エンタープライズ:コラム 2003/03/17 18:50:00 更新


Gartner Column:第84回 Linux需要の実体は? スキル不足への懸念からユーザーは慎重

Linuxの話題は絶えない。しかし、それらはすべてベンダーサイドの動きに過ぎない。実際のユーザーである企業や自治体は、調査結果から分かるとおり、社内技術者の不足や、そのスキル不足を最も懸念しており、極めて慎重だ。

 オープンソースの代表としてのLinuxの話題が後を絶たない。最近のビル・ゲイツ来日による日本政府への「説明」もそれに関連する。IBMのLinuxへの傾注戦略、それに追随するかのような大手国内ベンダーのLinux技術者の育成などである。しかし、これらはすべてベンダーサイドの動きだ。では実際の利用者である企業や自治体ではLinuxにどの程度のニーズがあるのだろうか。

 先ずはLinuxの認知度を見てみよう。

 IS部門のマネジャークラスで、Linuxを知らないものはいないと思うだろう。しかし、ガートナーITデマンド調査室で調べた結果では、2002年8月時点で「Linuxが何か分らない」と答えたIS部門マネジャーは約1000の回答者のうち10%近くを占めた。その1年前の2001年8月時点では約12%が存在を認知していなかったので、確かに認知度は上がっているが、読者からは驚きの声が上がるはずだ。さらに、「Linuxに一切関心がない」と答えたユーザーを合わせると4分の1以上に達する。

 ガートナーで行う調査は幅広いIT関連トピックを詳しく尋ねる質問が多いので、このアンケートに回答してくれる企業ユーザーは、全体平均よりもITに強い関心を持っている企業が多いと考えていいだろう。そのような回答者の中でも、「知らない」と「関心がない」を合わせると25%を超えるのだ。

 さらに、Linuxサーバの新規導入予定を尋ねたところ、2002年8月時点で、向こう1年以内に導入予定と答えたユーザーはわずか1.4%に過ぎなかった。導入予定時期を3年以内に広げても3.6%と非常に小さい。この程度の需要で、ビジネスになるのか、正直疑問に思う。

 確かに、採用率(1台でもLinuxサーバを導入していれば採用済みと計算)だけ見れば、2001年に約17%だったのが、1年後には約27%と10ポイントも増えている計算だ。しかし、2001年8月の新規導入予定ユーザー(1年以内)がわずか2.1%だったことを考えると、この採用率の増大は、新規にLinux搭載のサーバを導入したのではなく、既存のサーバ(多くはIAサーバだろう)に安価なLinuxを搭載して試験的に利用、あるいはインターネットサーバやメールサーバとして利用したユーザーが増えたと考えるのが妥当だ。ガートナーデータクエストの出荷ベースの調査でも、2001年も2002年も(暦年ベース)、全サーバ台数に占めるLinux搭載サーバの比率はわずか7%前後だ。

 自治体市場ではどうか。新電子自治体共同研究会(第一法規出版、価値総研、ガートナー)が2002年9-10月に調査した結果では、Linuxサーバの採用率(上記と同じ定義)は、約18%と民間企業よりも遅れているのが現状だ。ただ、政府のてこ入れもあってか、調査時点から向こう1年以内の導入予定状況を見ると、回答した自治体の8%がLinuxサーバを導入予定と答えているので、企業ユーザーよりはニーズは高そうだ。

 Linuxが、ベンダーが思っている以上に普及しない理由は何だろうか。よく指摘されるのが、「ベンダーのサポート力不足」と「アプリケーションの品揃え」であるが、確かにこれらを懸念するユーザーは多く、半数近くがそう答えている。しかし、下のグラフのように、2001年と2002年でそれらを不安材料として持つ比率の変化を見ると明らかに減少しているのが分かる。Linuxに力を入れるベンダーが増えてきたため、ベンダーのサポート力もある程度高まり、さらに大手ベンダーがLinuxに注力すれば、その上に乗るアプリケーションを開発するシステムインテグレーターも増えてくるだろう。その意味では、Linux普及のベンダー側の大きな障害は徐々に解消していくだろう。

linux.jpg

 しかし、グラフを再度確認していただきたいが、最大の懸案事項はベンダー側の問題ではなく、ユーザー側の問題なのだ。「ユーザー社内に在籍する社員のスキル不足」を不安材料として挙げるユーザーは全体の7割を超える。2001年と2002年を比べても、統計誤差程度の比率の減少はあるがほとんど変化がない。

 オープンソースであるメリットは、特定ベンダーの営利目的による行動に左右されず、自らソースコードを改変でき、バグやセキュリティホールの修正ができ、その上に乗るアプリケーションも自ら開発できるところにあるはずだ。ところが、Linuxのソースコードを理解し、アプリケーションを開発できるユーザーは思った以上に少ないというのが日本の現状だ。だから現実問題として、業務用アプリケーションのインフラとしてLinuxを使うユーザーは極めて少ない。

 自治体ユーザーにおいては、技術者不足や、技術者のスキル不足の問題は民間企業よりもさらに重大であり、幾ら政府がオープンソースを積極的にアピールしても、実際の業務への導入は、技術者の大幅なスキル向上がない限りそれほど進まないだろう。

[片山博之,ガートナージャパン]



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