エンタープライズ:ニュース 2003/06/05 22:05:00 更新


CiscoWave 2003基調講演:IPコミュニケーションがもたらす力とは

CiscoWave 2003初日の基調講演には、米Cisco Systemsでボイステクノロジーグループの上級副社長を務めるマイケル・フレンド氏が登場し、IPコミュニケーションについて語った。

 シスコシステムズは6月6日から7日にかけて、都内のホテルを会場に「CiscoWave 2003」を開催している。今年は、従来のような新製品を一堂に集める展示スペースはほとんど見られない代わりに、企業向けのソリューションにさまざまな角度から切り込むセミナーを充実させ、カンファレンス主体のイベントとなった。

 初日の基調講演には、米Cisco Systemsでボイステクノロジーグループの上級副社長を務めるマイケル・フレンド氏が登場。「Beyond VoIP - Catch the IP Communications Wave」というタイトルの下、IP電話やIP会議、コンタクトセンターといった手段からなる“IPコミュニケーション”が、人や企業のコミュニケーションのあり方をどのように変えるか解説した。

フレンド副社長

「単にPBXを置き換えるだけ、単にIPを搭載するだけではだめだ」と述べたフレンド副社長

 「VoIP」と聞いて、なぜいまさらVoIPを取り上げるのだ? と思う人もいるかもしれない。というのもこの数年間、「音声とデータの統合」「IPコンバージェンス」といったテーマは、同社でも、またネットワーキング業界全体でもたびたび議論の対象となり、約束の地とされてきたからだ。技術的に言っても、音声などのデータをIPネットワーク上に乗せることに、もはや困難はほとんどない。

 しかし、フレンド氏の話を総合すると、従来の議論の中で言われてきたVoIPと、シスコシステムズの定義するIPコミュニケーションとは別物ということになる。

 これまでのVoIPは、従来音声サービスを担ってきたTDM/PBXの役割を、IP/IP-PBXが代わって担うことにより、大きくコストを削減できることに眼目があった。音声とデータという2つのネットワークを別々に運用するのではなく、IPネットワークに一元化することで、管理・運用コストを下げることができる。

 しかし、「シスコのいうIPコミュニケーションとは、単なる電話ではない。電話や携帯電話、あるいはWi-Fi対応の機器など、たとえどんなデバイスを使っていようとも、人と人とがシームレスにつながるもの」(フレンド氏)という。同氏によると、条件は他にもある。例えば、単なるPBXの置き換えには終わらないこと、呼制御や帯域割り当て、マルチキャストといった機能を提供できること、さらにさまざまな――サードパーティが提供するものも含め――アプリケーションやサービスを提供できること、それでいながら既存のサービスとの統合が可能なことなどだ。

 こうした条件を兼ね備えたIPコミュニケーションは、「企業がビジネスを進めるための推進力になる」とフレンド氏はいう。IPコミュニケーションが実現されれば、どんなデバイスを用いていようと関係ない。ユーザーがいる場所も問題ではなくなる。たとえどこにいようと、必要な人とコミュニケーションが取り、仕事を進められるわけだから、これは大きく生産性を向上させるという。フレンド氏は、Crate&BarrelやNFL NETなどいくつかの導入事例をその証拠代わりに紹介した。

 顧客コンタクトの現場であるコールセンターにも、同じことが当てはまる。同氏は、大規模なコールセンターを構築する代わりに、各拠点を結んだ仮想的なコールセンターを作り上げることで、やはり生産性の向上につなげることができるとした。

 「適切な人と適切なときに、任意の手段ですぐに連絡を取れるようになれば、生産性は向上する」(フレンド氏)。つまりIPコミュニケーションは、シスコがかねてから提唱しているNVO(Network Virtualized Organization)や生産性の向上といったテーマと密接に関わっていることが見えてくる。

 話は飛ぶが、セキュリティ市場では認証、認可といった分野を中心に、セキュリティを「単に組織を守るためのもの」というよりも、「企業のe-ビジネスを支え、生産性と競争力を向上させる推進力」とみなす動きが広まりつつある。フレンド氏にとって、つまりシスコにとってのIPコミュニケーションも、同じパラダイムで捉えることができそうだ。

SIPの役割が重要に

 フレンド氏は講演の中で、IPコミュニケーションの世界に今後起こるであろういくつかのトレンドも指摘している。

 「この1〜2年でSIPは非常に重要な役割を担うようになった。これを活用し、ボイスメールやテキストツースピーチ、音声認識といった新しいアプリケーションを、全体のエコシステムの中で提供していきたい」(同氏)。

 分野ごとに分けると、IPテレフォニーではシームレスなコラボレーションやモビリティが、ユニファイドメッセージングでは第3世代、第4世代の携帯電話などとの統合が、またコンタクトセンターでは自動音声認識やテキストツースピーチといった技術がポイントになるということだ。

 こうした一連の技術や製品を通じて、「“もしかしたら”を“できる”に変えていく。これこそがネットワークの力だ」(フレンド氏)。

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[高橋睦美,ITmedia]