エンタープライズ:ニュース 2003/05/16 22:53:00 更新


Active Directoryへの移行を焦るマイクロソフト

システムおよびビジネスを支える基盤を解説するITインフラストラクチャ トラックのはじめのセッション、「Windows NT 4.0ドメインからWindows Server 2003 Active Directoryへの移行のメリット」からお届けする。

 MSCE2003の特徴である、ITインフラストラクチャ、インフォメーションワーカー、アプリケーションプラットフォームの各トラックに分かれてのセッションは、2日目となる16日から始まった。「Windows NT 4.0ドメインからWindows Server 2003 Active Directoryへの移行のメリット」と題して、マイクロソフト株式会社 流通・サービスソリューション本部 須田雅人氏によって行われた。

 セッション冒頭では、Windows 2000 Serverが出荷されてからかなりの時間が経過したにもかかわらず、同時に世の中に出たActive Directoryが、いまだに普及していないという現状に触れ、Active Directoryに移行しない理由として、NTドメインで十分運用できているとか、コストに見合うかどうかわからないとか、実績や事例が少ないという理由が示された。これらに対する回答が本セッションを通して示され、特にNTドメインを利用していても問題がないかどうかについて、Active Directoryのメリットをもとに説明された。

 NTドメインではありがちな、乱立したドメイン毎に行わなければならない複雑な管理にかかるコストと比較して、Active Directoryによるシングルサインオン環境では、ドメインを統合したフォレストを管理するだけですみ、管理コストを削減できる。それから3つの「自分についてくる」という表現で説明された、Active Directoryのグループポリシー機能によって、Active Directoryの集中管理のメリット、ユーザーサービスとしてのメリット、セキュリティ向上という部分でのメリットが示された。

 まず1つめの「自分についてくる」は、「データと文書が自分についてくる」ということだ。これは、ログオンしたPCのマイドキュメントをサーバの個人フォルダにリダイレクトすることができ、どのPCを使っても、必ず自分のファイルがマイドキュメントにあるという状況を作れるということだ。これは、集中管理とユーザーサービスの面でメリットとなる。2つめは「ソフトウェアがついてくる」と表現された。グループポリシーを使えば、クライアントPC上にアプリケーションを自動的にインストールさせることができるため、ドメインのメンバーとなるユーザー毎に、必要なアプリケーションを指定でき、さらに、ログオンしたPCにアプリケーションがインストールされていなければ、自動的にインストールまたはアップデートする機能を持つことを意味する。当然、集中管理とユーザーサービスの面でメリットとなる。3つめは「同じ設定がついてくる」ということだ。グループポリシーで各PCの設定の変更の可否や、設定値などのレジストリの内容まで、ログオンの際にユーザー毎に適用できるため、セキュリティの保持や管理コストといった点でメリットとなる。

 Windows Server 2003のActive Directoryのグループポリシーを利用することでのさらなるメリットは、自社内にWindows Updateサイトを構築できるということだろう。この機能を実現するMicrosoft Software Update Serviceとグループポリシーを組み合わせることで、自社内のセキュリティを高いレベルに保つことが可能となるからだ。

 Windows Server 2003からは、ポリシーの適用結果を簡単に知ることができる「ポリシーの結果セット」というツールが用意され、また、MMCのスナップインをベースとしたグループポリシーを一括管理できる「グループポリシー管理コンソール(GPMC)」というアプリケーションも用意されているので、Windows 2000 ServerのActive Directoryと比較しても、導入に際しての敷居は低くなっている。

 このセッションでは、海外や国内でのActive Directory導入実績や事例も簡単に紹介され、既にいくつもの実績や事例があることが強調された。また、Microsoft Consulting ServiceによるREJ(IT投資の収益性を測定する支援メニュー)もあることが紹介された。

 セッション中にもひっそりと話に出たが、Windows NT 4.0のサポートが中止になるという点が、ユーザーを早くActive Directoryへ移行させようというマイクロソフトの焦りにつながっているのかもしれない。

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[宮内さとる,ITmedia]