エンタープライズ:コラム 2003/02/19 21:13:00 更新


Linux Column:活発化する自治体におけるオープンソース導入活動

現状の日本にでは国の借金を減らすとともに、国の経済活動を活性化させるためのインフラ再構築が急務の課題になっている。この相反する要求を満たす方策としてオープンソースを活用すべきだという提言は、今年に入ってさまざまな場所で数多く試されてきた。

 昨年シンポジウムに参加した北海道伊達市で自治体へのオープンソースの導入に尽力されている同士の広田市議より、14日に「オープンソース導入のための調査研究制度の創設を求める意見書」が同市議会で採択されたとのご連絡をいただいた。

 オープンソースの有用性は色々と言われているものの、客観的に見れば、残念ながらそれらは全てオープンソース推進派の述べている希望的観測に基づいたものでしかなく、反対派および大多数の中立派に対するオープンソース導入への説得力を持ちえていなかったのが冷静な評価だろう。

 一方、現状の日本においては1にも2にも国の借金や支出を減らすとともに、国の経済活動を活性化させるためのインフラ再構築は急務の課題だ。これらの相反する要求を満たす方策としてオープンソースを活用すべきだという提言は、今年に入ってさまざまな場所で数多く試されてきた。

 しかし、実際の活用主体となるべき地方自治体が、地方自治法に基づく意見書を政府に提出するという突っ込んだアクションを取った点については非常に高く評価できる。すでにオープンソース導入を検討している地方自治体は数多くあるだけに、同様の意見書が多数提出されるようになれば、流れは大きくオープンソース導入に流れる可能性が高い。また、多くの地場で活躍されているシステム開発会社が活躍する場を創出できるのではないか。

※以下はあくまでも私がこれまで見聞きしてきたサンプリングより抽出した私見であって、もちろんそうでもない場合もある。逆に「そうではない。ガンガンオープンソースでやっているぞ」という、元気な声は是非聞かせてもらえれば、本コラムでドンドン取り上げさせていただきたい。

 地方に行けば行くほど、大手ベンダーの地方支社・子会社はサポートリスクを回避するために、顧客に要求された場合でもオープンソースによるソリューション提供を避ける傾向があるようだ。これは情報の中央集権化が進んでいるクローズドソースソフトウェアを利用している限りは止むを得ないだろう。この方式のメリットは、人的依存性を排除することで全国均一のソリューション提供が行える点にある。反面、コストが高くなる、個別具体的なケースに対応しきれない場合があるのが難点だろう。

 一方で、腕に覚えがあって独立して仕事をしているエンジニアほど、コスト削減とシステム品質を向上させるためにオープンソースソフトウェアを活用している。オープンソースソフトウェアはまだまだ情報が偏在化しており、提供されるソリューション品質の人的依存度は高いので、どこでもオープンソースでソリューションを提供できるとは限らない。

※何度も言うが、そうではない場合もある。

 このような問題点を解決するためにも、両者のいい点を取り入れた新しい仕組みを取り入れていかなければならない。つまり、地方でのオープンソースに対するニーズを高めるとともに、情報の偏在化を是正し、だれでもオープンソースによるソリューションを提供できるようにしていくことである。この「だれでも」という点がオープンソースでのメリットの一つであるはずだが、まだまだ利用・活用の点ではそれが達成できていないのが実情だ。地方自治体でのオープンソースソリューションの導入が、このような状況を改善する糸口になることを期待したい。

[宮原 徹,びぎねっと]