エンタープライズ:ケーススタディ 2003/04/03 20:07:00 更新


基本選択肢としてのERP(5)〜人事管理で企業成長のカギを握るピープルソフト

ピープルソフトは、人的資源の有効活用を促すHCM(Human Capital Management)の分野でアナリストから高い評価を得ている。HCMのユーザー企業は、NTTグループやフェデックス、三菱自動車などが挙げられる。来日した同社のHCM担当のプロダクトマーケティング副社長、マーク・ラング氏に話を聞いた。

 ピープルソフトは、人事分野をメインとするERPだけでなく、トータルなソリューションとして製品を顧客企業に提供するために、CRMやSCMといった分野でもアプリケーションを提供している。特に、人的資源の有効活用を促すHCM(Human Capital Management)の分野では、AMRリサーチやMETAグループ、ガートナーといったアナリストから高い評価を得ている。HCMのユーザー企業は、NTTグループやフェデックス、三菱自動車などが挙げられる。来日した同社のHCM担当のプロダクトマーケティング副社長、マーク・ラング氏に話を聞いた。

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以前は米労働省に勤務し、ジョージ・ブッシュ元大統領(現米大統領の父)のスピーチ原稿を書いたこともあるというマーク・ラング氏

「有能な人材をどう配置するかが重要」と話すラング氏。HCMでは、企業戦略における目標と人材管理をリンクさせている点で、伝統的な人事管理とは異なっているという。最新の製品は、12月にリリースされた「HCM 8.8」だ。

目標を全社共有する

 HCMでは、システムの合理化、従業員のセルフサービス、経営目標と人的資源の統合という3段階を経ることが考え方のベースになっている。

 例えば、合理的な給与計算システムを構築した上で、従業員が自分でオンライン上で福利厚生プランを選択できるようにする。さらに、企業側では、そのシステムを利用して、従業員のインセンティブ管理を行えるようにするという流れになる。

 同じように、研修カタログシステム構築、従業員自身によるオンライン登録、企業全体の目標に沿ったオンデマンドによるe-ラーニングの提供といったパターンもあるという。

 同氏は、「役員室から現場までが目標を共有するべき」と強調する。そのためには、KPI(業績評価指標)やバランスト・スコアカードの導入や、従業員のパフォーマンス管理を徹底する必要があるとしている。

シングルインスタンスで管理コストを低く

 同氏は、ピープルソフトが提供する財務系のモジュールや、CRM、SCMが、同じコードラインであるために、クロスプラットフォームの場合のシステム連携がしやすく、パッチを当てる場合の効率性も高いとする。

 一方で、モジュール型のアーキテクチャであることで、段階的な導入ができることも利点であることも加えた。

導入事例

導入企業 NTTコミュニケーションズ
業種 電気通信事業
従業員数 7500名
導入概要 IPとグローバルをキーワードにする同社。「社内の人的資源をどう活用するか」をテーマに、終身雇用や年功序列が崩れる中での新しい人事・給与制度に柔軟に対応できる基幹システムを構築するために、PeopleSoftの導入を決めた。人事・給与システムの共有を基本とするNTTグループの方針とは一線を隔し、独自のシステム「Compass」を2001年度から構築し始めた。
導入プロセス ポイントは「2002年9月までに本番稼動すること」と「開発ツールの生産性の高さ」。カットオーバーまで10カ月しかない状況で、PeopleSoftを採用した理由は、変更が容易であることと、開発ツールのPeopleToolsの生産性の高さだった。プロジェクトでは、現状分析に2カ月、要件定義に2カ月を経て、開発作業が本格化したのが2002年3月後半。開発作業は、当初10名、ピーク時60名の人員により、2カ月後の5月末に終了している。6月から8月までテストが実施された。 Compassのハードウェアは、Webサーバに採用されたProLiantなどのヒューレット・パッカード製品が中心。データベースサーバはhp-uxベースのHP Server、アプリケーションサーバはHP NetServerなど。
導入効果 2002年9月に予定通り稼動を開始。人事給与システムの柔軟性が飛躍的に高まったとしている。以前は、制度変更への対応に半年かかることもあったが、Compass導入後は、大規模な変更でも20日間、小規模なものなら1日で対応できるようになった。7500人の社員の給与計算も、1時間で算出でき、処理スピードの高速性も高まった。社員からも、紙の明細書が減り、いつでもWebから情報にアクセスできるようになった点などで評判がいいという。
今後の展開 2003年の退職金制度の変更に合わせ、退職手当計算機能を構築する予定。また、現在別システムで展開されている、各自のミッション管理や人材育成システムを、将来的にCompassに統合し、文字通り「羅針盤」としての役割を期待されている。

[怒賀新也,ITmedia]