エンタープライズ:コラム 2003/03/19 19:04:00 更新


Linux Column:あらためてサポート、サービスの意味を考える

最近の気になったニュースといえば、米オラクルがUnited Linuxをサポートするようになったこと。このような動きを見ていると、オープンソースがサポートされているわけではない、という考えは徐々に払拭されてきており、いい方向に向いてきている。

 オープンソースソフトウェアを使って、さまざまなボランティア団体の情報活動を支援できないだろうか、ということを書きましたが、2通メールをいただきました。1通は「ニーズはある」との心強いお言葉でした。ただし、それなりの難しさはあるようですね。そういう意味で非常に示唆的なメールでした。

 もう1通は既に同じような活動をしているJCA-NETをご紹介いただきました。なかなか活発に活動をされているグループのようです。ただ、私自身が持っている地域社会へのコミットといったレイヤーではなく、グローバルな活動を行っているNGOとの連携などをはかっているグループではないかと感じました。

 オープンソース活動も含めて、ボランティア活動の源泉はモチベーションにあるわけですが、モチベーションの方向性が違うグループ同士というのは、なかなか協調活動は、しにくいのではないかと感じます。最終的には、できるだけ多くの人がIT技術を自分のものとして活用できるようになることが大事なのでしょうね。

 この課題、引き続き考えていきたいと思います。皆様からもご意見、ご要望、情報など、私宛てにお寄せください。

 さて、最近の気になったニュースといえば、米オラクルがUnited Linuxをサポートするようになったとのこと。Oracle9i RACの動作検証など、エンタープライズレベルでのUnited Linuxサポートを力を入れていくのでしょうか。私自身の古巣の動きだけに、色々と推測するところもあるのですが、結局は最終的な結果が重要なだけに行方を見守っていきたいところです。

 このような動きを見ていると、オープンソースがサポートされているわけではない、という考えは徐々に払拭されてきているような気がします。いい方向に向いていると思いますが、1点だけ危惧すべき点があります。それは、資本主義における経済活動の原則は「自己責任」であるということですが、それが忘れ去られたまま進まないか、ということです。

「サポートされる」ということは、自己責任の原則のうちの「危険負担」を一定の割合で他者に対して移転することです。移転される範囲もまた、自己責任の原則に従って定めなくてはいけません。最近、徐々に「Service Level Agreement」という言葉が使われるようになってきましたが、この言葉が示す通り、提供側需要側の間できちんとしたサポートサービスの範囲についての線引きが必要なわけです。

 私が思うに、オープンソースの効用というのは、この「自己責任」がまずはじめにあって、その後に一定の「危険負担の回避」があるという正しい順番を思い起こさせてくれた点が大だと思うのですが、過度にオープンソースはサポートされているということは、結局のところ表面的にユーザーに誤解を生ませるこれまでのIT業界のやり方をなぞるだけの方向になりはしないでしょうか。バックエンドサポートについても、丸投げの構造になる可能性はあるでしょう。

 もちろん、従来型ビジネスモデルを全否定するわけではありませんが、IT業界が今後より一層の飛躍を期するのであれば、ビジネスの相手方であるユーザーのレベルアップも同時に考えていかなくてはならないでしょう。それを目隠しさせたままにする従来のやり方は、結局お互いのためにならないのではないでしょうか。もちろん、「これが新しいやり方」といえるサービスビジネスのモデルが確立されているわけではありませんが、オープンソースはサポートの捉え方を変えていくための一つのきっかけになりうるのではないでしょうか。もちろん、オープンソース技術者不足の解消など解決すべき課題も多いでしょうが、時間のかかることではありますが解消できない問題ではありません。

 最終的には、コンピューターシステムを利用する環境が変革されて、過去のIT産業構造の呪縛から解き放たれないといけない、という考えが基底にあります。一人一人が自立したIT産業を目指すためにも、オープンソースによって「サポートされる」ということを絶対的なものとしてオーバーにとらえる傾向が少なくなっていくとよいのですが。特にエンジニアが仕事がしやすい環境になっていくことが必要なのでしょうね。

 なかなか結論が出ない議論ではありますが、また何かの機会に、例を出して具体的にお話したいと思います。

[宮原 徹,びぎねっと]