エンタープライズ:ニュース 2003/02/19 22:12:00 更新


真のプラグ・アンド・プレイを――IIJが統合運用管理システムを実現

インターネットイニシアティブは2月19日、ルータの初期設定や変更といった作業を一元化し、フィールドサポートの部分を可能な限り自動化する新たなシステム、「IIJ SMF(SEIL Management Framework)」を発表した。

「人手による管理を限りなくゼロに近づけたい」――インターネットイニシアティブ(IIJ)は2月19日、ネットワークの構築や運用管理に要するコストのうち、最も大きな部分を占めるといわれるフィールドサポートの部分を可能な限り自動化する新たなシステム、「IIJ SMF(SEIL Management Framework)」を発表した。

 IIJ SMFを利用すれば、同社のルータ「SEIL」シリーズの電源を入れ、回線(実際にはメディアコンバータから伸びるイーサネット)に接続するだけで、必要な初期設定や変更、サービスの追加などを行うことができる。これら設定は、ネットワーク管理者があらかじめ登録しておいた情報に基づいてなされるため、拠点側ではまさに「プラグ・アンド・プレイ」感覚で運用できるという。

 同システムを成り立たせているのは、主に3つのコンポーネントだ。すなわち、SEIL本体と、IIJ側によって運用され、初期セットアップ用情報を提供する中央管理サーバ「iSUP(Initial SEIL Upgrade Protocol)サーバ」、立ち上がり後の設定変更やサービス追加などを制御する「nSUPサーバ」である。nSUPサーバは、企業ネットワーク管理者が自ら運用してもいいし、IIJがライセンス販売先として想定するシステムインテグレータやネットワーク事業者が、マネージドサービスの基盤として運用してもいい。

 SEILシリーズは、フラッシュメモリ上にシリアル番号と認証に必要となる鍵情報などが書き込まれた状態で出荷される。各拠点に配置され、ネットワークに接続されたSEILは、このシリアル番号などを元にiSUPサーバおよびnSUPサーバと連携することで、IPアドレスやフィルタリング設定といった基本的な設定を自ら行う。これら設定情報は、HTTPSおよびSSHをベースとした独自プロトコルを通じてやり取りされる。このため、設定情報のセキュリティも保たれるという。

 その後も引き続き、SEILには、nSUPサーバに登録された設定情報や変更が反映される仕組みだ。ここでは、ファイアウォールやVPN、QoSや各種フィルタリングといった各種サービスの追加・変更やSEILファームウェアのアップデートが行える。タスクのスケジューリングも可能だ。つまり、一時期「プロビジョニング」などといった言葉で表現された、サービスの柔軟な追加・変更――オンデマンドでのネットワークからの機能切り出し――を実現する。

 一連の設定登録作業は、IIJ SMF用のAPIを通じて行うが、インタフェースは顧客のニーズに応じてカスタマイズできる。WebブラウザベースのGUI形式にしてもいいし、既存のSNMPベースのネットワーク管理ツールに組み込む形にしてもいい。

 かつては、機器にトラブルが生じた場合、スキルを持った技術者の手配・調整だけでも手間を要していた。これに対しIIJでは、こうした仕組みを作り上げることで、分散した拠点にあるルータの一元管理を実現。エンジニア以外の人物でも容易に、機器立ち上げやトラブル時の交換といった作業を行えるようにする。時間の節約につながると同時に、大きなコストがかかっていたオンサイトでの作業やサポートを極力省くことで、従来の10分の1程度にまでコストを削減できるという。拠点の数が増えれば増えるほど、このメリットは大きくなるだろう。

 サービスプロバイダーや通信事業者によるサービスは、かつての「接続」だけを提供するサービスから、オプションサービスや機器のレンタル、保守・運用管理などをひとまとめに提供するパッケージ型サービスへと移行しつつある。並行して、機器の生死や稼働状況などを監視し、運用を代行するマネージドサービスも登場してきた。IIJ SMFは、さらにこれらの一歩先を行くサービスだと同社は表現している。

 同社では6月より、IIJ SMFの直接サービスおよびライセンス販売を開始する予定だ。具体的な料金は、個別見積もりとなる。また当面は、フレッツ・ADSLやBフレッツを利用したインターネット接続サービスのみが対象となり、レイヤ2ベースの広域LANサービスなどへの展開は秋以降になる見込みだ。

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[高橋睦美,ITmedia]