エンタープライズ:ニュース 2003/02/27 20:27:00 更新


TECH DAYS、サンとLinuxの関わりは相乗効果とエッジコンピューティングにある

2002年のSUN LX50とSUN Linuxの登場は、サンがSolarisをどのように展開していくかが問われる発表であった。Tech Days2日目のセッションでは、サンにおけるSolarisとLinuxの関わりについてが語られた

 「Sun Super Tech Days」2日目のセッションでは、「開発者のためのSolaris9オペレーティング環境とLinuxプラットフォーム」と題され、サンとLinuxやオープンコミュニティとの関わり、Solaris on x86の展開、「Project Madhatter」についてが語られた。講演されたのは、Java/Jiniテクノロジー・エバンジェリストのサング・シン氏。

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システムカンパニーとしてのSolarisとLinux展開を語るシン氏


 シン氏は、まず最初に「UNIXは、サンにとってよい関係だと考えている。オープンスタンダードグループに参加することで相乗効果がある」と語る。標準化への参加はもちろん、LinuxソースコードをUltraSPARCに乗せる試みも進行中だ。

 サンは、オープンコミュニティとの関わりも密接だという。OpenOffice.orgへのソースコード提供を始め、GNOME、Mozilla、Apache、Crimsonとの関わり、そしてBatikにもソースコード提供されるなど、実に幅広い。

エッジコンピューティングとLinux

 サンがなぜLinuxを採用したのか? という点については、「エッジコンピューティングにおける展開が大きく関わっている」とコメントする。サンは一貫したシステムカンパニーとしての信念が持たれており、LinuxによるエッジコンピューティングがSPARCプラットフォームではカバーしづらい層にもアピールできるものと判断された。

 エッジコンピューティングは、よりエンドユーザーに近い領域で展開されるものだ。さらに複数の異なったエッジが展開されるアプリケーションレイヤーは重要であり、OS上だけでソフトを作るようなことがあってはならない。アプリケーション層に注力しなければならないという。だからこそ、Javaのような開発手段が重要視されるわけだ。

 シン氏はSun Super Tech Daysのために来日し、おもしろい経験をしたという。その体験とは「今朝、Googleにアクセスしてみると、日本語で表示されたこと。このように、エンドユーザーに近い利便性を重視する展開はとてもよいものだ」という。何気ない点ながら、エッジでの展開は、このような細部に渡るカスタマイズから成り立っている。

エッジコンピューティングプロダクトのSun LX50

 サンのプロダクトでは、「Sun LX50」がエッジ製品として位置づけられる。Linuxだけではなく、Solaris搭載モデルにおいても意識されているわけだ。なぜ、特にLinuxをエッジ向けに? という疑問に対しては、エッジサーバとしてまず最初に安価であること、そしてカスタマイズしやすいことが理由だという。さらに、カーネルを最適化するといった追求も多い用途のため、オープンソースであることが大きなポイントとなるわけだ。

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1Uラックマントサーバ「Sun LX50」


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内部には汎用パーツが利用されている


 LinuxをJ2EEのディプロイメントプラットフォームとして考えた際には、いちばんに経済性、セキュリティ対策も実現されている点、パフォーマンスにも優れる点が優位性となる。デメリットは? と考えると、隠れたコストにあるという。Linuxのサポートコストは問題視されており、Solarisと対比すればスケーラビリティでも問題視されることがある。

Solarisはデータセンター、Linuxはエッジ

 サンでは、SolarisとLinuxに明確な差別化が定義されている。Solarisではバーティカル&ホリゾンタルなスケーラビリティを実現するのに対し、Linuxではホリゾンタルスケーラビリティ。Solarisでは信頼性と安定性、対するLinuxでは前述するようにカスタマイズのしやすさ。

 アプリケーション面では、Solarisがシングルバイナリコンパチがメリットであるのに対し、Linuxはオープンソースベースであるなど、これらの特性を見極めることでニーズに合ったシステムが提供できるという。

 そして、Linuxにはエッジソリューションがベースにあることは確かであり、Javaを利用しているのであれば開発面で両者に差はないのだ、と強調する。

 Solarisプラットフォームは、安定性の面でも支持されている。サンでは、つねに前のバージョンを見ながら開発が行われており、2003年2月現在でもSolaris10、11にたずさわっている開発者がいるのだという。開発モデルとしてバージョン間のコンパチが重要視されている。

 サンでは、SolarisとLinuxの互換性にも注目を寄せている。SolarisをLinuxのように見せる試みも具体化の一歩手前だ。SolarisのCDEをGNOMEに変更することで、デスクトップではシームレスとなる。将来はいっそう似通ったものになっていくという。これは、Project Madhatterに通じるものだ。

 それぞれのプラットフォームで展開される「Sun ONE」アーキテクチャは、統合化されたシステムであることにメリットがある。すでにコンポーネントとして提供しているものを置き換えることも可能。サードパーティのプラグインも可能という点に大きなメリットが見いだせるという。もちろん、J2EEであることにも所以する。

Project MadhatterによるTCO、60〜70%の削減

 Linuxは、エッジ以外にもTCO削減に一躍買うものとしてターゲットされる。実に70〜80%のTCOがシステムのアップグレードやメンテに費やされている統計がある。PCをメンテするだけでも、これほどのコストが費やされているのは驚くべきことだとコメントする。

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管理コストを劇的に削減するMadhatterプロジェクト


 そこでオープンソースを基に展開するのが「Project Madhatter」。2003年度には製品化され、エンタープライズカスタマ向けで提供されるものだ。また、Solarisとの統合デスクトップをリリースするという意味も込められている。これにより、60〜70%のコスト効果が見込まれており、一元管理、ID管理、MSフォーマット対応などが企業での利用にマッチするはずだという。

 最後にシン氏は、「サンは、UNIX市場でLinuxを成長させようと考えているのだ」とコメントされた。

[木田佳克,ITmedia]