エンタープライズ:ニュース | 2003/06/03 16:11:00 更新 |
PeopleとJ.D. Edwardsに見るアプリケーション業界再編の流れ
米PeopleSoftが米J.D. Edwards(JDE)を買収すると発表した。SAPの中堅市場での競争力強化、Microsoftの突き上げもあり、PeopleSoftはJDEを買収することで自社の「決定力」を高めようとしている。
既報の通り、米PeopleSoftが米J.D. Edwards(JDE)を買収すると発表した。アプリケーション業界において、SAPやOracle、中規模向けビジネスソフトウェア市場に力を入れるMicrosoftとの競争が激化してきたことを受け、JDEの中堅規模市場での実績と顧客ベースを取り込むことで、競争力強化を図ることがPeopleSoftの目的と言われている。
このニュースに対して、日本PeopleSoftの広報担当者は、「知らせを受けたばかりで、はっきりしたことは何も決まっておらず、米本社の動きを待つしかない」と話している。一方、日本JDEも、電話での取材に応じ、「今のところ、グローバルでそういう計画があることが分かったという段階。正式に決まったわけでもなく、日本を含めJDEの各国の法人がどう対処するかなどはまったく白紙の状態」としている。
米JDEは6月9日から、米コロラド州デンバーにおいて、同社のユーザーカンファレンス「Quest Global Conferece」を開催することになっており、「現在のところ予定通りに行われる」としている。
米PeopleSoftは、人事寄りの業務分野に強いERPパッケージベンダーで、大企業およびサービス産業で多くの実績を持つ。JDEは生産管理を中心に、中堅企業向けとしては広く知られるERPベンダーだ。
特に欧米では、ERP市場は成熟しており、SAPをはじめ大手のERPベンダーはともに、中堅企業へのフォーカスを打ち出している。さらに、Microsoftも、自社だけでなく、各アプリケーションベンダーなどと手を組むことで、同市場への参入を果たそうとしており、競争の激化が予想されている。
経営のスピード化が求められる中、ERPパッケージの導入は、少し前のように「2年前後かかってしまう」ことは許されなくなってきている。また、実際に成功事例も増えることで、いわゆる横展開による導入も効くようになってきており、かつてほど期間、コストともに高いリスクを伴わなくなっている。
その結果、ユーザー企業は、ERPの理想である「全社的なデータの一元管理」を現実的に意識できるようになってきている。つまり、導入が簡単で、低コストがメリットである単体の業務アプリケーションよりも、ERPを導入してしまおうと思えるような状況が近づいてきている。そして、ベンダーとしてのターゲットは中堅市場だ。
現状では、SAPの中堅市場での競争力強化が予想され、Microsoftの突き上げもある。PeopleSoftは、大企業だけでなく、中堅企業の市場を考慮し、JDEを買収することで自社の「決定力」を高めようとしていると考えられる。
[怒賀新也,ITmedia]