニュース | 2003/01/24 20:59:00 更新 |
RISCチップはLinuxPDAを目指す
2002年、シャープがLinux採用PDAを発売した。米国で先行して発表され、前回のLinuxWorldでは、開発者向けの即売も行われて、それを買う長い行列もできていた。今回も、リファレンスデザインながらLinuxを採用したPDAが2機種発表になった。
2002年の話題の1つに、シャープが発表したLinux採用PDAがあった。このPDAは米国で先行して発表され、前回のLinuxWorldでは、開発者向けバージョンの即売も行われて、長い行列もできていた。また、合併前のHPが、Linuxカーネルと独自開発のJavaを使ったPDAの試作機を公開。雰囲気としてはLinuxでPDAというものがあった。
今回のLinuxWorld New York 2003でも、PowerPCプロセッサとMIPSプロセッサを使った、Linux採用PDAが発表された。しかし、どちらもリファレンスデザインであり、メーカーに基本設計やソフトウェアをまとめて提供するというもの。つまり、設計はできているものの、誰が作って売るのかはまったく未定というものなのである。
PowerPC(PowerPC 405LP)は、もちろんIBMのプロセッサであり、モンタビスタの組み込み向けLinuxディストリビューションと、トロルテックの「Qtopia」(QtというGUIライブラリとその上のPDA用アプリケーションなどからなるもの)を組み合わせたもの。
IBMのPowerPC 405LPを使ったLinux採用PDAリファレンスデザインマシン
もう1つはAMDが昨年買収したアルケミーのMIPS系プロセッサとQtopia、それに※メトロワークスのLinuxの組合せだ。
※メトロワークスは2002年12月に、組み込みLinuxディストリビューションを持つエンベディックス(旧リネオ)を買収した。どちらもQtopiaを採用しているために、画面などはまったく同じだし、提供されるMedia PlayerやWebブラウザ(Operaが使われていた)も同じ。さらにいえば、現在シャープが販売しているSL-C700などともGUIの見た目はまったく同じなのである。
AMD/メトロワークスのLinux採用PDAのリファレンスデザインマシン
IBMやAMDなどのプロセッサメーカーにすれば、どこかがリファレンスデザインを買って、PDAを売り出してくれることで販売増を期待してのことで、彼らから見れば販売促進用のツールともいえる。逆にモンタビスタやメトロワークスにしてみれば、自社Linuxディストリビューションの販売先というわけだ。
ただ、PDAは成長しているとはいえ、以前のような勢いもなく、パソコンのように市場が大きいわけでもない。その中で、先行するシャープや、同じデザインを買う他社と競合することを前提にPDAビジネスに参入する「強者」がいるかどうか? 昨年末にデルがPocketPCでPDAビジネスに参入したことで、PDA市場が完全に立ち上がったと見る向きもあるが(デルは、自社では市場開拓を行わず、立ち上がった市場に低価格で参入するビジネススタイルで有名)。
また、パームコンピューティングが低価格PDAを発売したことを受け、市場は入門用の低価格機と高機能なハイエンド機に分離している状態。その中で低価格を実現するには、開発費を抑えられるリファレンスデザインの採用は理にかなっているのだが、問題は誰がそれをやるのかという点である。
もっとも、可能性としては、さらに台湾メーカーなどがこのリファレンスデザインを採用し、どこかのメーカーがこれをOEMで販売という可能性もなくはない。景気がよければ、成功したPalmやソニーのCLIEを見て、参入するメーカーもあるだろうが。
実はIBMは、シャープと提携しており、PowerPC SLシリーズを、IBMが顧客に提供するシステムの一部に利用できるようにする予定。従来PalmのOEM供給を受けてきたが、平行して行っていた一般向け販売は思わしくなく、撤退したばかり。自社でこんなものが作れるのなら、シャープと提携しないで自社ブランドで作ればいいのにとは思うが、大企業ならではの「右手のやっていることを左手が知らない」の良い例なのかもしれない。
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関連リンク
IBM
AMD
LinuxWorld New York 2003レポート
[塩田紳二,ITmedia]