エンタープライズ:ニュース 2003/03/28 22:06:00 更新


ATMのQoSとIPの拡張性を両立、カスピアンの新型ルータ「Apeiro」

米カスピアン・ネットワークスは、IPネットワークの基盤であるルータとATMスイッチの利点を兼ね備えたフローベースルータ、「Apeiro」を日本市場に投入する。

 米カスピアン・ネットワークスは3月28日、IPネットワークの基盤であるルータとATMスイッチの利点を兼ね備えた新製品、「Apeiro」を日本市場に投入することを発表した。

 同社は、かつてARPANETの設計・開発に当たったほか、ATM技術の発展にも深く関わってきたローレンス・ロバーツ氏によって1999年に設立された、比較的新しいネットワーキング企業だ。その主力製品が、キャリアやサービスプロバイダーのネットワークコアをターゲットとするApeiroで、同社はこの製品を“フローベースルータ”と表現している。

 Apeiroは、ネットワーク上を流れるトラフィックを、事業者が定義できるフローに分解する。そして、各フローの先頭パケットについてはルーティングを行うが、それ以降のパケットは単純にスイッチングする仕組みだ。こうすることで、パフォーマンスを維持しながらポリシングやクラス分け、キューイングなど――つまり高度なQoS保証を実現する。

 QoS保証は長らく、ATM技術の得意とするところだった。ベストエフォート型のIPネットワークとは異なり、VC(バーチャル・チャネル)ごとにQoSを設定することで、高いサービスレベルを維持できる設計だからだ。ただ、IPに比べればどうしてもコストが高く付くほか、このVCの設定作業が煩雑であり、拡張性に欠けるといった難点があった。

 一方のIPネットワークは確かに安価であり、汎用的な技術なのだが、もともとベストエフォート型のネットワークとして設計されただけあって、QoS機能となるとやや劣る。

 カスピアン・ネットワークスでは、この2つのネットワーキング技術の利点を両立させるべく、Apeiroを開発・提供したという。「ATMスイッチや伝統的なルータ、最近登場してきた高性能でスケーラブルなルータなど、過去から現在までのさまざまな製品の利点を取って、QoSとスケーラビリティの両方を実現する」(同社CEO兼社長のビル・クラウス氏)。さらに同氏は、通信事業者はApeiroによって大きくコストを削減できるうえに、新たな収益源となるさまざまな“プレミア・サービス”を展開できるとした。

「過去10年余りのシスコシステムズがそうだったように、フローベースルータが、今後10年間のルータを代表するものになるだろう」(クラウス氏)

 ただ、ATM並みのQoSとIPの汎用性、拡張性を両立させようというアイデアは、何もこれが初めてでははい。有名なところではMPLSがその例だ。だが同社マーケティング部担当バイスプレジデントのファイザル・ラカーニー氏は、現行のMPLSはどうしても拡張性に欠けると説明している。今現在はともかく、ゲームやストリーミング、VoIPといったアプリケーションが広く普及すれば、Apeiroが実現するQoS機能が不可欠になるという見方だ。

 ちなみにApeiroはMPLSもサポートしており、ATMとMPLSベースのIP-VPNの間のQoSマッピングが可能なほか、ATMやフレームリレー、イーサネットなど複数の異なるネットワークを統合することもできるという。

 Apeiroは17スロットまで搭載可能なシャーシ型の筐体をしており、ファブリック容量は360Gbps。全体の管理を行うスーパーバイザー・カードのほか、OC-48c/STM-16c、OC-12c/STM-4cや10ギガビットイーサネット、ギガビットイーサネットなどのラインカードが用意されている。さらに、処理の冗長化ならびに負荷分散を実現するアプリケーション・プロセッサも提供される。

 日本での代理店を務める理経によると、製品は既に出荷可能な状態になっているといい、国内大手キャリアなどを対象に販売活動を展開していくという。

関連リンク
▼米カスピアン・ネットワークス
▼理経

[高橋睦美,ITmedia]