エンタープライズ:ニュース 2003/04/15 00:00:00 更新


インフォメーションワークに向けて業務システムのフロントアプリ化を図る Office 2003

電子文書化やグループウェアの導入など企業のIT化が進むにつれて、利便性が向上するという点では誰もが意見の一致するところだろう。しかし、そのことが必ずしも個人の生産性向上につながらないということは、あまり語られていない。2003年後半にリリース予定の「Microsoft Office 2003」では、「インフォメーション ワーク」をキーワードにこの問題へと取り組んでいる。

 近年の企業内のIT化には目を見張るものがある。低価格化もあいまって多数のパソコンが導入され、一人あたり少なくとも1台があてがわれるようになっている。さらにはそれらがLANによって接続され、インターネットに接続しているのも当たり前となっている。ファイルサーバや電子メールを利用してのファイル共有や情報伝達もごく普通に行われている。また、チームやプロジェクトでの共同作業を効率化したり、ワークフローの整備のために、グループウェアを導入する企業も多いと聞く。こうした変化を歓迎し、IT化によって生産性が向上してきたと考えている方も多いだろう。

 現在、企業が社員の生産性向上を考えるとき、インフォメーション ワーク(情報を収集、加工、共有して、仕事をより付加価値の高いモノにする働き)を行う社員、つまり「インフォメーション ワーカー」の生産性向上という観点が重要になってきている。つまり、本当の意味で情報を扱う業務の効率化を考える時期に来ているということだ。たとえオフィスのIT化が進んで利便性が向上したとしても、別の部分で今まで以上に気をつけなければならないことが生じたとすれば、本当の意味で生産性の向上につながるとは言いがたい。

 たとえば、ファイルサーバにある共有フォルダを考えてみてほしい。共有フォルダ内にあるファイルを常に正しく最新の状態へと保つためには、チームや社内で一定のルールを決める必要があるだろう。だが、ユーザー自身がこのルールを守ることを義務付けられ、常に気にしながら作業をしているとすると、本当の意味で効率化されたといえるだろうか。また、電話での連絡は相手の作業を中断させてしまうことから、連絡事項はすべて電子メールにしている企業も多いと聞く。しかし、相手からのリアルタイムな返事が欲しい場面では、どうしても電話をかけることになる。これで本当に生産性が上がるのだろうか。

 これらの問題点を解消し、真の意味でのインフォメーション ワーカーとしての社員の効率を上げるためには、もはや個人レベルのツールの組み合わせで業務をこなすのではなく、コラボレーションを基本としたビジネスのためのツールで共同作業を行う必要性が高まっている。では、社員はどのようなツールを利用して業務を行えばよいのだろうか。また、そのために企業はどのような仕組みを構築したらよいのだろうか。

 マイクロソフトの新しい「Microsoft Office 2003」(以下Office 2003)では、Office Systemという総体としてのツールを提案している。1つ1つのアプリケーションが単独で利用されるのではなく、それぞれが有機的に結びついてビジネスの武器である「情報」を作り上げる。しかも、その「情報」はコラボレーションを基本にすべてのインフォメーション ワーカーによって共有され、さらに新たな企業ナレッジとして生まれ変わってゆく。単に便利な電子文房具としてではなく、個人の集合体であるチームが、そこでいかに効率よく情報共有を行い、全体として作業効率を上げていくかという課題に、正面から回答を出している。

 冒頭の例で考えると、ファイルサーバで共有しているファイルが常に新しいものであることをシステムが保証してくれる仕組みになっていれば、インフォメーション ワーカーであるユーザーは意識した操作を心がける必要がなくなり、生産性向上につながることになる。また、連絡を取ろうとしている相手の状態を知ることが可能であれば、電話を取れる状態にあるかどうかを電話をかける側が判断できるようになる。相手の予定が分かれば、いつごろ返事がもらえそうだといったことも判断できるようになるだろう。(図1)

 Outlook 2003

図1■Outlook 2003ではIM機能と統合が進み、メールを受け取った相手の現在の状態や、さらには、いつごろから空き時間となるかまでをも知ることができ、コラボレーション環境において威力を発揮することだろう。


 既存のシステムや仕組みを組み合わせれば、ある程度これらの問題点は解決できるように思える。しかし、組み合わせて使っているという時点で、情報の有機的結合を人的パワーで補わなければならないということであり、その部分でユーザーに負担を強いている。これではインフォメーション ワーカーとはとても言いがたい。マイクロソフトの提案するインフォメーション ワークでは、いままで個別のアプリケーションやユーザーインタフェースで行ってきたこれら情報の有機的結合を、Office Systemとして行うことで、真の意味で効率化されたインフォメーション ワーカーを作り出す。(図2)

ドキュメントワークスペース

図2■SharePointテクノロジーを利用したコラボレーション環境の1つである「ドキュメントワークスペース」。チームコラボレーションの可能性を数段階高いレベルにまで引き上げてくれるだろう。


 企業ではチーム内に限らず、さまざまな人間とさまざまなシステムが複雑に連携して作用している。これらの人々あるいはシステムがデータを共有しあい、相互に作業の効果を組み合わせることができれば、全体の生産性に多大な影響を与えることは明らかだ。このような情報の連携には、データフォーマット自体の共通化が欠かせない条件となる。これが、エンドユーザーのレベルからXMLを利用することのメリットであり、これからの企業内作業にとって必要なことと言える。

 Office 2003でXMLがサポートされている理由もここにある。WordやExcelといったアプリケーションレベルでXMLをサポートすることで、今まで再利用しにくかった文書などが、社内全体にとって有用な情報資源に変化していくことが期待されるからだ。(図3)

 Word

図3:■Wordのデータを汎用のデータフォーマットであるXMLに対応させるため、文章中のデータをXMLの項目と結びつけることができる。単なる文書であったワードファイルが、再利用可能な汎用データに生まれ変わる。


 5月15日より開催されるthe Microsoft Conference + expo 2003(以下、MSC+E 2003)では、「Microsoft Office System 全貌」と題し、4つのセッションが準備されている。その中の1つ、「- スマート コミュニケーションと情報管理 - 〜 - 新しいコラボレーションによる革新的ワークスタイル -」と題するセッションでは、新しくなるSharePoint テクノロジーを中心に、各Officeアプリケーションの連携やSharePointを利用したコラボレーション環境について詳しく解説される。さらには情報共有のための企業ポータルといった仕組みの構築方法や、「業務データから戦略のヒントを見つけ出す - 誰でもできる、ビジネスデータ活用術 -」などのハウツーまで、インフォメーション ワークをサポートするさまざまなセッションやデモンストレーションが用意されている。また、WordやExcel、そして新たにOffice Systemの一員となるInfoPathといったアプリケーションを利用したXMLによるドキュメント連動や、SharePointによる連携についての解説も行われる。

 Officeアプリケーションのアップグレードが必要か否かという問題は、常に議論の的として持ち出される。新しいOffice 2003がどれだけ有用なものなのかを確かめることは、企業システムの意思決定を行う人々にとっても重要だが、それ以上にOfficeアプリケーションを利用するエンドユーザーにとっても大切な問題となるに違いない。

[宮内さとる,ITmedia]