| エンタープライズ:ニュース | 2003/04/07 00:00:00 更新 |

今後の企業インフラに求められるもの 〜マイクロソフトからの回答は?〜
企業が自社ITインフラの構築・整備にあたって、第一に行うべきことは何か? それは、導入しようとしているシステムの柔軟性や可用性を考慮して、現在から未来にわたって本当に自社の基盤として耐えうるものなのかを見極めることだ。マイクロソフトは、今年の第2四半期に出荷するMicrosoft Windows Server 2003でこの問いかけにこたえようとしている。
今、企業内のITインフラの構築・整備においてもっとも重要視されているのが、社内と外をいかに有機的かつ効果的に結びつけるか、ということであろう。すでにB2BやP2Pといったビジネスモデルは当たり前のこととなっており、企業内システムの構築にあたっては、社内のことだけを考えていればよいという時代ではなくなってきているからだ。もちろん、ユビキタス時代を迎えた今、多様なデバイスによる社外から社内へのセキュアなアクセスも、ITインフラにとっての重要な課題のひとつだ。
社会全体の経済状況が芳しくない今、企業も生き残りを賭けて壮絶な構造改革を迫られている。IT分野における構造改革においても、その構築・整備において、標準的な技術や規格に追従するという安易な方法も考えられるが、導入コストや維持コストが本当に見合ったものなのか、将来に渡っての柔軟性や信頼性を保てるのかどうか、こうした根本的なことを初期の段階から判断しておく必要があるのではなかろうか。
そうなると、判断基準となるテクノロジーに関する知識や事例は、ITインフラ構築の担当者やエンジニアはもちろんのこと、企業トップや重役といったポジションの人々にとっても必要となる知識と言えよう。漫然と担当者からの報告を待っているだけではだめなのだ。業界におけるリーダーシップをとるのも、市場を勝ち抜く戦略をたてる場合においても、テクノロジーの知識を持つものが有利であるのは間違いない。
ITインフラに求められる要素のひとつに、ビジネスの進展やパートナーの変化に応じた柔軟な拡張性や可用性が挙げられる。ITインフラの構築においては、これらの要素をどのように満たしているかが、実際の製品やサービスを選択する上での重要な判断基準となる。言い換えれば、将来、支店を増やしたり統合する際に、自社のITインフラが柔軟性をもって追従できるかどうか、つまり、社内システムが企業の成長と共に成長し続けられるかどうかも鍵のひとつとなる。将来の成長を見越して初めから過剰投資ともいえる巨大なサーバマシンを導入するというのが、今まで一般的な方法であった。しかし、クラスタリングなどの手法が使えたり、マシンリソースの追加が容易であれば、その場の状況に見合っただけの投資で済ますことも可能となり、無駄な投資となるリスクを回避できるだろう。
こうしたITインフラに求められているものに対するマイクロソフトの回答が、近々リリースされるMicrosoft Windows Server 2003である。Windows Server 2003で提供される新しいActive Directoryでは、Windows 2000 Server のActive Directoryの基本的な部分はそのままに、設計時の柔軟性の向上や、運用時の効率化といった修正が加えられている(図1)。また、System Management Server 2003やMSCS(Microsoft Cluster Service)、NLB(Network Load Balancing)、さらに、VSS(Volume Snapshot Service)/VDS(Virtual Disk Service)といったWindows Server 2003 の高可用性を実現する機能を活用することで、信頼性や可用性、拡張性を備えたITインフラの構築が可能となる。

たとえばMSCSを利用すると、フェイルオーバーによってIPアドレスやサービスをノード間で移動させることができ、障害時にシステムを止めることなく運用できるため、信頼性の向上を図ることが可能だ。またNLB(図2)と共に利用することで、サーバへの負荷分散を計画できる。これは、ITインフラとして考えれば、企業の成長に伴う負荷の上昇を、サーバの追加という形で柔軟に対応できるということだ。
また、VSS(図3)は新たにWindows Server 2003で提供される機能で、OSレベルでファイルの更新を監視・管理し、最後の更新状態のスナップショットを保持することで、最新状態にもっとも近い状態のバックアップを取ることが可能となる。つまり、システムのバックアップやコピーの際に、ロックがかかっていて複製できないという事態を回避できる仕組みだ。
5月15日より開催されるthe Microsoft Confrence + expo 2003(以下、MSC+E 2003)では、「NT4.0 ドメインから Windows Server 2003 Active Directory への移行のメリット」と題して、Active Directory を導入し、企業ネットワークに統合的なセキュリティポリシーを実装することのメリットと、既存の Windows NT ドメインからの移行方法が解説される。また、「止まらないサービスを実現するシステム インフラストラクチャ」と題するセッションで、MSCSやNLB、VSSやVDSなどの機能を利用し、止まらないサービスを実現する方法が紹介される。
さらに、「信頼できるメッセージング コラボレーション環境の構築」というセッションでは、新しく登場するExchange Server 2003を利用することで、企業にとって重要な電子メールにおける機密性などを含めた、信頼できるメッセージング基盤を構築する方法が紹介され、また、「効率的なシステム運用管理による TCO の削減」、「Windows 環境におけるセキュリティ対策/運用の実践」といったセッションで、将来を見据えたITインフラ構築における運用・管理の問題や、セキュリティの維持管理の問題が取り上げられる。
ITインフラの構築においては、その技術や製品においてさまざまな選択肢が考えられる。必要なハードウェア、ソフトウェアを組み合わせるだけではなく、ネットワークやセキュリティ等を含め、ビジネスを支える基盤としてのITインフラを、いかに可用性、拡張性、信頼性を確保し構築するのかは、いまや企業にとって重要な課題である。マイクロソフトの製品でなくても、オープンソース系UNIXなどでシステム構築を行うことも可能であるし、商業系UNIXでも同様だ。ただ、インフラは一旦構築してしまうと方向転換をするのが非常に困難となる。その意味でも、将来を見据えたものでなければならず、ロードマップのしっかり示された技術や製品を考慮すべきであろう。MSC+E 2003は、Microsoftの製品や技術を選択するべきか否か判断するよいチャンスとなるだろう。
[宮内さとる,ITmedia]



