エンタープライズ:ニュース 2003/03/03 23:04:00 更新


「Office 11」が国内初お目見え、発売は7−9月期

3月3日、マイクロソフトは東京都内でプレスおよび企業のライセンスユーザーを対象に「Information Worker Day 2003」を開催した。同社が新しく提唱する考え方である「インフォメーションワーカー」への取り組みと、夏以降に発売が予定されているOfficeの新バージョンを紹介した。新Officeは、国内では初公開となる。

 「インフォメーションワーカーとは、情報を使って仕事をする人のことである」。マイクロソフト代表取締役社長の阿多親市氏ははじめにこう切り出した。従来からの言葉である「ナレッジワーカー」の範囲を広げて、オフィスにとどまらずあらゆる場所や手段で情報技術(IT)にアクセスして仕事をする、すべての人々を含むもの、それがマイクロソフトの定義するインフォメーションワーカーである。そして、インフォメーションワーカーによって全体の生産性を上げるべくなされるもの、それがインフォメーションワークである。

阿多親市氏

「テクノロジーの進歩が人、プロセス、データの有機的結合を可能にした。それをインフォメーションワークと呼ぶ」と阿多社長


 インフォメーションワークは、アクセス・文書作成・理解と吸収・コミュニケーション・コラボレーション・意思決定という6つのベクトルで表される。

インフォメーションワーク

インフォメーションワークで実現される6つのベクトル


 阿多氏は、これを実現するためのマイクロソフトの努力としてTrustworthy Computingをはじめ、いくつかの取り組みを紹介した。その中でも、インフォメーションワークを支えるツールとして提供するのが、今夏以降に発売予定のOffice次期バージョン「Office 11」であるとし、その概要を国内で初めて披露した(「Office 11」はコードネームであり、正式名称は未定と説明された)。

 続いて製品マーケティング本部 オフィス製品部長の横井伸好氏が登場し、Officeの新しい機能を中心にデモンストレーションが行われた。

横井伸好氏

「新しいOfficeは、文書作成にとどまらない、インフォメーションワーク全般を支える製品」と横井氏


 横井氏ははじめに問題点をあげた。それによれば、部署ごとにファイルサーバやDBなどが存在し、「データ」の一元管理がなされていない点を指摘。この状況を打破するため、データ=情報に意味をもたせることが重要とした。その解決策がXMLによるデータストアで、すべてのデータをXMLとすることで、再利用や検索がたやすくなるという。Office 11はそのためのフロントエンドというわけだ。

 ここでExcelやWordのドキュメントからXMLデータを生成するデモが行われた。また、XMLデータの構造を定義する「スキーマ」が同じであれば、たとえドキュメントの体裁が異なっていても双方向のデータやり取りがたやすくできることも紹介された。

 Officeの新しいコンポーネントも紹介された。1つは「InfoPath」というアプリケーションで、XMLのデータ作成を容易に行えるよう、データ入力をフォームベースで行えるようにするもの。例えば営業日報を入力する際に、InfoPathで作成したフォームを利用すれば、オンライン/オフラインを問わず常に一定の書式でデータ入力が可能となる。

「InfoPath」

InfoPathでのフォーム設計の実際。右側のコントロール一覧から必要な項目をドラッグ&ドロップしてくるだけでデータ入力用のフォームが完成する。


 データ形式の共通化が行われれば、コラボレーションもスムーズになる。新しいOutlookとSharepointのデモも行われ、多人数で利用可能な会議ワークスペースやオンライン文書共有のためのドキュメントワークスペースといった機能が紹介された。また、もう1つの新規コンポーネント「OneNote」については、手書きメモといった用途に適しているとしながらも、書き込んだ内容は内部ではTEXTデータとして扱われているため、TabletPCのジャーナルとは異なるものと説明された。

Sharepoint

Sharepointは、多人数がオンラインで文書を共有するためのドキュメントワークスペースを提供する


 Office 11の重要な機能の1つが、Trustworthy Computingの考え方をインフォメーションワークに取り込んだ結果である、Windows Rights Management Servicesである。これは、Windows Media Playerで使われている著作権管理の技術「Windows Media DRM」をOfficeあるいはWindowsで利用するアプリケーションファイルに適応させたものだ。ドキュメントの持ち出しやコピー&ペーストの禁止、電子メールの社外への転送禁止といった企業内情報の保護を目的としたものである。

 こういったインフォメーションワークの実現に向けた製品の用意とともに、マイクロソフトは昨年7月にビジネスプロダクティビティソリューション本部を設置、三十数名(全世界では400名体制)の部隊がインフォメーションワークの提案活動をスタートしているという。コンサルティングをおもなサービスとしており、その中のIPA(Individual Productivity Assessment)というメニューは企業内個人のワークスタイルの把握を行うというもので、企業の中で各個人がどのようなワークスタイルを持って仕事をしているかといった抽象的な事項を、ヒアリングやビデオによる行動監視といった手段を用いて尺度化して表すことができるというもの。すでにライセンス企業での導入も行われており、インフォメーションワークの実態把握や改善余地の分析に役立っているという。

 最後にOffice 11の発売次期が告げられ、2003年の第3四半期、つまり今年の7月から9月にかけて、というスケジュールが明らかになった。価格や製品構成などは具体的になり次第、発表していくという。

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[ITmedia]