エンタープライズ:ニュース 2003/05/21 11:46:00 更新


「オフショアと中国が鍵を握る」、IDCが今後のIT市場の見通し示す

IDCジャパンは5月20日、同社の年次カンファレンスである「DIRECTIONS 2003 Tokyo」を開催し、今後のIT市場の動向について見通しを語った。

 IDCジャパンは5月20日、同社の年次カンファレンスである「DIRECTIONS 2003 Tokyo」を開催した。この中で、米IDCのインターナショナルビジネスユニット 上級副社長を務めるフィリップ・ド・マルシャック氏は、今後のIT投資に対し楽観的な見通しを示した。

「今後のIT市場は、短期的には厳しい様相となるだろう。ただし、若干の例外はある。また長期的には、オフショア(海外ベース)のアウトソーシングや中国の成長といった価値連鎖がつながり、ますます期待できると予測する」(ド・マルシャック氏)。

 同氏は、米国の景気弱体化や政治的問題から生じるリスク、膨大な額に上る企業や政府の負債といった要因によって、ハードウェアやソフトウェア、サービスを含むIT市場は困難な時期にあると認める。しかしその上で、「チャンスはアウトソーシングにある。顧客企業の多くはコスト削減と効率の向上を望んでおり、そこに機会を見出すことができる」と同氏は述べた。

 ここ10年あまりのIT投資を左右している大きな要素の1つがオフショアだ。製造工程のオフショアだけでなく、アプリケーションの設計、開発や管理までもがオフショアモデルを採用している。その波に乗って大きく成長を遂げたのがインドだった。

 ただここに来て、単純なアプリケーション管理のアウトソーシングよりも、いわゆるBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)にこそ機会が開けていると同氏は指摘。また、インド以外の多くの国々がオフショアモデルへの取り組みを始めているほか、カナダや東欧など、オフショアモデルほどコストが安価ではないが、言葉や理解力の点で優れる「ニア(近隣国)ソーシング」が拡大しつつあるという。

 もう1つ大きな要因としてド・マルシャック氏が挙げたのが、中国の存在だ。同氏は、安価な労働力が豊富で巨大な市場であるといった見方は一面的なものに過ぎないとし、日本や米国、台湾、韓国などから急速に技術移転が進んでいることから、今後技術格差は一気に狭まると予測。ゆくゆくは米国に対峙する存在となり、一種の緊張関係が生まれる可能性も指摘した。

 なおIT投資額予想に関して、中国や香港、シンガポールといったアジアの国々では、新型肺炎「SARS」(重症急性呼吸器症候群)を受けて、数字を1〜3%下方修正したという。特に企業や政府以外のコンシューマー市場でのインパクトが大きく、IDC自体でも出張規制がかかるなどの余波があったが、「今年第4四半期には通常に戻ると予測している。中国でSRASを制御し、蔓延が止まればという条件だが」(ド・マルシャック氏)。

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▼IDCジャパン

[高橋睦美,ITmedia]