エンタープライズ:ニュース 2003/01/30 21:38:00 更新


戦略に合わせて商品名を変えるSAP

SAPは、製品名やマーケティング戦略名から「.com」をはじめとするインターネット用語を取り外した。同社が、時流に合わせて自社の製品名を変えるのは、これが初めてではない。

 SAPは、製品名やマーケティング戦略から「.com」「e-」の文字を排除することで、ドットコム不況の悪いイメージを払拭しようとしている。

 SAPの幹部は1月28日、同社が正式に、ビジネス管理アプリケーションのパッケージ名「MySAP.com」を、「mySAP Business Suite」に変更したことを発表した。ドイツのウォールドーフを本拠地に置くSAPは、自社のスローガンも、“The best-run e-businesses run SAP”(お客様の“e-ビジネス”を無限大に推し拡げます)から“The best-run businesses run SAP”(お客様のビジネスを無限大に推し拡げます)へと変更している。

 SAPの広報を担当するビル・ウォール氏によると、同社は“suite”という言葉を使って、mySAP Business Suiteの特徴の1つである自社アプリケーション間での互換性を強調したいとも考えている。さらに同氏は、“e-ビジネス”という言葉は少し余計だ、とも話している。

「今の時代、e-ビジネスでなければ、ビジネスじゃない」(ウォール氏)

 エンタープライズ・アプリケーションズ・コンサルティングのアナリスト、ジョシュア・グリ−ンバウム氏は、この動きに拍手を送る。

「そろそろ、“.com”という言葉を使うのはやめる時期だ。私は、“.com”はもはや、名声や幸運への切符ではないと思うし、“.com”は実際、ほかの何よりも重荷になっている」(グリーンバウム氏)。

 SAPが“.com”という言葉を自社ブランドから取り外した最初の企業ではないことは、確かだ。ニューエコノミーの崩壊以降、数え切れないほどの企業が、この流行語をはじめとするインターネット用語の使用をとり止めている。しかし、SAPはこの数年間、一見すると、より愉快でフレンドリーなイメージを見せるためとも取れる試みを続け、アメリカ式のブランド名と企業ロゴを採用しては捨てることを繰り返してきた。このような新ブランドに対するさまざまな試みは、複雑なビジネステクノロジのマーケティング手法がどれほど困難なものかを示している。

 結局のところ同社は、"Systeme, Anwendungen, Produkte in der Datenverarbeitung"(“システム、アプリケーション、データ処理製品”の意味のドイツ語 )の省略語を名前に戴く会社なのだ。同社の主力製品「R/3」は、ERP(enterprise resource planning)ソフトウェア市場で、熾烈な競争を繰り広げている。製品名をはじめとするビジネス戦略のすべてを、気持ちのいいものに見せるのは、最も経験のあるマーケティングリーダーにとってさえ、挑戦なのだ。

 SAPはドットコム景気に沸く1999年、mySAP.comを発売した。しかし、この商品名は当初、インターネット戦略と製品パッケージを表す言葉として交互に用いられたため、顧客の混乱を招いた、とグリーンバウム氏は言う。

 人知れずSAPが捨て去った名前に、「EnjoySAP」がある。これは、SAPが1998年に、ユーザーインタフェースをより直感的で魅力あるものにしようと発表した試みだが、不思議なことに、コカコーラのスローガンを彷彿とさせる。ウォール氏によれば、この名前は過去のものだが、その精神はいまだに生きている。

 グリーンバウム氏はこの名前について、「あれが、最もすばらしいSAPの見せ場というわけではなかった」と言う。

 ほかにも奇をてらう戦略があった。それは、「mySAP.com」の文字を着色した、マルチカラーのロゴだ。

 問題は、「mySAP.com」から“my”という文字を取る時期でもあるのではないかということだ。この“my”は、同社のアプリケーションが、Yahooのインターネットポータルを自分の好みにカスタマイズするのとほとんど同じ方法で、カスタマイズできるということを表現したものなのだ。

「もうちょっと待ってほしい。“mySAP”という名前には、強力なブランド力があると思っている。われわれはまだ、これを変える時期だとは思っていない」(ウォール氏)

原文へのリンク

[Alorie Gilbert,ITmedia]